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『梟の夜』【朗読フリー台本】

(約800文字) 少しレトロな物語りです。気に入った方はどうぞ朗読にお使いください。

『梟の夜』

作:奥村薫

音声版

『梟の夜』作:奥村薫【朗読】 Stand.FM https://stand.fm/episodes/650d2dd6d0c67b91a64ee794

朗読あんさん版


テキスト版

ある秋の夕暮れ時に、柳田(やなぎだ)は書斎の窓際で読書に耽(ふけ)っていた。遠くで鳴る鐘の音、そして近くで鳴く梟の声。足元には、いい年をした黒猫がすり寄ってきた。亡き妻、美佐子が愛していた猫である。

梟は、裏庭の向こうのあの大きなケヤキの木の枝に、潜んでいるのだろうか。
 
そういえば、昨日、寺の和尚と会ったときに、村の古い伝説を聞かされた。「梟と目が合った夜、死者がこの世を訪れる」のだという。
まさか、こずえに潜んでいる梟と、じかに目があうことなど、そうそうはあるまい。
 
先ほどから続いている梟の鳴き声は、まるで泣き女のようだ。低く続くすすり泣き、そして時折か細い高い嗚咽がリズムを作る。葬儀の日に雇われて、死者への敬意を表すという泣き女…。
 
本から目を上げて外を眺めると、黒猫が裏庭を歩いている。いつの間に出ていったのだろう。あいつは、ケヤキの木に向かって優雅に歩いて行く。大きな木は、すでに枝の先から葉が色づき始めていた。

そして、猫は立ち止まると、上を見上げて、「にゃ~ご」と鳴いた。
 
その声にこたえるように、梟が翼を広げ、空中を滑るように降りてきた。羽を広げた梟は思った以上に大きかった。柳田は、猫が梟の爪にかけられるのではないかと恐れ、慌てて立ち上がった。大きな灰色の梟と、小さな黒猫。
しかし、梟と猫は至近距離で静かに向かい合っている。

そして、黒猫がゆっくりと柳田を振り返ると…梟もすうっと首を回して、その大きな二つのまなこが、柳田を捉えた。

暗い夜の中、梟の瞳の中には、星空が見えた。
美佐子の声が聞こえてくる。「久しぶりね…」

そして、ゆっくりとその瞼(まぶた)が閉じられたとき、背後で、からんと音がした。振り向いてみると、美佐子が愛用していた笛が、おちていた。
 
その笛を手に取り、窓を開けると、梟がゆっくりと羽ばたいて飛び立った。
柳田は深く息を吸い込み、その笛の口に、唇を当てた。

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