ホットクックとバーミキュラライスポットと、自動調理家電のゆくえ

食材と調味料をセットして、スイッチオン。あとは放っておけば料理ができるという自動調理家電。どこまで実用的になっているのかと、シャープの「ヘルシオ ホットクック」を購入してみた。(買ったいきさつ使用レポ―トは下のnoteでどうぞ)

今日は使用レビューの続きをしながら「自動調理家電」について、考えたことを書いてみようと思う。

ホットクックは、肉じゃがも、カレーも、ぶり大根も、ポトフも、材料と調味料を放り込んだら、スイッチひとつでできあがる。仕掛けてしまえば、あとは何をしていてもいい。その点はほんとうに極楽。煮え具合もなかなかで、無水のトマトチキンカレーなんて最高だったし、塩豚をゆでたのもしっとりと仕上がった。

ただ、このホットクックを、料理を普段あんまりやらない人が使ったらどう感じるだろうかということを考えてみたら、いろいろな問題点がありそうだ。

まず、公式のレシピブックのメニューが今ひとつ。今日のおかずになるようなものを探そうとすると、ぴったりくるものが少ない。カレーや肉じゃがぐらいポピュラーなものはよいとして、ひじきの煮物、里芋の煮ころがし、筑前煮、かれいの煮つけ……うちで最後に食べたの、いつだっけ。
嫌いじゃないけど、手間ひまかけておいしくできても、あまり家族が喜ばないので消えていきそうなメニューたちは、昭和の料理本のようなラインナップ。

それに、スイッチを押すだけ、といっても、洗う、切るは自分の仕事。里芋の皮をむく、魚の頭と内臓をとる、ひじきをもどす、複数の野菜を細かく刻むなど、下ごしらえにめんどうな工程が入っているのも、気になる。

料理が苦手な人たちは、このレシピに書いてある材料は揃え切れないのでは…?と思った。『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』の編集の野本さんは、たまねぎやじゃがいもの皮をむくのすら、めんどうと言っていた。(野本さんこんなところで名前だしてごめんね)

味付けも、煮物は醤油濃いめ、ミートソースにはケチャップと小麦粉が入るなど、こういっては失礼だけど、あか抜けない。
ま、味は自分で調節すればいいじゃんと思っていた。ところが、自己流に使おうとしたとたんに、まごつく。水の量と調味料を計算した上で、作りたいものに近い調理を選んでスイッチを入れなくてはならないからだ。
いつも目分量で加熱時間を決めたり調味料を入れていた私には(というか、ほとんどの人はそうだと思うけれど)、この「逆算レシピ」の組み立てができない。
成功したのもたくさんあったけど、わけのわからない料理もずいぶんできた。

ホットクックの愛用者で有名な評論家の勝間和代さんが、ホットクックのそばに、常に計算用のGoogle homeと秤を置いてあるというのはとても納得できる。
彼女はホットクックを導入してから食事の質がすごく上がったそうだが、そうやって、適切な量の塩の量がわかってはじめて、乗りこなせるマシンなのだ。裏を返せば料理ガジェット好きな人の心をくすぐるのも、またそうした点だと思う。

実用という点では、置き場所や、デザインも気になるところ。
これについては、同じく自動調理、無水調理を謳う、バーミキュラライスポットと比較するとわかりやすい。ホットクックもバーミキュラライスポットもうちにあるのは2人世帯に合う小さなサイズのほうだ。

ホットクックの持ち手の横幅は35cmあって、場所もとる。普通の家でどこに置く設定なんだろう…。

バーミキュラライスポットのほうは、鍋にIHヒーターの袴を履かせた構造で、サイズもデザインも卓上に置いても違和感がないように作られている(それと引きかえに、自動調理器としての性能はすっぱりと切り捨てられている)。
この商品のターゲットは完全に「ハイクラスの、スローライフ的志向のある、料理を楽しむ家庭」なのだ。売れているかどうかは別として、商品からはっきりとそれが感じられる。

