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『黒猫がたり』 【朗読フリー台本】

(1100字)『黒猫同盟』の続編です。ChatGPTを使いつつ、猫好きが書いた、何も起こらない物語り。気に入った方はどうぞ朗読にお使いください。


『黒猫がたり』 作:奥村薫

テキスト版

秋も深まり、ひんやりとした空気が心地よいある日、作家黒川の家を訪れた客は、窓辺にくつろぐ一匹の黒猫に目を留めた。その猫は、しなやかに降りてきて、ひとしきり訪問者の匂いを確かめた後(のち)、再び元の場所へ戻り、日の光を浴びながら、どこか遠い世界を見つめるように静かに自分の身体をなめていた。

「この家に、猫がいましたっけ?」
訪れた客は、ある雑誌の編集者だった。彼女は黒川の作品について話し合うために来たのだが、その黒猫の優美な姿に心を奪われた。

「黒川さん、この猫は…?」
黒川は、編集者の視線を追い、黒猫に目を向けた。
「ああ、奇妙な縁でね…。数週間前から、彼女はここで暮らしているんだよ。」

「名前はなんというのですか?」
「『夢路(ゆめじ)』、夢に、路と書く」
「夢路……素敵な名前ですね。」
「そうだな、今、彼女の短編を書いているんだが…。」

編集者は興味津々でうなずき、黒猫に視線を戻した。夢路はその視線を感じ取ったのか、一瞬、大きな瞳をこちらに向けたが、すぐにまた自分だけの世界に戻っていった。

「不思議なことに、夢の中に出てくるのだよ。だから夢路と…」
黒川は語りつづける。

「夢路は。夢の中で色々な光景を見せてくれる。でも、その意味については何も語らないのだよ」
「なるほどですね…、猫に導かれるお話ですか」

編集者は、黒川の瞳に宿る創作へのひたむきな想いを見て、期待を膨らませた。彼女は編集者というよりも、一人の読者としての好奇心を抑えきれずにいた。

黒川は机に向かい、原稿をいとおしそうにめくる。そしてその短編について語り始めた。彼女はしだいにその場にいるだけで、何か懐かしい物語の一部になったような感覚にとらわれてきた。これが彼の作家としての想像力の産物なのか、それとも黒川が本当に信じていることなのか、判然としない。彼女はしばし言葉を失い、再びそっと黒猫の姿を盗み見た。

夢路は依然として陽だまりの中で、まるで話を聞いているかのように、瞼を閉じ、耳だけをこちらに向けていた。
「彼女は、まだ見ぬ物語の片鱗(へんりん)を見ているのかもしれないね。」
黒川は微笑み、再び目を原稿に落とした。

「では、その物語を…。」と彼女が言葉を続けようとしたその時、黒猫がこちらに近づいてきて、黒川の膝にひらりと跳び乗った。

その猫の背に手を添えて、黒川は言った
「夢路と共に、僕は新たな物語を紡ぐ。彼女が見せてくれた夢の中の路を辿っていこうと思う。」

窓の外では、秋風のなか、黄金色(こがねいろ)の落ち葉が舞い、輝くポプラの葉が揺れるたびに光の波紋を作り出していた。

夢路が黒川の膝の上でくつろいでいる。
穏やかな夕暮れの光に包まれ、そこには静かに満ち足りた時間が息づいていた。

音声版

薫のつらつら語り: https://stand.fm/episodes/654b4e49a2192de0fc67189c

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