松雪泰子さんについて考える(56)劇団☆新感線『髑髏城の七人 Season鳥』

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*松雪泰子さんについて考える(51)「歌は語れ、セリフは歌え」*

松雪さん出演シーンの充実度:8点(/10点)
作品の面白さ:?
上演年月:2017年6月27日~9月1日(IHIステージアラウンド東京)
視聴方法:Prime Video(Amazon)
 
※会場での観劇ではなく、配信で視聴した感想です。
※多少のネタバレを含みますが、決定的なオチや展開には触れないようしております。
 
2024年3月末、IHIステージアラウンド東京が閉館した。もともと期間限定だったそうだが、もし需要があれば続いていたことだろう。
 
東京五輪やコロナの前あたりからこちら、東京では会場不足が慢性化していた。複数の会館で建て替えの時期が重なったのと、五輪関係需要により。
 
不足しているのは、1,000~2,000人くらいの規模感の、オーソドックスな会場。IHIステージアラウンド東京はたしかに、客席が360度回転する唯一無二の仕掛けがある面白い劇場だったと思うが、それを使いこなせてしかも資金力のあるエンタメとなると、限りがあったのだと思う。
 
近年、日本青年館ホールや渋谷公会堂が新たになったほか、有楽町に「I‘M A SHOW(アイマショウ)」、池袋に「東京建物Brillia HALL」、横浜に「ぴあアリーナMM」がオープンしたりするなど、会場枯渇問題は虎口を脱した。
 
さらに今後、ニッショーホールがまもなく今年9月にリニューアルオープン、そして2026年には渋谷でバンダイナムコが新ホールを開く。2.5次元ミュージカルの活況等もあって、業界的にはコロナ禍からの復活へ、道先は明るい。
 
そんなIHIステージアラウンド東京での劇団☆新感線『髑髏城の七人』シリーズは、「Season花・鳥・風・月」が連続して上演された、一大プロジェクト。ファンの方々にとっては、嬉しいやらチケット代が嵩むやら、大変だったのではないか。しかも、会場の特殊性を活かした演出ゆえ、地方公演なし。
 
この中の、松雪泰子さんが極楽太夫(花魁)として出演した「Season鳥」を配信で視聴した。
 
会場はさすがにすごい。ステージの場面転換が素早く、客席とも近い(ように見えた)ので、観客の没入感は高まるだろう。
 
作品のテイストは、いつも通りの劇団☆新感線。時代劇とコメディとミュージカルをミックスした感じ。
 
個人的な好き嫌いとして、新感線のこの手の作品は、どうしても好きになれない。瞬間的に良いと思える場面はある。ただ、笑いをとりに来ているシーンを観るたび自分の方が恥ずかしくなるのと、作品の設定やキャラクターがどれも壮大なわりに軽薄に感じてしまうのである。本作もそうだし、2022年『神州無頼街』もしかり。
 
新感線ファンが多いのは素晴らしいことだし、この劇団にしかできないエンタメを提供し続けているのは尊いが、たまには『吉原御免状』のように、コメディやおふざけを排した作風も手掛けてくれないだろうかと切に思う。これだけ豪華なキャストと、金も手間もかかった豪華な舞台で、渋くて落ち着いた作品を観てみたい。
 
とばし見だが、松雪さん出演シーンは多く、見所も豊富なように見受けられた。特に、序盤の極楽太夫登場シーンは、歌も振付も良かった。

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