見出し画像

歩いて「沼」を掻き回せ!

2020年10月13日のツイートに加筆修正。当時、服飾か絵画造形の専門学生が「先生、モチーフが浮かびません。どうしたらいいですか」と質問し、先生が「ミュージアムへ行って目を肥やしてくるといい。幸いここは都内でミュージアムは山ほどあるし、君は学割が利く身分なのだから」と答えた(そして即効性がある回答ではないし学割が利くとはいえお金がかかるので学生さんは不満だったようだ)――というツイートが当番タイムラインを賑わせていた。

「モチーフが『浮かぶ』」とか「自分にとっての正解が『浮かぶ』」とかはたくさんの先行サンプルに触れて頭の中に沼や地層ができた末に実現することだから、この専門学校の先生が「ミュージアム行って目を肥やしてこい」というのは正しいんだけどなあ、という気持ち。

ミュージアムが近場にあったとしても、そこへ行くお金がないなら?建物や動植物や人間を観察しながらのお散歩かしらね。お散歩する時間がないなら?……時間は、今時間を費やしている何かをちょこちょこどけて、なんとか1日30分でも歩く時間を捻出するんですかね。

「制作物のモチーフが浮かばない」に「モチーフの浮力を生むために色んなもの見ておいで。幸い電車で20分、学生料金500円で上野の博物館に行ける」は実に正攻法なんだけど。まあ嫌な顔はされるんだろう。だろうけれど、じゃあどんなこと言って欲しかったのか、顔ではなく口で言ってみなとは思う。

当番さんも「占いを勉強していて、基本は押さえたけれど自分で占いの文章を書こうとしたときや、人に伝えようとしたときに自分のことばが浮かばない。どうしたらいいですか」と問われたら「占いの本(記事)以外の文章や映像作品や音楽や美術にたくさん接してください、頭の中に沼ができると浮力が生じます」って言うわよ……

「蓄積」と「刺激」が必要なのよ何かのアイデアが「浮かぶ」には。鍋に材料を入れて、火にかけてかき混ぜる。どうしても博物館や美術館にアクセスできない、図書館すら行く時間がないなら散歩おすすめよ散歩。大した場所へ行けなくても「移動すること」は「刺激」になる。頭の鍋が掻き回されるよ。

傘を倒して倒れた方向に歩いていってもいいんじゃないの?ダイス振ったりコイントスして方向決めてもいいんじゃないの?だって自分で考えても「浮かんで」こないのだから。先生の言葉もダイスもコインも、くれるのは「正解」ではなく「刺激」。でも、それに敢えて乗ってみることでルートが変わる。

占い師や、元ツイートの先生がくれるものは「わらしべ長者」の最初のお告げだよ。「今日目覚めて最初に拾ったものを大事に持っていきなさい」みたいな。藁を握って歩き回ってみることです……

歩きましょうぞ。狩りに出ましょうぞ。「わらしべ長者」は「今日目覚めて最初に拾ったものを大事に持っていきなさい」と観音様からお告げを受けて、その通りに拾ったわらしべを握って出かけた。でも、わらしべ長者がわらしべを拾って、それを仏壇にあげて拝むだけだったら長者にはならなかっただろうね。

多分ね、「無駄を撃つ余裕がない。矢筒に矢が1本しかない。火縄銃に弾が1発しかない。だから撃ち損じるわけにはいかない。確実に仕留められて金になる1頭を指し示してくれよ!」な心境なのかもしれない。いや、矢が1本、弾が1発しかないからこそ、弓矢なり火縄銃なりを背負って「撃たずに」歩くのよ。

遠足へ行きましょう。「遠足」という言い回しがこどもっぽいと思うなら「取材」と言い張りましょう。取材をしましょう。お金があまりなければ、図書館へ遠足するのです。行ったことのない場所へ足を伸ばしましょう。頭の中で闇鍋を煮るために、鍋で煮るための既存の何かを採集に行くのです。


お気が向いたらサポートをお願いします!サポートは当番の紅茶代となり、ひいては明日への活力となります