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酷暑について

世界有数の観光大国タイは、年間を通じて気温30度前後の熱帯に属するが、新たに「避暑需要」の掘り起こしに取り組んでいるのだという。世界中が熱波に見舞われた結果、タイが相対的に涼しく感じられるようになったからである。

まるで悪い冗談にしか聞こえないような話であるが、どうやら本当の話のようである。

日本も米国も欧州も、異様な酷暑に苛まれている。欧米や日本などの夏休みシーズンである6〜10月は、タイの雨期と重なる。タイの雨期は夜間の気温が25度程度まで下がる日も多いとのことなので、「タイで避暑」というのは、十分に納得のできる話となる。もっとも、雨季のスコールは、バケツの水をひっくり返したような土砂降りであり、道路が冠水することも珍しくない。ただし、雨が上がれば涼しくなり、過ごしやすい。

日経のこの記事を読んで、数年前に観光で沖縄に訪れた際に、同じような話を、沖縄の人からも聞かされたのを思い出した。

沖縄は1年を通じて温暖であるが、夏でも最高気温が35℃を超える猛暑日になることはほとんど無いし、真冬でも10℃以下になることは滅多にないという。高温多湿ではあるが、現地の人に言わせると、「真夏の大阪の暑さに比べたら、全然マシですよ」とのことであった。

タイや沖縄に本当に移住するか否かは別としても、昨今のような異常気象に見舞われると、同じ場所に定住することのリスクについて真剣に考えた方が良い。夏になれば、軽井沢や六甲山の別荘に避暑に出かけるようなおカネ持ちの真似はできないとしても、リモートワークやワーケーションが許されるような人であれば、少しでも過ごしやすそうな居場所を求めて、あちこち移り住むことも、現実的な選択肢として検討に値する。日本には、大地震や火山噴火等の大規模自然災害のリスクもあるのだ。「一所懸命」に生まれ故郷の土地にしがみつくことばかりに固執しない方が良いのかもしれない。

映画「男はつらいよ」の主人公である車寅次郎は、冬は暖かい南へ、夏は涼しい北国を、風の吹くまま気の向くままの旅を続けていた。当時は羨ましいと思ったが、昨今のように暑くなると、北国の夏も涼しいとは言えないだろう。常夏の沖縄やタイの方が過ごしやすいとは、本当に生きづらい世の中になってしまったものである。


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