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「小さな英国」について

大英帝国の版図は、20世紀の初頭くらいが最大規模であった。当時はインドも大英帝国の一部であり、英国王がインド皇帝を兼務していた。

現在の英連邦というのは、旧大英帝国の領土だった国々56ヶ国で構成されるが、内訳は、英国王が元首を兼ねる国もある一方で、独自の君主を持つ国、共和制の国もあり、内情はそれぞれである。「連邦」というよりは、実態としては同窓会やOB会みたいなものではないか。経済的あるいは実利的な結びつきというよりも、もっとノスタルジックなつながりであろう。

いずれも、かつての大英帝国の旧植民地である。帝国主義的な列強としての振る舞いに関しては、日本などはアマチュア並みであったし、アマチュアのまま終わってしまったが、大英帝国は本家本元であった。ひどい搾取が行われていたはずだし、加盟国からすれば、本音としては、恨みつらみや文句を言いたいことなど、山ほどあるのだろう。

エリザベス女王が崩御して、チャールズが後を継いで、その先も同じような体制が維持されるかどうかは、加盟国それぞれの判断に委ねられる。各国とも主権国家だし、離脱するのも居残るのもそれぞれの国で個別に考えるべきことである。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのような国々が、立憲君主制と言われても、あまりピンと来ない。実態としてこれらの国々の国民がそういう意識を持っているのかどうなのか。

この辺りの事情は、日本の「象徴天皇」と似ているかもしれない。国民の大多数が、「もう、いらないじゃない?」と思うようになれば、離脱云々を議論する前に、誰にも見向きされない「オワコン」になってしまう。

今までは、エリザベス女王のいわば「個人技」で、屋台骨が腐りかけた体制をなんとか維持して来たのであろうが、同じことが新国王に務まるのかどうか。そもそも、そういう面倒くさいことに取り組む意欲があるのかどうか。この辺はよくわからない。

「英連邦」どころか、本国の英国自体、同じことが言える。スコットランドの独立云々の話はなくなったわけではない。スコットランドがもし独立したら、ウェールズとか北アイルランドに飛び火するかもしれない。かつての大英帝国ならぬ、「小さな英国」の始まりである。サッカーやラグビーのW杯ではないが、何年か後には、イングランド、スコットランド、ウェールズが別々の国になっているかもしれない。

そもそも、立憲君主制を維持する必要あるのか、共和制でも良いんじゃないといった議論だって起きる可能性はある。既に起きているかもしれない。

日本も対岸の火事とは言えない。今上天皇の後、秋篠宮が皇位を継承するとして、長女夫婦ともうまくやれず、家庭崩壊させてしまっているような御仁に対して、国民の大多数が、「もう、いらないじゃない?」と言い出さないという保証はない。

求心力としての機能を果たせず、遠心力しか発揮できないとすれば、かの国の「君臨すれど統治せず」の立憲君主制も、わが国の「象徴天皇制」も、「オワコン」になるしかない。


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