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登場人物の葛藤がエネルギッシュにぶつかり合う舞台 『血の婚礼』

観劇日時:2022/9/27  13:30

★これから観る方、観ようか迷っている方の参考になれば幸いです。

* * *

普段舞台を見るときは、なるべく予習してから行くようにしている。
ただ、今回はそれぞれの役者が誰を演じるのかくらいしか予習していなかった。もう少し予習してから行くべきだったな、と反省。

戯曲は、比喩的な表現、詩的な表現が多くて、少し難解というか、すーっと言っている内容の意味が入ってこないことがある。そういう言葉の表現が、美しさであったり、儚さであったりもするのだけれど。

だから、ある程度ストーリーや設定、背景などが頭に入っていたほうが、見やすいかもしれない。
こちらであらすじが公開されているので、良ければご参考に。↓

ストーリー自体は非常にシンプル。
だから、ストーリーを楽しむというよりは、表現の仕方を楽しむ作品かもしれない。表現力豊かな役者さん揃いだったので、受け取るべきものは受け取れた気がする。

「それぞれが抱く思い、葛藤をそのまま表に出してみるとこうなる」
という感じで、心も体も激しくぶつかり合う。

因縁 しがらみ 愛憎

逃れよう、断ち切ろうとしても、逃れられないものがあって、結局とらわれていて、本当の心には抗えない。
メインの人物たちは皆、そういう葛藤と闘っていた。人間の欲、醜さを見ているようでもあって、終盤に向けて重くのしかかってくる。

舞台のセット、衣装、音、言葉、舞踊的な動きなど、さまざまな手法で心の動きが象徴的に表現されている。それを楽しむ舞台なのかなと感じた。特に、不穏な雰囲気、しがらみが取れていくイメージなどが、美しくもどこか違和感や不快感を抱かせるように演出されていて、面白かった。

【安蘭けい(とうこ)さん】
狂気じみた演技に最初から一気に引き込まれた。興奮し出したら止まらない、やっかいな感じ。
息子への愛情は確かに極端だけど、夫も長男も殺されたとなれば、そうもなるよなぁと。ちゃんと温かい愛情も感じた。
作品の内容は重苦しいけれど、時折クスッと笑わせてもくれる。そこは、とうこさんの元々のキャラクターも作用しているのかな。

【須賀健太さん】
母親の対応に苦労しながらも、傷つけないように上手く立ち回っている、思いやりのある息子という印象。一途に花嫁を想っている。その花嫁を奪われたとなったとき、まるで母ゆずりのような狂気が顔を出して、すごい気迫だった。

【早見あかりさん】
物語の中心人物で、観ながら1番心の動きや展開を追っていたと思う。
終始葛藤する思いを抱えていて、身と心がちぐはぐになりながら、相当なエネルギーを使って演じているのが伝わってくる。

【木村達成さん】
情熱的で、それゆえ危険な匂いもする男という印象。花嫁にどんなに突き放されようと、求め続け、離さないのがすごかった。そのまっすぐさや熱さが、花嫁の心を離さなかったのだろうなと納得。


10/2まで、Bunkamuraシアターコクーンにて上演中。

* * *

【ストーリー】

南スペインのアンダルシア地方のとある村。母親(安蘭けい)と二人暮らしの“花婿”(須賀健太)は、父親と二人暮らしの“花嫁”(早見あかり)と結婚したいという想いを母に告げる。母親は、溺愛する息子の成長を喜びつつも、ただ一人の家族の旅立ちに複雑な想いがのこる。花嫁は優しく家庭的な娘と聞くが、気にかかる噂がある。息子と恋仲になる以前、心を通わせた男がいるという。男の名はレオナルド(木村達成)。かつて、レオナルドの一族に母親の夫と息子は殺されたのであった。

レオナルドは花嫁との恋が破局した後に、花嫁の従妹と結婚し、今は妻子と姑との四人で暮らしていた。レオナルドの友人でもある花婿は、心配ないと母に明るく語る。

花嫁は、花婿と幸せな家庭を築くと決意していた。しかし、花嫁の目の前に現れたのは、かつての恋人・レオナルド。思いもよらない人物の出現に激しく心が揺さぶられる花嫁。忍び寄る不穏な闇・・。
2人の男の愛がひき起こす、婚礼の日に起きる悲劇とは・・。

※公式HPより引用
https://horipro-stage.jp/stage/chinokonrei2022/#story

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