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PSG vs. アル・ナスル(@ヤンマースタジアム長居)について

パリ・サンジェルマンとアル・ナスルの試合を、ヤンマースタジアム長居で観戦した。

パリ・サンジェルマンは、フランス随一のビッグクラブである。中東マネーのお陰もあって、世界屈指の金満クラブであり、以前は、メッシ、ネイマール、エムバペとスター選手3人を揃えていたこともあったが、今回、来日したのは、このうちのネイマールのみ。メッシは既に米リーグのインテル・マイアミに移籍済みだし、エムバペも移籍云々で揉めに揉めている最中。

一方のアル・ナスルは、サウジアラビアのプロサッカークラブで、先般のACL決勝で浦和レッズと対戦したアル・ヒラルのライバルという位置づけにある。僕としては、あのクリ・ロナの所属クラブというくらいの予備知識しかなかったのであるが……。

というわけで、エムバペも来ない、チケットはバカ高いしで、スタジアムはかなり空席が目立っていた。ヤンマースタジアムは収容人数50千人近かったと思うが、来場者は25千人くらいだったので、半分は空席だったことになる。

試合内容としても、スコアレス・ドローで終わったことからもわかるとおりで、あまり盛り上がらない単調な試合であった。

こうしたプレシーズン・マッチというものは、そもそもが大相撲の地方巡業と同じで、選手たちにとってはシーズン前のウォームアップを兼ねた慰安旅行のようなものであり、クラブ側としては海外市場での認知度向上のための手っ取り早い営業プロモーション活動ということになるのであろう。

したがって、選手たちとしては、シーズン前に怪我でもしては一大事なので、あまり真剣に頑張ったりしないのは当たり前だし、試合内容を云々するのはそれこそ野暮というものである。僕を含めた大半の観客だって、スター選手を間近で見れることにもっぱら価値を見出して、バカ高いチケット代を払うことに納得しているのである。

そうなると、たとえ短時間でもピッチに立つネイマールを見ることができなかったのが、返す返すも残念という話になってしまう。途中から、観客からは、ネイマール・コールが繰り返されていたのだが、昨日の試合では、たぶん当初から出場する予定はなかったのであろう。それでも、所詮は興行(見世物)なんだし、「少しは空気を読めよ」と文句の1つも言いたいところである。

その点、クリ・ロナはたいしたものであった。既に若くもないし、昨日も大阪は夜になっても暑かったから、コンディション的には厳しかったはずであるが、後半途中まで頑張って出場してくれたし、前半終了間際には目の前で(決まらなかったけど)オーバーヘッド・シュートを披露してくれたものである。プロフェッショナルとは、本来、こうあるべきなのであろう。

観客の方だって、他に盛り上がれる機会が見当たらなかったせいか、クリ・ロナがちょっとボールに触れるだけで、盛大な歓声を上げていた。もちろん往年のキレやスピードは望むべくもないが、やはり、それだけ華のある選手ということである。僕としても、クリ・ロナを生で見られただけで、大いに満足できたのは間違いない。年俸290億円とのことであるから、残念ながらJリーグに来てもらおうと思ったら、1ケタくらい割り引いてもらわないと厳しい。

アル・ナスルについては、そういうわけで、クリ・ロナ以外の予備知識ゼロの状態だったのだが、なかなかタフな良いチームという印象であった。クリ・ロナがほぼ守備をしない分(ボールが来ない時は、ほぼ歩いているだけ)、他のメンバーはしっかりと守って、ボールを奪取したら即カウンターという感じでシンプルなサッカーに徹していた。爆買いしていた頃の中国の有力クラブと同様、自国代表と外タレの混成部隊という感じであるが、その中でも、GKはとにかくうまかった。44番のナワフ・アル=アキディという選手。GKとしては上背はさほどでもないが、飛び出しの判断も抜群で、ちっとも危なげがない。Wikipediaを見ると、まだ23歳ながらサウジアラビア代表にも選ばれているとのこと。他は29番のアブドッラフマーン・ガリーブという選手が、小柄ながら動きにキレがあり、攻守両面で献身的で運動量が豊富で、とても良い選手だと思った。この選手もサウジアラビア代表である。外タレの方はクリ・ロナを除けば、あまり印象に残らず。

それに引き替えると、あまり言いたくはないが、PSGメンバーは安全運転というか、要するにケガをしない程度に適当に流している感じが否めなかった。だったら、短時間でも良いから、ネイマールも出してくれよと言いたくなる。お好み焼きを焼く姿をSNSにアップするヒマがあるならば、ピッチで15分や20分くらい適当に身体を動かすくらい容易いことである。どうせ観客の大半は、ピッチ上の「動いているネイマール」を見たら納得するのであるから。そうした中で、「エムバペの弟」を間近で見れたのは収穫であった。エムバペに弟がいること自体、「ホンマかいな」レベルの知識しかなかったが、これがまた凄くうまいのである。まだ15歳とか。いずれは兄弟揃って代表チームで活躍するのも夢ではない。

そういうわけで、試合内容としては残念ながら盛り上がりに欠けた試合ではあったが、たとえプレシーズン・マッチとはいえ、普段はテレビ画面を通してしか見る機会のないスター選手を間近に見ることができるのはファンにとってはたいへん貴重である。

28日(金)には、同じヤンマースタジアムで、セレッソ大阪とも親善試合を予定しているが、セレッソの若い選手たちにとっても、(たとえ相手が本気モードではないとしても)ワールドクラスの選手と同じピッチに立てることはとても良い経験になるはずである。

13年7月26日、香川真司が在籍していた当時のマンチェスター・ユナイテッドとセレッソ大阪の試合を、同じ長居で観戦した記憶が蘇る。今回と違って、その時の試合はスタジアムがほぼ満杯であり、内容もなかなかの好ゲームであった。結果は2 - 2のドローであったが、セレッソの得点を挙げたのが、杉本健勇と南野拓実の2人であった。当時の2人はフル代表に召集される前の若手選手であったが、将来性を予感させるようなとても良い動きをしていたことを思い出す。

28日(金)の試合についてはチケットが取れず、スタジアムで観戦する機会はないが、かつての杉本とか南野のような若手の有望株がPSG相手にキラリと光る場面があれば、観客だって、ネイマールが出場するか否かにかかわらず、「元が取れた」と思うに違いないのだ。


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