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味の補助線

noteに書いた「きゅうりのコンソメ」のレシピで、コンソメキューブを1/4だけ使うという方法をご紹介しました。

そこそこの食材なら水で煮て塩を振ればおいしく食べられる、と思っています。だから、顆粒だしやコンソメキューブを使うことは少なめです。別に嫌ってるわけじゃないんですよ。まあ使わなくてもいいか、となるだけで。

ただ、素材と塩だけのようなシンプルな料理は、作る側からするとすごく簡単でよいのですが、実は食べる側からすると「味わい方が意外とむずかしい料理」なんです。

マヨネーズやドレッシングをたっぷりかけたサラダに慣れた人にとって、そうしたものなしに野菜のおいしさを味わうのは、ピンとこないものです。

「サラダは塩とオリーブオイルだけでいい」という人が、ちょっと味を知っている風に見えるのは、塩だけじゃ味足りないじゃん!と思う私にはわからない味を、もしかしてこの人は知ってるのかも…みたいな雰囲気になるからじゃないでしょうか。(オリーブオイルと塩ばかりかけている人も、どうかと思いますけどね)  

マヨネーズかオリーブオイルかはさておき、食材には独特のうまみや香り、ほのかな甘み、苦味、はたまた言葉ではこぼれてしまう、複雑な要素が詰まっています。でも、そうした要素は案外、舌に感じにくいということです。

そこで必要なのが、補助線です。線ってほどじゃないけど。

白い紙に、一本の横棒が引いてあります。何がありますか?と聞かれても、何も見えません。    

でも、こんなマークがつくと、どうでしょう。


海に見えてきませんか。想像力が少し少ない人だったら、もう少し書き足す必要があるかも。


同じ一直線でもこうしたらどうでしょう。

こんなものを書き足したら、道すら見えてくるんじゃないかと思います。あるいは、砂漠なのかとか。

ほんのちょっとの、カモメみたいなマークや棒人間だけで、茫洋とした紙の上にさまざまな情報が見えてきます。

私が料理にコンソメキューブをほんのちょっとだけ使うのは、この、何もなさそうに見えるところにも実はすごくいろいろな情報が詰まっていますよ、という合図を送る、味の補助線を引く作業かもしれません。
ほんの少しのコンソメのうま味は、とっかかり。そこから私たちはスープの中に隠れているさまざまな味を見つけ出すことができます。

こうすると、作るのも食べるのもとてもシンプル、それでいて、わかりにくい、味気ないということがなくなります。多少は顆粒だしなんかも使ったストイックすぎないおいしさは、疲れなくていいんじゃないかと思います。

「やりすぎない」は、料理に限らずいろいろなことに言えそうです。シンプルな料理で感受性を磨きましょう。




読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。