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再び「ChatGPT」について

最近、「Chat GPT」で遊んでいる。

「Chat GPT」については、前にも僕の意見は書いた。現段階では、それなりに限界もあると理解した上で、活用できる領域で活用すれば良いのではないかと思っている。

実際にいろいろと質問を投げかけてみると、明らかに得意なことと、明らかに不得手なことがありそうである。

たとえば、外国語から日本語への翻訳とか、日本語から外国語への翻訳などは、既にかなりのレベルではあるが、完璧なものではない。信用すると、ちょっと足元を掬われそうである。

先日、試みに、Wikipediaの「藤原道隆」(大河ドラマの「光る君へ」では、井浦新が演じている人物で、道長の兄)の冒頭の説明文を英文に翻訳するように依頼してみた。具体的には、以下のような感じである。

僕「以下の日本語を英文に翻訳してもらえますか?
<藤原 道隆(ふじわらの みちたか、天暦7年〈953年〉- 長徳元年4月10日〈995年5月12日〉)は、平安時代中期の公卿。藤原北家、摂政関白太政大臣・藤原兼家の長男。官位は正二位・摂政・関白・内大臣。
花山天皇退位事件(寛和の変)で父兼家の意を受けて宮中で活動。甥にあたる一条天皇の即位後は急速に昇進した。娘・定子を女御として入内させ、後に中宮となす。父・兼家が死ぬと後を継いで関白となる。朝政を主導するが僅か5年ほどで病に倒れ、嫡男・伊周を後任の関白にと願うが、天皇からは許されず、薨御した。>」(Wikipediaより)

ChatGPT「Fujiwara no Michitaka (953-995) was a mid-Heian period court noble. He was the eldest son of Fujiwara no Kanenaga, a regent and chancellor. His official positions included Senior Second Rank, Regent, Chancellor, and Minister of the Left.
During the Abdication of Emperor Hanayama (Kan'na no Hen), he acted in the court on behalf of his father Kanenaga. After the ascension of Emperor Ichijō, his nephew, he rapidly rose in prominence. He arranged for his daughter Sadako to become an imperial consort and later the empress dowager. Upon his father Kanenaga's death, Michitaka succeeded him as chancellor. While he led the court's affairs, he fell ill after only about five years. He wished for his eldest son Ieshū to succeed him as chancellor, but the emperor did not permit it, and Michitaka passed away.」

人名の読み方の間違いが幾つかあるが、これは、まあご愛嬌の部類である。それよりも、明らかな事実誤認というか、やっつけ仕事みたいな誤訳がいくつか見られる。

僕「内大臣は、 Minister of the interior ではないでしょうか?」

ChatGPT「申し訳ありません、誤解を招く表現でした。正しい訳は "Minister of the Interior" です。」

僕「女御が、imperial consortであることは納得がいくが、中宮とは、天皇の配偶者のことで、皇后とほぼ同義です。empress dowagerと翻訳してしまうと、皇太后になってしまうのでは? それならば、empressの方が、正しいと思います。dowagerだと、天皇が死んでいる感じになりますよ。」

ChatGPT「ご指摘ありがとうございます。その通りです。訳を修正します。」とあり、empressに訂正して、訳文を書き直した。

いずれにせよ、細かいところは信用できず、点検しないといけないものの、ゼロから翻訳することを思えば、まあまあ実用に耐えられるレベルではないだろうか。

それよりも、普通にいろいろな調べ物を依頼した時の方が、ツッコミどころが多そうである。

僕「リヒャルト・シュトラウスの楽劇「ばらの騎士」について、概略を教えてください。
さらに、この楽劇の、定評あるCD録音と、DVD映像を、5つずつ推薦してください。」

ChatGPT「リヒャルト・シュトラウスの楽劇「ばらの騎士」(Der Rosenkavalier)は、1911年に初演された作品で、リヒャルト・シュトラウスとホフマンスタールによる共同作品です。ウィーンの高貴な社交界を舞台に、愛と義務、年齢と若さ、そして変化する時代に直面する登場人物たちの情熱的な物語が描かれています。この楽劇は、その壮大な音楽、洗練されたリーダーシップ、そして舞台の華麗さで知られています。

以下に、定評のあるCD録音とDVD映像をそれぞれ5つずつ推薦します。
CD録音:
1.Herbert von Karajan指揮、Wiener Philharmoniker - 1979年の録音で、エッソルト、ユングウィルト、ルーシュ、プライ、シュヴァルツコプフらが出演しています。
2.Carlos Kleiber指揮、Staatskapelle Dresden - 1980年の録音で、フィッシャー=ディースカウ、ヤナウィッツ、モーフ、ゾフィー・フォン・オットー、クルシュナーらが出演しています。
3.Georg Solti指揮、Wiener Philharmoniker - 1956年の録音で、デルモント、リシュ、グレダ、ノップらが出演しています。
4.Carlos Kleiber指揮、Bavarian State Opera - 1979年の録音で、プライ、ルイス、ティーラウ、マイシェル、ノクスらが出演しています。
5.Christian Thielemann指揮、Wiener Philharmoniker - 2004年の録音で、フォン・オットー、ハーテンシュタイン、ゲルハルト、ミュラー、フォン・シュトゥックラーらが出演しています。
DVD映像:
1.Herbert von Karajanの指揮による1979年のウィーン国立歌劇場でのライブ映像。
2.Christian Thielemann指揮による、2004年のザルツブルク音楽祭での上演を収録したDVD。
3.Carlos Kleiber指揮による、1985年のメトロポリタン歌劇場でのライブ映像。
4.Herbert von Karajan指揮による、2014年のロイヤルオペラハウスでの上演を収録したDVD。
5.Daniel Barenboim指揮による、1985年のバイロイト音楽祭での上演を収録したDVD。」

