転校や移動が多かったぼくは、今、住んでいる東京で人に会うと、

「関西弁だね」

と言われ、実家である岐阜に帰ると、

「岐阜弁と、イントネーションちょっと違うで」

と言われ、いっとき住んでいた奈良や兵庫など、関西に遊びに行くと、

「エセ関西弁やな、いやーまさかお前がそこまで東京に染まってると思うと、がっかりやわ。奈良にいた時のお前は、ばりばり関西に染まってたのに、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、いやーほんま、がっかりやわ。」

と言われる(そう、関西人だけは、3倍の長さのかえしがくる)。そしてこの、会話のきっかけになるお決まりのやり取りが、大人になった今では持ちネタのように使えて、新しい場所にいったとき、かなり得をしてるなと思ったりします。

でも、小さいころ学校から学校に何度か転校を繰り返していたことで、たぶんぼくは一般的には自己紹介の回数が多かったはずなんだけど、あんまり自己紹介をちゃんとしないし、そして、得意でもなかったりします。

先日、コルクラボというオンライン・オフラインを通じたコミュニティで開催される合宿に参加したときに、改めて自己紹介がなんで重要なのかを痛感したので、その理由を、改めて考えてみました。

▼みんなの自己紹介を聴いた後の、場への安心感

コルクラボの合宿の1日目には、山田ズーニーさんにより「過去、現在、未来を踏まえて、自分自身を表現する」というワークショップがありました。

細かい内容まで覚えきれていないところはあるんだけれど、その中で、学生時代のことや、親子の関係を含めてみんなの自己紹介を聴かせてもらいました。たぶんそれは「一般的な自己紹介」という領域をはるかに超えていて、生まれてから歩んできた道のりを踏まえた「痛みを伴う自己表現」のようでした。

そんなみんなの自己表現を聴かせてもらって、ぼくは遅ればせながら、自分がした、とくになんの中身もない自己紹介に後悔すると同時に「そんなみんながいる、この場所であれば大丈夫」と、場に対する、妙に強い心理的な安心感を覚えました。

▼安心感から自分も、自己紹介ができたこと

合宿の2日目には、「相手に伝えたいことを、相手に届くように表現する」というワークショップがありました。

内容的には自己紹介というより他己紹介に近いけれど、ぼくはその中で、去年膵臓がんでなくなったばあちゃんのこと、そんなばあちゃんとの、学校に行っていなかった幼い頃のぼくとのやりとりを含む内容を、拙く、表現させてもらいました。

それは、1日目とは違って、自分のこれまでの過去の、あんまり話したくはない経験を含む内容で、そもそも言語化することに、ほんのわずかだけど「痛み」が含まれるものでした。

▼少しの痛みをもらって、変わったこと

2日間を通して、大きく変わったことが一つありました。それは、2日間が終わって、2日目の昼ご飯のカレーを食べている時に、

「あれ、なんか普段より、異常に、周りと会話がしやすい」

と、感じたことでした。これはたぶん1日目の「みんなの痛みを伴う自己表現を聴いて、相手への心理的な安心感をもつ」と、2日目の「自分の痛みを伴う自己表現を話すことで、自分への心理的な安心感をもってもらう」という相互行為を通して、次の2つが変わったのかなと、思いました。

【1】例えば家族や友達との関係など、自分が、みんなに聴いてていいと感じるテーマの範囲と深さについて、制約が少なくなったこと
【2】例えば家族や友達との関係など、自分が、みんなに話していいと感じるテーマの範囲と深さについて、制約が少なくなったこと

そして、この心理的な安心感を抱ける場を広げていくためには、これからは、まず、自分から踏み込まないといけないんだなと、当たり前のことを感じました。

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そういえば、ぼくがあんまり自己紹介をしなくなったのは、新しい学校に行って、みんなの前で自己紹介をしようとすると、その強い方言も相まって、だいたいの場合笑われたんやよね。そして、幼いころのぼくは、わけも分からずその笑いを、自分への否定として受け取ってしまっていた気がします。

コルクラボに参加して、はじめの説明会で、コルクの代表の佐渡島さんが、

「自己紹介は、あなたのためじゃなく、あなたの周りにいてくれる、他者のためなんだ」

という話しをしていました。全然その意味を理解してなかったぼくは、コルクラボの合宿で、周りの人の痛みを伴う自己紹介を聴かせてもらったことで、やっと、その意味を少しだけ理解できたような気がします。