ソファの上で

5.ちぃを見守るれん

 2017年の夏、ちぃが大学病院で末期ガンの宣告を受け、ちぃの闘いが始まりました。れんはいつも、そばで見守っていました。

 ちぃは、週に一度大学病院でガンの写真を撮り、ピンポイントで放射線をあててもらいました。先生は末期なので積極的な治療はできない、と言いましたが、私の希望を聞いてくださり、最後まで放射線治療を続けてくださいました。

 お腹と胸の中、そして心臓を包む袋(心嚢)の中にも水がたまり続け、心臓や肺を圧迫します。これを抜いて呼吸を楽にしてもらうとちぃは、手からならば少しだけご飯を食べるようになり、三日後にはまた、水のせいで呼吸が困難になりました。

 酸素ハウスを借りて、苦しい時には自分で中に入って寝ていましたが、大学病院の合間にかかりつけの病院でも水をできるだけ抜いてもらい、息ができるようにしてもらいました。

 かかりつけの先生は、手の施しようがなくなったちぃに、「高濃度ビタミンC点滴」という方法も勧めてくれました。海外では一般的なガン治療法であり、日本の大学病院では推奨していないそうですが、一番良いケースでは犬のガンが消失したとのことでした。

 こんなふうにちぃが過ごしているのを、れんはずっとおとなしく見守っていました。ちぃだけが家族の手からおいしそうなご飯をもらい、れんはうらやましそうに見ていました。

 ときどきちぃの残り物をもらい、ちょっとれんの体重が増えてしまいました。

 ちぃが三日おきに病院へ連れて行かれ、帰ってくるまでの長い時間をれんは家でおとなしく待ちました。

 もともと活発に動き回るのが大好きなれんが、ちぃに迷惑をかけないように気を使いながら静かにボールで遊ぶ姿は、ちょっと可愛そうでした。

 ちぃは散歩にも行けなくなり、れんだけの散歩も、ほんの短い時間になりました。

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