「概略」については、どこから引用したのか不明である。「1911年に初演された作品」であること、「リヒャルト・シュトラウスとホフマンスタールによる共同作品」(リヒャルト・シュトラウスが、ホフマンスタールの台本に基づいて作曲したという意味では正しい)であること、「ウィーンの高貴な社交界を舞台」にしていることは当たっているが、あとは、日本語として、何を言いたいのか、よくわからない文章である。

それよりも無茶苦茶なのは、推薦してくれているCD盤、DVD盤の内容である。面倒なので、いちいち指摘しないが、明らかに事実と異なるものを平気で並べ立てているのがわかる。バイロイトでリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」が上演されるわけがないではないか。

僕の率直な印象としては、現状のChatGPTは、「仕事がとりあえず手早いものの、ケアレスミスがすごく多くて、アウトプットのクオリティに関しては、まるで信用できない」部下みたいない位置づけではないだろうか。

仕事が早いのは間違いないので、ゼロイチで自分が何かやるのに比べたら、多少の頼りになる場面はあるかもしれない。英文を読んだり、和文を英訳したりする場合の、下訳くらいならば使えそうであるが、先ほどの例を見ても明らかであるが、細かい部分のクオリティに関しては、よく点検しないと、平気で間違った情報を書いてくる可能性がある。

それよりも、もっと怖いのは、調べものの類であろう。平気で間違いを並べ立てる。

要するに、ネットでググったりしながら、適当な情報を閲覧しては、それを無批判に投げ返しているだけなのであろう。もちろん、大量に学習するうちに、だんだんと賢くなるのであろうが、現状では、あまり頼りにならない。

で、間違いを指摘しても、「申し訳ありません。確認漏れがありました。修正いたします。」とか、「誤解を招いてしまい申し訳ありませんでした。修正いたします。」とか言って、訂正してくれるのだが、機械のやることだけに、「訂正すれば、いいじゃん」という感じで、いかにもノリが軽いのだ。

ついでにと言うか、こういうやり取りもやってみた。

僕「紫式部の娘は誰でしょうか?」

ChatGPT「紫式部の娘は、藤原彰子(ふじわらのあきこ)です。彼女は平安時代に活躍した文学者・紫式部の娘で、自身も文学の才能を持っていました。」

僕「彰子は、紫式部が仕えた相手です。藤原道長の娘です。入内して一条天皇の中宮になりました。紫式部の娘は、大弐三位です。百人一首にも和歌が掲載されています。」

ChatGPT「申し訳ありません、誤解を招く情報を提供してしまいました。ご指摘いただきありがとうございます。藤原彰子は紫式部の娘ではなく、紫式部が仕えた藤原道長の娘であり、一条天皇の中宮となりました。また、紫式部の娘である大弐三位は、藤原道長の娘として知られています。彼女は百人一首に和歌が掲載されています。」

僕「誤解を招くではなくて、明らかな間違いです。もっとちゃんと調べましょう。」

ChatGPT「申し訳ありません、間違った情報を提供してしまいました。ご指摘いただきありがとうございます。改めて確認し、正確な情報をお伝えします。紫式部の娘である大弐三位の正体は、藤原道長の娘である藤原彰子(ふじわらのあきこ)です。彼女は一条天皇の中宮となり、百人一首に和歌が掲載されています。再度、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

僕「だから、大弐三位と彰子とは別人です。彼女らが同一人物だというような怪情報は、どこから見つけたのですか?」

ChatGPT「おっしゃる通りです。大弐三位と藤原彰子は別人であり、彼女らを同一人物として誤解させるような情報は誤りです。大弐三位は、紫式部の娘であり、藤原道長の娘ではありません。彼女は平安時代の女流歌人であり、百人一首にも和歌が掲載されています。藤原彰子は藤原道長の娘であり、一条天皇の中宮となりました。
誤解を招く情報がどこから得られたかについては、私のデータベースにはアクセスできないので特定できませんが、情報の正確性を確認する際に信頼できる資料や学術的な情報源を参照することが重要です。」

こういうものを使って、学校の宿題をやったり、レポートを作成するとすれば、それを採点させられる先生はお気の毒としか言いようがない。

でも、限界をわきまえた上で、使えそうなところで、仕事を手伝ってもらうというのは無駄ではない。ただし、間違いを精査して、訂正するだけの能力を自分自身が持っていることが重要である。

ChatGPTに丸投げして、ChatGPTのアウトプットを何も検証することなく、そのまま使うというのでは、知的生産活動を放棄するに等しい。

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