バーミキュラライスポットは付属のレシピも豪華で、おしゃれなメニューばかり。スパイスやハーブが多用され、この鍋でステキな暮らしができますよ、というメッセージが明快だ。逆にそこを求めていない人にはまったく響かないはず。

話をホットクックに戻して、レシピやデザインからどんな人が使うのに向くかをイメージすると「子供たちも大人に近くなったか、自立して家から出ていった中年〜老夫婦家庭」が目に浮かぶ。それまで結構料理をやっていた専業主婦が、使うことを楽しみつつ楽をするための道具。そう考えると、レシピ、デザイン、使い勝手などすべてのつじつまが合う。あとは、勝間さんのようなガジェット好きか。

私は仕事でもあるし面白がってこのマシンを使っているのだが、SNSなどでみんなに「ホットクックどうですか?」「私もほしくなりました」と言われて、いいところ、悪いところ含めて伝えないといけないなと思って、考えうるマイナス面もピックアップした。

それと、自動調理家電がもっと必要としている人に向かうものであってほしいなということを、発信したかった。

料理は、家事の中でももっとも複雑で、各家庭での個別性や嗜好性が高い家事だ。それだけに、ひきうける人の荷は重い。自動調理器が本当に「使える」ものになれば、料理を負担に思う人たちはどれほど救われるかと思うが、買ったマシンが重荷になっては意味がない。

全自動洗濯機ができ、お掃除ロボットが普及し、その次にくるのはやはり自動調理器だろう。それを使う人はどんなライフスタイル?
家族は何人?
日々の食事に使えるお金は?
どこに住み、買い物はどこで?
ふだんは何を食べているの?
その人たちに響く仕様やデザイン、レシピというのはどんなもの?

高い技術を持ったナショナルブランドには、マニア向けの家電ではなく、一家に一台置かれるのが当たり前になるような未来の家電を作って欲しいとやっぱり期待してしまう。
だからこそ、作る側だけでなく、使う側ももっと欲しいものについて大きな声をだしていったほうがいいんじゃないかなと思って、書いてみた。

今まさにこの機能を必要としている人たちは、まだ自動調理器をリアルに感じてはいないかもしれないけれど、ごはん作りがもっと楽になる時代はきっとくるし、そうしたらキッチンもまた、変わるだろう。

ホットクックでポトフを作る。あらかじめプログラムされているので、材料を入れて、スイッチを入れるだけ。

完成。スープが澄んでいる。これは、きちんと鍋の中で温度がコントロールできているということなのだ。さすがだと思う。

この技術を、ぜひ未来の食卓のために使えるようにして欲しい。

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有賀 薫

新しいカテイカ

「新しいカテイカ」は、もっと生きやすい家事へシフトする家庭運営プロジェクト。家事を考えるコラムやイベントレポートを発信します。 https://note.mu/atarashiikateika
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コメント9件

お返事ありがとうございました。
やっぱ自動調理器は買ってきた野菜を入れたら、洗って皮剥いて切るとこまで自動でやってくれるようになってほしいですねw
有賀さんの中で、ひとつの「料理しない人」ロールモデルとして役立てて嬉しいです!笑 ホットクック、公式レシピメニューへのツッコミはさすがだと思いました。時短というと、「忙しい現代の共働き夫婦」に向けた道具なのかなと勝手なイメージがありましたが、汎用性はそうでもなさそうですね。
野本さん、あちこちで引き合いに出させてもらってます(笑)全自動洗濯機も掃除機ロボットも、最初は全然、誰が使うの?という感じでした。でも、こういうのが欲しいなあというのは、メーカーには伝わるものだと信じています。ここだけの話、わたしのスープのレシピをこれでやったら、かなりいいのではと思うものがたくさんありました。
どんな人向けかよくわかるレビューでした。ありがとうございます。
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