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こどもとうみ「なんでも勝負にしなくていいよね」(シーカヤックの旅①)

 今日は旅小の「シーカヤッククラブ」のメンバーの中でも5、6年生の2名が企画した「シーカヤックで旅がしたい!」の第1弾。葉山の森戸から鎌倉の材木座までのシーカヤックの旅に同行した。

 本当はいつも葉山から見えている「江ノ島」まで行きたいふたり。ふたりは色々調べて実現に向けての「企画書」作りを始めた。江ノ島までの距離を測ると約7kmあるということが分かった。往復すると14kmである。毎週の練習で今まで漕いだ最長はまだたったの2,6kmしかない。一気に行くのは無謀だという判断をした。そこで、まずは逗子海岸まで行ってみて、次に鎌倉まで行ってみてから江ノ島にチャレンジしようか?という段取りを組んだ。しかし、逗子海岸に入り込む距離を考えると、そのまま真っ直ぐに材木座を狙うことも可能のように見えて来たようで、第1弾は、森戸〜材木座というコースになり、時間や持ち物、天候、風、潮などを調べて、段取りを始めた。

 ついたらカップラーメンが食べたい!
それなら持ち物はどうするのか?なにが必要なのか?

 途中でお腹が空いたらどうする??
授業で習った「行動食」を用意しよう。どんな入れ物に、どんな風に用意をするのか?

 こんなことから、どんどん広がり、準備に準備を重ねて、とうとう予定日の前の最後の練習日。浜に行ってみると、風が強く吹いていた。ブロー(強い風)がこちらに向かってくるのが見えるようになって来た彼らは、防波堤の上から海面を眺め、すごく悩んでいた。

 本番の日を考えると今日が最後の海上練習の日。海に出たい気持ちが高まっている。浜に来る前に少々他のことで時間を使い過ぎて、浜に着くのが予定より遅れたこともあり、時間的にもタイト。2人で相談して決めたらその理由を教えて欲しいと伝えて、大人はちょっと距離を置いて待つ。

 「決まった〜」とやってきて、「今日はこの風だと防波堤に貼り付けられそうだし、時間も短くなってしまったので、海には出ない」とのことだった。
 「OK!」と言ったものの、一つだけ助言。
 「風は人間がどうにか出来るものではないけれど、時間はどうかな?」
 「あ、、、、そうだね、、、、」
 「時間を作り出すことは出来ると思うから、次から考えてみて」
 「そうする!」

 そして、その日は自分の乗るカヤックの最終チェック。荷物を入れる場所、足の位置などなど。お互いのカヤックをチェックし合う。
 帰りには「これはこれで大切なことだったね」と言っていた。

 いよいよ本番!
待ちに待って迎えた今日は、ふたりにとってワクワクしかない。出艇を見送るために他の旅小の仲間がみんなで来てくれた。こっそりと(実はバレてたけど)行動食に!と「きなこ飴」と「クッキー」を作っておいてくれて、持たせてくれた。防波堤から「バイバーイ!」「がんばってね〜!!」というみんなの声に見送られながら沖へ。


 逗子沖、大崎沖、逗子マリーナ沖をゆっくりと漕いだり、行動食を食べたり、話したりしながら進む。逗子マリーナのクルーザーなどの出入り口を過ぎると材木座がはっきり見える。小さなうねりが海岸に上がる時は、要注意!と大御所からの今日の助言。先に大人二人が上がり、沖で順番を待って浜に向かう。6年生は大御所の教えを胸に、波が割れるずっと手前から真っ直ぐに走れるように全力で進み、無事に浜へ。5年生は真っ直ぐに!への思いと裏腹に波に横になり、浜の大人がヘルプに走り、無事に浜へ。

 そして、私。
 波が小さいので乗ってやろう!などという邪念のお陰で、まんまと横倒し。笑 ひとりだけビショビショに。

 到着したらまだお昼前なのに、楽しみにし過ぎてすぐさまラーメンを作り出す子どもたち。まずは、ケリーケトルでお湯を沸かす。これがまたいつもより火が育たず苦戦。沸いても量が足りず、数回沸かすことになる。そして、沸いたのに、倒して全部こぼしたり。。。。。笑

 どんなアクシデントも笑いにしかならない。不思議なものだ。

 ラーメン食べていると、沖から5−6名の大人のシーカヤック軍団がやってきた。いつも大人しい5年生が「どこから来たのかを聞いてみたい!」と言い出す。私と二人で近づいてみる。ガイドさんから何か説明を受けているようなので、そこは一旦待とう!と5年生からの提案。そうだね〜としばし側で聞き耳を立てる。(よっぽど怪しい距離だった 笑)
お話がちょっと終わったところで「すみませーん。どこから来たんですか〜?」と尋ねる5年生。「あ!僕たち逗子からです〜そちらは?」「私たち葉山からです」「お〜そちらの方が遠いですね〜」「小学生なんです」「え〜それはすごい!」5年生ニヤリ。ちょっと嬉しそう。
(さらに言えば、ガイドさんもそのお客さんも私の知り合いだった!)

 こういう小さなことも自信に繋がる様子が手に取るように分かる。

 しばらくすると逗子チームが出艇し始めた。「バイバイしに行こう!」と5年生。見送りつつ、波をかわしながら越えていく出艇の仕方に注目をしている5年生。着眼点が違って来ていた。

 お腹もいっぱいになったし、私たちも帰路に着くことに。

 6年生のシーカヤックの前を、無数のイワシの赤ちゃんの群れが飛んでいく。魚大好きな6年生は「あ〜このカヤックの上に全部飛び込んでくれないかな〜」と何度も願うが叶わず。

 行きが3.88kmを1時間。
 帰りが3.75kmを53分。

 何とも競わず、のんびりと自分たちのペースで進む旅。
 初めての距離へのチャレンジ。

 洋上で見たモンシロチョウ、連結したトンボ、イワシの群れ、カモメ、浅瀬の海の中に見えたウニ、飛び跳ねた大きな魚、美味しく食べた友だちから差し入れてもらった元気の出る行動食、遠くから近づいてくるうねりの形、海側からしか見えない崖の下にある穴、うねりに乗った時の感覚、洋上から見る自転車で下見に行った場所。

 どれもゆっくりと進まなければ見られない。出会えない。

 きっと陸上でもそうだ。急いでいたら見えない、見落とす、見逃すものがたくさんあるはず。

 今日のゆっくり旅から得られるものが、彼らの中に育ち、形になっていくのもきっとゆっくりだろう。

 なんでも急ぎすぎる自分にとっても、とても良い時間をもらって感謝!

 Let's go slowly!


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