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[Seminar]キャリアコンサルタントの新たな使命に向けた能力要件の変化と研鑽

今日は、数年前に開催された、慶応義塾大学花田名誉教授のセミナーについて書きます。キャリアアドバイザー(先生はこちらの呼び方が好きらしい)の役割や活動について、先生の視点から問題提起し、一人ひとり考えてほしいという想いが込められたセミナーでした。その概要と所感を記します。

# 概要

1. キャリアアドバイザー取得を目指す人たちの傾向の変化

まずは、法律改正により、キャリアアドバイザーになる人たちの傾向が変わる可能性があることを示しました。職業能力開発促進法第12条において、従業者の職業能力開発を計画的に企画し、実行することを社内で積極的に推進する職業能力開発推進者は、人事・教育訓練等で担当部署の部・課長などを選任することが事業主の努力義務となっています。この要件に、「キャリアコンサルティング実施の能力のある者」という条件が加わることになるようです(平成31年4月1日より)。これまでもキャリアアドバイザー資格者には人事系が多くいらっしゃいましたが、今後は更にこの領域が増えてくるでしょう。視点を変えると、キャリアアドバイザーは、職業能力開発推進者として事業所全体に対応することができるに相応しい能力獲得に努めていかなければならない、とも捉えることができます。面談だけやっていればよい、というわけではなく、あらゆる知識やスキルがキャリアアドバイザーに求められてくる時代になります。

2. 戦略型雇用の重要性

働き方改革の一つに、同一労働同一賃金の実現が掲げられています。これは、同一企業・団体における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。「同じ仕事をすれば同じ賃金を払うべき」というある意味で当然ともいえるルールが、日本で成立してこなかったことを露呈しているように思えます(ちなみに欧州では、正規も非正規も同じ基準で、仕事に応じて賃金が決められるシステムになっており、同一労働同一賃金が成り立っているらしい)が、それはおいておいて、この同一労働同一賃金の意義は、実は非正規処遇の改善のさらにその先にある、と先生は訴えます。雇用形態ではなく、「仕事」あるいは「人」に応じて処遇が変わってくるので、より個が生み出す付加価値が重要になっていきます。一人ひとりの社員が自分の得意技、自分なりの貢献を通して組織の中での戦力となる(これを戦略型雇用と呼ぶらしい)支援が、キャリアアドバイザーに求められます。マニュアル通りの働き方では得られない個々人の成長を促す仕組みの構築が必要となり、それが生き残りのセーフティネットになってくるということです。

3. リカレントに対するキャリアアドバイザーの役割・支援が重要

働き方改革実行計画には、個人の学び直しへの支援としてリカレント教育の勧めも記述されています。人生100年時代を見据え、誰にとっても「いつでも学び直し・やり直しができる社会」を作るため、幾つになっても、誰にでも学び直しと新しいチャレンジの機会を確保するというものです。様々な大学や機関で展開されており、実際私も明治大学で半年間お世話になりました。このリカレント教育の意図は下記のように記されています。

大学等における職務遂行能力向上に資するリカレント教育を受け、その後再就職支援を受けることで、一人ひとりのライフステージに合った仕事を選択しやすくする。また、人工知能(AI)などによる第4次産業革命が働く人に求められるスキルを急速に変化させているため、技術革新と産業界のニーズに合った能力開発を推進。

確かに、そのための知識やスキルを学ぶことは大事ですが、花田先生はそれ以上に時代の変化に柔軟になれる力を学ぶことが重要と訴えます。

話は少し逸れますが、AI・ロボットと雇用の将来について取り上げ、話題になった「Humans Need Not Apply」という、約15分の動画があります。日本語では「人間は採用しない」というビデオです。自動車の登場で馬が「職」を失ったように、人工知能の進化で今度は人間が「職」を失う危機にさらされているという内容。ビデオでは馬と自動車の関係に言及し、「馬が物の移動を担ってきた仕事を自動車に取って代わられたとき、馬には別の仕事があると思っていた。しかし、この予測は外れ、馬の数は激減した。ロボットの登場で、これが人間に起ころうとしている。人間がこれに備えをしないと、馬の二の舞になる」と警告しています。

労働人口の日本49%、米国47%、英国35%がAI・ロボットに取って代わられると言われています。今の仕事は無くなり、新しい仕事が生まれてくる、この激しい変化をむしろ楽観的に好奇心を持って柔軟に対応できる力を持つことが必要であり、キャリアアドバイザーはそれを支援する役割が要になってくるのではないか、とお話頂きました(これは2026年あたり、というのが花田先生の予想のようです)。

# 所感

セミナーでは、様々な時代変化を予測した上で、キャリアアドバイザーとしての役割・あり方がどう変わってくるかを考えたもので、非常に参考になりました。キャリアアドバイザーの継続的な研鑽がますます重要になってくることを実感しました。一方で、上記1.、2.を受けて、個人と組織との関わり方が変わり、個の力が組織の活性化に繋がることも話していましたが、実際、個人の主体的な実行を、組織、会社が受け皿になれるのか、というのはまだ疑問があります。それほどの求心力がある会社がどれくらいあるのでしょうか。セルフキャリアドックを行っていて、個人の強み、主体的な行動を見つけても、会社としてその体制が整っていない、整うことを優先的に考えられない、という大きな壁を実感しています。その辺りはもう少し勉強が必要なのかもしれません。。。

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