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【小説】 紅(アカ) 別の世界とその続き 第13話

第13話

僕はリリーに連れられて木々が立ち並ぶ街外れにやって来た。
本当に、この木々の先には海があるのか。
海なんて、生まれて初めてみる。
僕は、期待とソワソワした様子がリリーにバレないように平静を装っていた。
リリーは、僕の腕をグイッとひっぱり、
「早く行こう!!」と、笑顔ではしゃいでいた。
僕はリリーに引っ張られるままに木々をすり抜け、
とうとうやって来た!
海に!!
 
足元は真っ白なサラサラとした砂が一面に広がり、その先には太陽の光が反射した、透き通っていて美しい柔らかなブルーの海があった! 
オーロラの細やかなラメが水面でキラキラと輝いている。
小さく砂浜に寄せる波が白いサラサラとした砂を捕まえては海に引き込んでいた。
空は、雲が太陽に優しく照らされていた。
とても幻想的だった。
人魚がいてもおかしくないと思った。
僕はサッと、靴を脱いで海の方へと走りだした。

すると、リリーは大きな声で僕に向かって叫んだ。
「ジャン! 危ないっっ!」
リリーが大きな声を出したので、海に太腿まで浸かったところで僕は立ち止まってリリーの方に振り返った。

すると、リリーは、手をこまねいて僕を呼んだ。
「早く!! こっちに戻って来て!!」
何で何だろうと、海の方へと向き直した途端、僕の顔スレスレに何かが噛みつこうと海の中から飛び出して来た。
「うわあああぁあっっっっ!!!」
僕は思いきりのけぞり、こけそうになりながらも後ろへと逃げた。

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