見出し画像

そこはかとない探り合いが繰り広げられた駅のコンコースは春の匂いがした

夜は嵐になるかもしれない。
そんな天気予報にみんな足早の夕方。
ちょっとお買い物をしてから帰ろう、と寄り道したわたし。

駅のコンコースにハンドメイドアクセサリーの出店がいくつか出ていたので「あ、どんなのあるのかな」と吸い寄せられてしまった。自分でもアクセサリーをつくるから、ついつい見ちゃうの。


作家さん「どうぞ鏡で合わせて……あっ!お久しぶりですー!!」

わたし「(!?)」

作家さんの、めっちゃ笑顔の挨拶にたじろいだ。

だって、大抵は作品しか見ていない。ごめんなさい、作家さんの顔と名前はよほど会話や場所が印象的でなければ覚えていなかったりするのです。あわわ。

わたし「あっ、お、お久しぶりです」

うっかり咄嗟に誤魔化してしまった。地元マジックか。いやいやその後がつらくなるじゃないか。どこでお会いしましたっけ、って何故言わないのだ、わたしよ。


作家さん「春に良さそうなのあるんでぜひ!」
わたし「あっ、き、綺麗ですね。前はどこで見せていただいたんでしたっけ…このへん?」

ごくごく自然に。そうよ、それとなく。それとなく、わたしは聞いた。

作家さん「藤沢久しぶりに来たんですよ〜。しばらくこれてなくて」


微妙にズレる会話。ん? これはもしや彼女も「しまった。お久しぶりですといったものの、人違いだったかもしれない」と思っているのでは…??

そうであって欲しい。
だいたいそんな特徴的な人間ではないし、今日はマスクをしている。たくさんのお客さんの中そうそう覚えてないはず…だ。

しかしだ。もし本当に覚えててくれたのだとしたら。

「このひと前も立ち止まって、なんも買わなかったな…」とか思われたらなんか申し訳ない。みるだけみて買わないことも多いからだ(ごめん)。

これはもうこのままカッコつけていこう。なにしろお値段もリーズナブルだ。そう心に決めた。

作家さん「ピアスあいてましたっけ?」
わたし「イヤリングなんですよねぇー」
作家さん「そうでしたね〜。金具かえられるので」

それとない、探り探りの笑顔の会話。
…のように感じるのは自分だけなのであろうか。

似たような場面が様々おもいだされる。

病院の待合室、近所のスーパー…。
一度くらい身に覚え、ありますよね。妙齢のレディースあんどジェントルマンの皆さま。知ってるつもりで話しかけ(話しかけられ)たものの、確信が持てないままそこはかとない会話をしたこと。大丈夫、秘密にしておくよ。


思い出せないのか、はたまた本当に会ったことがないのか。真相は記憶の奥深くである。いやそもそも記憶されてないのか。


そうしてわたしは「久しぶりにお会いできましたしねえ」的な雰囲気を全身に醸し出しつつ、全く予定になかったお買い物をしたのであった。

素敵なネックレスを手に入れたし、きっとこれもご縁なのだ。あの作家さんとはまた会えたとき、きっと仲良くなれるはず。

カレンは記憶力が1上がった。

ミルキーなアクアマリン。
春のライブで着けよう♪

この記事が参加している募集

今日の振り返り

サポートありがとうございます(^^) 機材購入費や活動費に、大切に使わせていただきます!