味の補助線

先日、cakesの『スープ・レッスン』でご紹介した「きゅうりのコンソメ」で、コンソメキューブを1/4だけ使うという方法をご紹介しました。

そこそこの食材なら水で煮て塩を振ればおいしく食べられる、と思っています。だから、顆粒だしやコンソメキューブを使うことは少なめです。スープ・レッスンも50回目を迎えたのですが、コンソメキューブを使ったスープを紹介するのは、今回が初めてでした。別に嫌ってるわけじゃないんですよ。まあ使わなくてもいいか、となるだけで。

ただ、素材と塩だけのようなシンプルな料理は、作る側からするとすごく簡単でよいのですが、実は食べる側からすると「味わい方が意外とむずかしい料理」なんです。

マヨネーズやドレッシングをたっぷりかけたサラダに慣れた人にとって、そうしたものなしに野菜のおいしさを味わうのは、ピンとこないものです。

「サラダは塩とオリーブオイルだけでいい」という人が、ちょっと味を知っている風に見えるのは、塩だけじゃ味足りないじゃん!と思う私にはわからない味を、もしかしてこの人は知ってるのかも…みたいな雰囲気になるからじゃないでしょうか。(オリーブオイルと塩ばかりかけている人も、どうかと思いますけどね)

マヨネーズかオリーブオイルかはさておき、食材には独特のうまみや香り、ほのかな甘み、苦味、はたまた言葉ではこぼれてしまう、複雑な要素が詰まっています。でも、そうした要素は案外、舌に感じにくいということです。

そこで必要なのが、補助線です。線ってほどじゃないけど。

白い紙に、一本の横棒が引いてあります。何がありますか?と聞かれても、何も見えません。

でも、こんなマークがつくと、どうでしょう。


海に見えてきませんか。想像力が少し少ない人だったら、もう少し書き足す必要があるかも。


同じ一直線でもこうしたらどうでしょう。

こんなものを書き足したら、道すら見えてくるんじゃないかと思います。あるいは、砂漠なのかとか。

ほんのちょっとの、カモメみたいなマークや棒人間だけで、茫洋とした紙の上にさまざまな情報が見えてきます。

私が料理にコンソメキューブをほんのちょっとだけ使うのは、この、何もなさそうに見えるところにも実はすごくいろいろな情報が詰まっていますよ、という合図を送る、味の補助線を引く作業かもしれません。
ほんの少しのコンソメのうま味は、とっかかり。そこから私たちはスープの中に隠れているさまざまな味を見つけ出すことができます。

こうすると、作るのも食べるのもとてもシンプル、それでいて、わかりにくい、味気ないということがなくなります。多少は顆粒だしなんかも使ったストイックすぎないおいしさは、疲れなくていいんじゃないかと思います。

「やりすぎない」は、料理に限らずいろいろなことに言えそうです。シンプルな料理で感受性を磨きましょう。




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有賀 薫

スープ・コレクション5

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コメント4件

とてもわかりやすい絵の喩え。ほんの一欠片角っこをポトンで変わるその感じがわかります!以前おしゃべりした時に話題になったので、伊では凝縮固形スープ使用状況を薫さんに代わって確認中!野菜がふんだんなこの季節、そして地域柄やはり使用機会はほぼゼロ。塩や水、麦、野菜、肉の味に滋味がありそこから滲み出る味。水や太陽、気候が違うからで。そこを足すという考え方もありかも。
珠美さん、ありがとうございます。イタリアいかがですか?
食材そのものがおいしければ、固形コンソメなんて全く必要ないものですよね。日本では働いている人の買い物事情があまり良くないこともあります。十分でない食材で作るために、多少こうしたものの手を借りることは必要なのかもしれないと思っています。あとは時間ですね。時間泥棒に奪われている時間を、少し取り戻さなくては(笑)
補助線の考え方、とても納得しました。人によってはひとつの補助線でピンとくるし、たくさんの補助線があってもなかなか理解できない人も。絵の場合も料理の場合も、やはり経験が大切なのかな?
Kenjiさんありがとうございます。作る側と見る側の双方の歩み寄りで成り立つものが、面白いんじゃないかなと思っています。おっしゃるように、経験によって、それは変わりますよね。
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