これも世界の現実

ズシリと重い本だった(あ、重さじゃありませんよ、読後感がです)。
アメリカとメキシコの国境を目指して命懸けの逃避行をする大量の移民たち。でも、誰も自ら望んで移民になりたいなんて思う人はいない。「去りたくて去るのではない。暴力と貧困に追い出されるのだ」とは、そんな移民のひとりが放った言葉。暴力といってもそれは耐えるとか耐えられないとか、そういうレベルではなく、一瞬で射殺されるレベル。ギャングや麻薬カルテルといった常識も情けも通用しない相手。昔は移民といえば内戦とか政情不安とかが多かったけれども、今は違うということを、この本を読んで初めて知った。たとえば悪が蔓延り過ぎて国家が崩壊しかかっている中米のホンジェラスとか。「マラス」でネット検索すれば、そういう知らなかった世界が続々とヒットするので、ご興味ある方は検索してみてください。
「もしトラ」が「ほぼトラ」になるかもしれないと言われる昨今だけど、トランプのメキシコ国境の壁がいかに愚策で、嘘で塗り固めた、自分の支持者に向けての空虚なシンボルでしかないということも、この本を読むとよくわかる。著者の村山祐介さん。命懸けのジャーナリズム、ありがとうございました。


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