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精霊を送る時

今日は棚経の日

朝からレッスンして大慌てでお家に戻り

お主様をお迎えし

ほんの束の間日常から切り離されて

止まったような時間の中に落ち着いた


いつも穏やかで

少し寂しげな感じがするお主様は

話上手で私たちを和ませる

久しぶりにお会いして

お年を召されたのに驚くと同時に

あぁ、自分だってそうだもの、と思ったり

過ぎ去った年月は豊かだけど

少し寂しい


今年7月は父の年忌だったのだけど

お仕事で私だけが法事に参加できなかったから

ここにいられてよかったって思う


父はそうした記念日とかには無頓着な人だった

ちょっと破天荒なところがあったけれど

同時にいろんなことを端から端まで

きちんとしていないと気が済まない

几帳面なところもあった


お家のしきたりを守っていかなくてはならないことと

それゆえの窮屈さと

そして生来の天衣無縫な性格の間で

いつも揺れていたのだろうなと思う


年忌に参加できなかったことがちょっと気になっていたものの

同時に父はそうしたことはとんちゃくしないだろうとも思った


それに

少し前から折に触れ

そうあの夏の暑さはしっかりと記憶に刻まれているので

この季節

先日の前鬼川の時のように

日常の中で父を思うことが多くなる

うちの家族はきっとみんなそう


今日は、でも

ランチの時にみんなで思い出話を交わして

いっぱい笑った、そして時に神妙になって

時々、胸の中をきりりと何かが瞬発で過ぎ去っていく


今年は、そして特に今日は、お客様もなんだか多かった

それぞれがそれぞれに

亡くした人を思い

会話の端に思い出がにじむ

言葉に尽くせない

悲しみと寂しさが顔を覗かせる


人はそれぞれが

それぞれのキリリを抱えて生きているんだなぁって

改めて思った今年のお盆


楽しい思い出と

もう会えないと言う悲しみと

入り乱れた一週間


そうこうしながら

また午後からのレッスンへと向かう


自分の痛みを何度も感じて

人の痛みを思って

そして

たとえほんの少しでも

その痛みが和らぐような

そんな時間を提供できたらいいなと思う


※ 2020年8月に書いたものをここに移しました