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読みやすい文章を書くために(4)文章は短く

主語と述語は近づける

英語や中国語など多くの言語は動詞が主語の次にきます。

これにたいして日本語は、述語、つまり動詞が文の最後にきます。

これは日本語のひとつの特質です。

同時に、一文が長いと、主語と述語が離れてしまうという難点を抱えています。

涼子は、高田が中野から請け負った昨日の仕事で、高田と一緒に直した文章の中の、卓也が極めて丁寧にアドバイスしてくれた箇所の直し方が、馬場の友人である顧客の飯田の意図にはそぐわないものだったかもしれない、本当は馬場のことをもっと詳しく書きたかったのではないか、最初に高田が主張していたことは正しかったのではないか、自分はもしかするとそれを逆に直してしまうという先日、落合がやったのと同じようなとんでもないことをしてしまったのかもしれない、と悩んだ。

要するに涼子さんは自分の文章の直し方が間違っていたかもしれないと思って悩んだということなのですが、この文は、いったいどういうことを言おうとしているのか最後の「悩んだ」にたどりつくまで分かりません。

しかし読む方はその前に疲れて読み続けるのが嫌になってしまいますね。

それでは主語と述語が離れてしまうのを回避すればいい、と考えて、「涼子は」を後ろに持ってきて主語と述語をくっつけると、もっとひどいことになってしまいます。

高田が中野から請け負ったきのうの仕事で、高田と一緒に直した文章の中の、卓也がきわめて丁寧にアドバイスしてくれた箇所の直し方が、馬場の友人である顧客の飯田の意図にはそぐわないものだったかもしれない、本当は馬場のことをもっと詳しく書きたかったのではないか、最初に高田が主張していたことは正しかったのではないか、自分はもしかするとそれを逆に直してしまうという先日、落合がやったのと同じようなとんでもないことをしてしまったのかもしれない、と涼子は悩んだ。

この文章は何を言おうとしているのか、どころか日本語そのものがさっぱりわかりません。ひどく不親切な文章です。

文章は短くしよう

読みやすい文章にするためには、

・主語はなるべくはやく出した方がよい

・しかも主語と述語との距離は短い方がよい

といわれます。

この2つの要求を満たすのは案外大変です。

でも文章を短くすれば簡単に解決しますよね。

上の文章を短く切り分けてしまいましょう。

シンプルに構造を見れば「涼子は(主語)悩んだ(述語)」、「なぜなぜならば……」ということですよね。

このように文章の基本的な構造(骨)をあらためて確認します。

「なぜならば……」の部分は修飾ですね。ここを分けていけばいいでしょう。

涼子は、きのうの仕事で直した文章の中に顧客の意図にそぐわない直し方をしてしまった箇所があるのではないかと思った。いや、そぐわないどころか、先日落合がやったように顧客の意図とは逆の直し方をしてしまったかもしれないと不安になった。その仕事は高田が中野から請け負ったもので、高田と涼子で添削を行った。その中の一部の箇所については卓也がきわめて丁寧にアドバイスしてくれた。不安に思ったのはその卓也がアドバイスしてくれた箇所の直し方であった。顧客の飯田は馬場の友人であり、高田は、この人は馬場のことをもっと詳しく書きたかったのではないかと主張した。しかし涼子はそれを否定して馬場について書いてあるところを簡略化してしまったのである。涼子は悩んだ。

・文章の基本的な構造(骨)の部分

涼子さんの直し方が顧客の意図にそぐわないものだったかもしれない(事実認定にかかわるもの)

このことと、

とんでもないことをしてしまった(価値判断にかかわること)

この2要素が一文に書かれているところを2つの文章に分けました。

・修飾部分

大半を独立した文章にしました。

このように、長い文章で表現してしまったものは、その枠内で直そうとせずに、文章の基本構造を見ながら分けるのが基本です。

パソコンの普及で、手書きすることなくパソコンに直接打ちこむようになり、長い文章が増えました。

よく意味のとれない文章は、2つ(以上)の文章が1文のなかに含まれてしまっていることが多いのです。

あるばあいには、主語の違う2文がつながっているような文章すら、新聞や雑誌などでもみかけます(さすがに記者の書いたものでなく、寄稿された文章に多いです)。

もう一度立ち返って、文章の基本構造(骨)とそれを修飾するものを意識的に分けて書くようにしてください。



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