見出し画像

【小説】 紅(アカ) 別の世界とその続き 第28話

第28話

人魚になった僕は何をして生きていけば良いのだろう。ここには、洋服を作る機械も材料も無い。
そもそも、服を作る意味すら無い。

あんなにかき集めていた食料も、今は欲しいとも思わない。欲しい物も無い。全て意味の無いことだと分かってしまったら、集める意味が無くなった。
まあ、そもそもここにはそんな物なんて無いのだけれど。

同じ様な考え事を毎日の様に繰り返す。
ほとんど意味の無い、どうでも良い事。

地上にいた頃、僕にはやる事があった。
やりたい事。得意なことでは無い。

妖精のリリーは前に僕のデッサンを見て、上手いと言ったが、別に初めから描けた訳でも無い。
ただ、やり続けただけだ。

特別な何かを僕は持っている訳では無かった。

洋服を作るのも、得意な訳では無い。
ただ、それに費やした時間が人より長いだけだった。


僕には初めから何かがあった訳では無かった。
ただ、そういう人になろうと思って始めただけだ。
 
 
 
 
 
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?