見出し画像

バカリズムの緻密な職人芸「侵入者たちの晩餐」

前半観ていて、これやっちゃダメなタイトリング事例では……?と半ばヒヤヒヤした。ご法度とされている「ネタバレ」をタイトルで示すパターンかと思えば、流石のバカリズム脚本、そこから複数回の引っくり返しと細々と散りばめた要素が繋がって想像よりも遠くに行ける良作。でも個人的には冒頭の20分もがっかりせずに観たかったから「織り込み済みのネタバレタイトル」も必要なかったかなというのが正直なところ。晩餐要素が無い方が素直に観られたな。

二時間ドラマに丁度いいスケール感と温度感、『ブラッシュアップライフ』ですっかり馴染んだバカリズム脚本ファンに丁寧に答える掃除や会話のリアリティあるディテール、暇な年始にふさわしいアクの無さ、みんな大好き伏線回収、めちゃくちゃ多くの要素がしっくり来る収まりの良さがちょっと逆に怖いな?と思うほどだった。

観ていて思ったのは、坂元裕二ファンが『クレイジークルーズ』に求めたのって「こういうこと」だったのよね……ということ。細かなディテールの気持ち良い繋がりに心地よくウキウキしつつ、坂元裕二の場合は社会を交えたリアリティと接地する針のような台詞がさりげなく滑り込んでいたらみんな喜んだ……のだけど、そうはならなかった。

それと比較すると、期待されていることに期待されている範囲を踏み越えることなくテレビ的なニーズも踏まえてまとめあげるバカリズムの職人気質をバチバチに感じる作品でした。そして時代に合いすぎていてちょっと怖い。何らかの政治性やストレスを嫌い、疲れたくない視聴者に「犯罪モノ」さえもぴったり合わせてくる時代性との一致は半歩間違えると若干危険にも思えるけど、まだまだ旋風は続きそうです。なんなら「相棒」的なシリーズが生まれるのも全然あり得るのでは。

dev:58

この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

過去作品のDVD-Boxを買うための資金にいたします。レビューにしてお返しいたします!