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ヨハン・シュトラウス《こうもり》

ウィーン国立歌劇場ライブ映像の《こうもり》。オペレッタは初めて。

陽気で華やかで楽しいオペレッタなのだが、どこか影があるように思う。影があるからこそ「嫌なことを忘れて」「お酒を飲んで」陽気に楽しくいこうという印象すら受ける。
アイゼンシュタインが刑務所ではなく仮面舞踏会へ向かう前のロザリンデ、アデーレとの合唱や、ロザリンデがアイゼンシュタインを突き放しながらも許してシャンパン最高!と歌う(表現に語弊があるかもしれない)エンディングなどは特にその印象が強い。

とはいえ、そういったある種の「現実逃避」が痛々しくないのは、歌の軽やかさや華やかさが、無理に「明るさ」を演じているように聴こえないからだと考えた。特にアデーレのアリア「伯爵様、あなたのようなお方は」は笑い声のような高音がとてもかわいらしい。

実はこのアリアにはちょっとした思い入れがある。先日プラハで教会コンサートに行き、アンコールで歌っていた曲がとてもかわいらしく印象的だったのだが、はずかしながら何の曲かわからなかった。その曲がまさに「伯爵様、あなたのようなお方は」だった。アンコールにふさわしい、ハッピーで盛り上がる曲だ。

多幸感で気分よく観終わったあと、赤と金の劇場が映像の端に映った。この光景も思い出を蘇らせる。幸せで、公演に関わった人々への感謝の気持ちに満たされて大階段を降りる。ここまでがオペラ(オペレッタ)鑑賞なのだろう。あとは幕間のシャンパンと宝石のようなスイーツと談笑があれば完ぺきか。

そういえば、来年5月にはウィーン・フォルクスオーパーの《こうもり》来日公演があるらしい。母にこのオペレッタの感想を言ったら興味を示していたので、私と母の誕生日祝いがてら観に行ってもよいかもしれない。