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片想いのしまい方-10-

この記事は以下から連続した内容になっています。
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ほかの女の子にはどんな感じなの?(平成元年)

私には以前からずっと気になっていることがあった。
「八軒さんは、私に対していつもからかうような口調で話しかけてくるけど、他の女の子にはどうなんだろう?」ということである。
だから、かなさんがバイト復帰したときには、「やっとその謎が解ける」と私は少しドキドキしていた。
だが、残念なことに結局それはわからず仕舞いだった。
シフト勤務の悲しさで、バイト4人全員が顔を合わせる機会が無かったのと、すぐ隣にある姉妹店の炉端焼き屋が忙しくなったとのことで、男子バイトの2人がそちらに駆り出され、ほとんど話をする機会がなくなってしまったためだ。
そんなこんなで、八軒さんとかなさんがどんな感じで言葉を交わすのかはわからないまま、かなさんのバイト期間は終わってしまった。
そして、もう1つ気になっていた「八軒さんはかなさんが好きなのではないのか?」という点も謎のままになってしまった。

みんなで行くって言ってたハズなのに!

その日、私は日本平動物園でぼんやりとホロホロ鳥を眺めていた。
この動物園では何故か、ホロホロ鳥やクジャクが放し飼いになっているのだ。
そんな放し飼いの鳥たちを眺めながら「なんで私、松山さんと2人だけでこんなトコに来てるんだろう」と思っていた。

かなさんのバイト期間が終わってしばらく経ったころ、松山さんから「昼間、みんなで動物園に行かないか?」という誘いがあった。
私はバイト4人で遊びに行くということだと思い、二つ返事で行くと答えた。
仕事では全員が揃うことが1度もなくて寂しく思っていたので、全員で集まれるなんて夢みたい!と私はすごく嬉しかった。
約束の時間に松山さんが私のアパートに迎えに来てくれて、動物園に向かった。他の2人とは現地で落ち合うものだと思い込んでいたのだけれど、現地に着いても誰もいなかった。
不思議に思って聞いてみると、「2人は都合がつかなかった。」と言われた。
ガッカリしたけれど帰るとも言えず、私は松山さんと2人で動物園を見て回った。
大好きな動物園だったのに、心はちっとも弾まなかった。

翌週のバイト時、八軒さんに「かおりちゃん、松とデートしたんやって?」と言われた。
私は何のことだかわからずに「へっ?」と変な声を出してしまったが、重ねて「2人で動物園行ってきたんやろ。」と言われた。
焦った私は「だって私、みんなで行くんだと思ってたから行ったのに、かなさんも八軒さんも都合が悪かったっていうから‼」と必死で弁解したが、八軒さんは笑って「松はいいヤツやぞ。」と言ってこの話を終わりにしてしまった。

「もしかして八軒さん、松さんと私をくっつけようとしてる?…えっ?でも松さんはかなさんのことが好きだって言ってたじゃん。…ハッ!ってことは、八軒さんと松山さんの認識では、私が松さんに片想いしてるってことになっちゃってるの?それ一番ダメなやつじゃん。」
いろいろな疑問や不安が頭の中をグルグルして、私はどうしたら良いのかわからなくなってしまった。

りくさんは雪が降るとグルグルしちゃうんだよねー。

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