KAORU

渡邊 薫 小説や詩を書いています。恋愛ものやファンタジー。パラレルワールドも好き。

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  • GUILTY&FAIRLY

    全てはある妖精に出会ったことから始まった。 これは、はたして単なる冒険の物語だろうか。 異世界への扉。パラレルワールドに飛び込むことが出来たなら、どうなるのだろう。 自分自身はどう感じ、どう行動していくのだろう。 あるはずがない。 凝り固まった頭では、決して覗くことのできない世界。

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    人生に関する詩を載せています。

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GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

第十一章 ジャンの選択 僕は、ある時リリーに聞いてみた。 「ねえ、リリー。一緒にあの禁忌の扉、通ってみない? 毎日同じ日常にリリーも飽き飽きしてきたんじゃない?」 すると、リリーは凛とした表情で僕に言った。 「私は行けないわ。私にはアンナに託された役割があるから。最後までやりきるわ。ジャンが行きたいなら、……寂しくなるけれど、私は止めない」 ——彼女には、僕の表情はどう映っているのだろう。 彼女は、弱くも、儚くもなかった。 門番という重みを背負う覚

    • GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

      第十章 禁忌の扉 数年ごとに、リリーは歌で呼ばれた。 門番の仕事だ。 呼ばれると、リリーは嬉しそうに海面に向かった。 何年もそうして過ごすうちに、リリーは少しづつ鱗が剥がれ落ち、魚の皮膚が剥がれ落ち、さらに美しい人魚になった。 門番以外も海面に出ることはできた。 けれど僕は、行きたいと思う理由もなかった。 毎日海の底で暮らした。 ある時、禁忌の扉があるという話を聞いた。 石のような色になったサンゴ礁が作る大きな輪。 これが扉らしい。 ここを潜ると

      • GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

        第九章 異世界 辺りは混沌としているようにも見えた。 チカチカと黄金に輝くクラゲが大群でいて幻想的かと思えば、異様な顔つきの薄暗い深海の生き物もいた。 何もかもが目新しかった。 けれど、海の生き物からすれば、ただの人魚が増えただけ。 見向きもされなかった。 中には僕の体の何十倍もある生き物が目の前に現れた。 未知の世界に、正直、心が踊った。 僕は何か刺激を求めていたのだろうか。 恐ろしげに見える巨体の生物にも、ドキドキして興奮していた。 僕のそばには美し

        • GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

          第八章 門番 僕らは誰にも言わずに、二人であの海に向かった。 海は夕陽に照らされ赤く染まり、優しく波うち、まるで僕らを手招きしているようだった。 僕は正しい選択ができているのだろうか。 僕は、今度こそ君を守れるのだろうか。 リリーは波打ち際に立ち、またあの歌を歌った。 赤い海からその歌に応えるように、神々しく人魚のアンナが現れた。 「アンナ、私……」 リリーがそう言うと、アンナは、 「決まったのね、覚悟。……彼も一緒に?」 そう言って僕の方を

        GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

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          GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫     

          第七章  買い物 買い物はとりあえずこの間、出掛けた時に見かけた肉屋に向かった。 外食はまだ落ち着かない。何か食材を買って帰ろうと思った。 肉屋に着くと、店の一番良いステーキ肉を指差して 「これを二枚ください」 と言ってみた。 店主は 「特選ロース二枚だね」と言って、肉を包み始めた。 いつもなら、何かのお祝いや自分へのご褒美の時に買う肉だったが、お金が要らないならと贅沢に二枚注文した。 店主はにこりと笑って、 「はい、特選ロース二枚ね。……また、洋

          GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫     

          GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

          第六章  アンナ 僕はリリーに連れられて木々が立ち並ぶ街外れにやって来た。 本当に、この木々の先には海があるのか。 海なんて、生まれて初めて見る。 僕は、期待とソワソワした様子がリリーにバレないように平静を装っていた。 リリーは、僕の腕をグイッとひっぱり、 「早く行こう!!」と、笑顔ではしゃいでいた。 僕はリリーに引っ張られるままに木々をすり抜け、 とうとうやって来た! 海に!! 足元は真っ白なサラサラとした砂が一面に広がり、その先には太陽の光が反射した

          GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

          GUILTY&FAIRLY 『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

          第五章  こちらの世界のジャン 朝、ベッドで目覚めてまた思った。 夢かもしれないと。 けれど、昨日帰って投げ散らかしていた荷物を見て、ああ、やっぱり夢ではなかった、という思いが頭をよぎる。 僕はキッチンへと行き、我が家とほとんど変わらない家で、水を飲みながら思った。 こっちの世界のジャンはどこに行った?  リリーは、昨日僕を見て、どう見てもジャンだ。と言っていた。 という事は、見た目は殆ど変わらない。 けれど、ウィリアムやオリバーも全然違う雰囲気だった。

          GUILTY&FAIRLY 『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

          GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫     

          第四章  似た街並み 街は、僕が住んでいた世界と似ていて、白い建物に、青やピンクなどの鮮やかな色のドアがつき、統一感のある美しい街並みだった。 緑も多く、至る所に木々や花々があった。 自然と調和された世界だ。 ただ、どこを見渡しても妖精がいない。 僕が住んでいた世界では人間の手のひらのサイズの妖精が飛んでいた。 「……妖精が、全然いないね」 僕は恐る恐る聞いてみた。 「妖精? あの絵本とかに出てくる?」 何となく予想をしていた答えが返ってきた。 …

          GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫     

          GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

          第三章  この世界 どれくらい眠っていたのだろうか。 目が覚めて、音のするキッチンの方へと向かった。 「落ち着いたか?」 ウィリアムは、温かい沢山の野菜が入ったコンソメスープを器に装って、僕に渡してくれた。 「まあ……少しは」 リリーはまだ心配そうな顔で僕の事を見ていた。 ウィリアムは優しい声で僕に尋ねた。 「それで、どうしたんだい? 何かあったのか?」 「……」 「まあ、言いたくないのなら良い。ちょうど君の店に服を取りに来たところで良かったよ」

          GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

          GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫     

          第二章  夢 僕はベッドで目が覚めた。 見覚えのある、いつものベッドだ。 ……ああ、良かった。全ては夢だった。 ……全ては夢だった。 どこからどこまでが夢だったのか。 僕は、家でオーダーメイドの洋服屋をしていて、そこへある日、隣の木の上に妖精が家を作った。 木の葉や枝でできた妖精の家だ。 隣に家を作った妖精は、名前をリリーだと言っていた。 蝶のような美しいブルーの羽で僕の目の前を飛びまわっていた。 僕たちは、別の世界に繋がる扉が森にあると聞いて、一

          GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫     

          GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

          僕は、別の世界から扉を通って、この世界に来た。 全てが似ているようで似ていない世界。 僕の一番大切な人がいない世界。 第一章 似た世界 僕はリリーを失って、この世界に茫然と立っていた。 夕焼けに染まった空は赤く輝いていた。 僕は、森にあった異世界へと繋がる扉を抜けて、ずっと歩き続けた。 すると街が見えた。 夕日がその街までも赤く輝かせていた。 街の方に近づいてみると、僕の住んでいた世界なのかと見間違えるかのように似た街並みがあった。 知って

          GUILTY&FAIRLY           『紅 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

          GUILTY&FAIRLY 『蒼 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

          第十四章  扉 リリーを手のひらに乗せ、リリーの案内する方に進むと、色鮮やかに咲いていた色とりどりの花が減り、今度は小さなブルーの花が点々と咲いていた。 その花は、周りにある木よりも大きな太い木の根に続いていた。 盛り上がって入口のように開いた根の間を指差してリリーが言った。 「ここが、入口よ」 「これが扉?」 「違うわ。扉が開くのはこの先よ」 二人でその根をくぐると、そこは辺り一面小さなブルーの花で埋め尽くされていた。 まるで青い絨毯が敷いてあるかの

          GUILTY&FAIRLY 『蒼 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

          GUILTY&FAIRLY 『蒼 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

          第十三章 最後の森 少しずつ辺りの景色が変わり、ただの森へと姿を変えていった。 「意外と大丈夫だったね、二つ目の森」 「ああ、二つ目の森はもしかしたら使いようによっては、いいものかもしれない。今は留まっている暇はないけどね」 地図を見ていたオリバーが急に立ち止まり言った。 「ちょっと待って」 「どうしたの?」 「この辺から、ちょっと曖昧で」 「……君が分からないと、誰もこの先なんて分からないよ。ちょっと見せて、その地図」 「いや、待ってくれ。ちょっと考える

          GUILTY&FAIRLY 『蒼 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

          GUILTY&FAIRLY 『蒼 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

          第十二章 ウィリアムの目的 「どこまで行ってたんだい。遠くまで行くなと言っただろう」 「ごめんなさい。でも、食べたりしていないから」 「それならいいけど、今の所危険もなさそうだし、そろそろ休憩にしよう。何も食べないで歩いていると、逆に不安だからね」 「それは嬉しい。美味しそうなものばかり見て、さっきからお腹が鳴っていたんだ」 みんなは生クリームが垂れている大きな木の下で荷物を下ろして食料を出した。 「そういえば聞いていなかったけれどウィリアム、君は何であん

          GUILTY&FAIRLY 『蒼 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

          GUILTY&FAIRLY 『蒼 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

          第十一章  二つ目の森 交代で仮眠を取り、持ってきていたフルーツサンドなど食事も摂ってみんな一日目の疲れが取れた様子だった。 荷物を片付けて、オリバーがみんなを集めて次の森の説明をした。 「みんなしっかり休息も取れて食事もして万全な体制だと思う。次の森は【強欲の森】と言って、身体感覚優位な人が特に影響を受けやすい森だ。特に味覚部分に反応する。森に入る前のテストだとウィリアムが特に要注意だという事になるけれども、先ほどの森でも分かったように、他の人も影響を受

          GUILTY&FAIRLY 『蒼 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

          GUILTY&FAIRLY 『蒼 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

          第十章  約束の日 「オリバー、いつ来るのかなぁ」 「さあ。時間を言ってくれなかったからね。僕にも分からない」 二人は、準備万端でいつでも出られるようにと待ち構えていた。 店の看板は閉店になっていて、『しばらくの間休業させていただきます』と張り紙がされていた。 時計が十時を回った頃、店のドアが開いた。 「オリバー!!」 「やあ、お待たせ。ちょっと店に寄ってきたから遅くなったよ」 そう言って、手にはフルーツサンドが三人前入った袋を持っていた。 「オリバーって

          GUILTY&FAIRLY 『蒼 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