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【サイバーエージェント創業者】藤田晋のすべて

慶應義塾大学商学部2年生の、郡山 花凜(こおりやま かりん)です。
ベンチャーキャピタリストになりたい!と思いながら、
普段は大学に通いつつ、VCでインターンさせて頂いたり、学生団体を立ち上げたりしている人間です。

ビジネスに関わる人間として、先輩起業家や投資家から学ばなければ!
せっかくなら調べたことを共有しよう!
という経緯でこのNoteを執筆することにしました。
(連載する予定です。)

初回は、サイバーエージェント創業者の藤田晋氏についてです。

経歴

出生地:福井県
出身:青山学院大学経営学部
学生時代:ベンチャー会社にてインターン

インテリジェンス(現在のパーソルキャリア)に新卒入社(1年で退職)。
1998年(当時24歳)にサイバーエージェントを創業、2000年東証マザーズに上場、14年に東証一部へ市場変更。

スタートアップへの投資も行い、投資家としての顔も持つ。


新卒入社:師・宇野氏との出会い

宇野氏はインテリジェンス(現パーソルキャリア)の社長であり、
藤田氏は宇野氏の表情、話す速度、話し方を真似するほど影響を受けている。

入社の経緯

藤田氏は当初は入社する気はなかった。
バイト先の社長からインテリジェンスの名を聞いたことがきっかけで、冷やかし半分で受けた。
が、選考過程で宇野氏と出会い、志の高さに惚れて入社を決断。

入社後

始発で会社に来て、土日も休まない徹底した仕事ぶりを発揮。
営業成績はトップであった。
実は、仕事上で藤田氏と宇野氏が関わることはほぼ無かった。

インテリジェンス退職

サイバーエージェント創業のために1年でインテリジェンスを退職するが、その際に宇野氏から資金調達を受けた。

また、インテリジェンスの方針は、サイバーに色濃く反映されている。
以下は、藤田氏がサイバーに取り入れた項目である。

・社長自ら率先してハードワークする
・社長が目標を恥ずかしげもなく語る
・社員全体のやる気を引き出して団体戦で会社を大きくする。そのために、統制を取りつつも社員に自由を与える。 働き方、制度、報酬全てを、社員のやる気を引き出すために設計する。例えば、社員総会では優秀者を必ず表彰しその演出に凝る。社員と社長の精神的距離を縮める。
・会社が成功しても自分が手柄を誇らない

サイバーエージェント創業

出資と裏切り

宇野氏からの出資には、「藤田氏が社長を担うこと」という条件があった。

藤田氏は、オックスプランニングというフリーペーパーの広告販売のアルバイト時代に出会った2人と起業準備を進めており、元々はオックスの渡辺義孝専務が社長を務める予定だった。

藤田氏は宇野氏からの出資を優先し、2人の仲間を失った。

新規事業と会社の急成長

サイバーは当初、インターネット関連商品の営業代行からスタートした。
インテリジェンス時代にトップ営業マンだったことを活かし、週110時間労働により、商品を売り込んでいた。

しかし営業代行はリターンが小さいため、より大きく儲けるために、「サイバークリック」という自社商品を開発した。
サイバークリックとは、ユーザーがクリックした分だけ掲載料が発生するクリック保証型広告である。

インターネットバブルの追い風もあり、2000年3月24日に、時価総額およそ850億円で東証マザーズに上場を果たす。


新規事業への考え方

新規事業の決め方

藤田氏は新規事業を立ち上げるとき、まず何となくやる分野を決めている。

分野を決める基準として、多くのユーザーがターゲットになるかを重視している。

インターネットビジネスは生活のさまざま場面に結び付くため幅広い分野で勝負できるが、成長性やビジネスが広げられない分野だと、そのうち必ず『行き止まり』にぶつかる。

例えば婚礼サービスにおいて、結婚する人口は減少傾向にあり、結婚しても1人がせいぜい1~2回程度しか経験しない。そこから広げるのは難しい。

一方、コミュニティーサービスなら、誰もが参加でき、長く、何度でも使える。

幅広い分野において成功可能性があると考えているが、
その根拠として、
消費者は現在の市場を席巻している商品に決して満足しているわけではないため、参入余地がある
と考えている。


また、リスクとリターンのバランスも基準としている。

コミュニティサービスのコストは低く、サーバー代と人権費くらいだ。ブレイクする確率は低いが、何かをきっかけにブレイクすれば大きな成功を得られる。

実際に、FacebookやTwitterも、日本にきて2年くらいは全く浸透していなかった。

期待値の高いビジネスを複数展開し、トータルでプラスになれば良いと考えている。

一方、社会的意義は、事業立ち上げ時には考えていない。
社会的意義に縛られ、大きなチャンスがあってもチャレンジできなくなることを恐れている。

逆に、いいビジネスになることをやれば、社会的意義も後からついてくると考えている。


新規事業を成功に導くには

Webサービスには、クオリティにおいて頭ひとつ抜けると、そのまま10馬身くらい離すことができるという特徴がある。

クオリティとしては、デザインやインタラクションといった表面的な部分(サービス名など)等が挙げられる。

サイバーの手掛けた「AWA」は、どこの国のサービスかわからないような印象にしたいという理由で名付けた。

スタートアップ投資への考え方

投資家としてあるべき姿

藤田氏はスタートアップへの投資も行っているが、起業家と投資家を経て、良い会社は外部からの関与を必要としないと考えている。
投資家は、投資したら、あとは馬券を握りしめているような感覚。基本的には応援する立場であり、要望があればアドバイスしたり、人を紹介するくらい。

起業経験のないベンチャーキャピタリストが、外部アドバイザーとして事業の評価やアドバイスをしているのを見ると違和感を抱く。独立系VCの人でも自分が起業するようにVCを立ち上げた人は、起業家に近いのである程度は分かっている。

一方、投資した分だけ何か権利を得ようとすることは本末転倒で、投資させてもらった立場で会社を支援するべき。投資した分だけ回収しようという考えは、スタートアップの経営を邪魔している。


成功しにくい事業

①無料モデルでサービスを開始し、後から収益を考える事業
これが成立するのは、ユーザー数が日本人全体に近しくなるほど流行した時のみ。
ユーザーをそれほど獲得して初めて広告モデルが成立したり課金したりできる。
②マーケットの行き詰まり
勝者が特定されており、そこからの事業の路線変更や規模拡大が難しい。
ネット広告やソーシャルゲームなどは色々な事業へ広く展開できるが、特定の業界の一部をネットサービスに移すことは行き詰まりやすい。


ビジネスの未来

Instagramの普及からも、デザインが一番の差別化につながっていると考えている。
ゲームにおいても、サイバーエージェントの「Cygames(サイゲームス)」は調子がいいが、その理由はデザインのクオリティが高いから。
実際、デザインとテクノロジーを同時にやれる会社は、世界的に見てもあんまりいない。逆にできれば強い。

心構え

  • 偉ぶらない

    • 会社の成功は、起業家の手柄ではない。社員の団体戦のおかげ。

  • 短期的に数字が悪くても、みんながついてくる土壌作りを意識

  • 胆力、強い心根が大切。叩かれてなんぼ、の精神を持つ(鍛える)。


  • 思い出話をしない。

何か大きなものが一段落したとき、寂しさや喪失感に襲われる。努力や熱量が強いほど、この感情は強くなる。
しかし、この余韻に心が引きずられると、次の仕事のエンジンがかかりにくくなる。


  • 損得勘定のみで動かない。

人に何かをやってあげながら、まったく見返りを求めない人は、何かあったときに不思議とみんなが手を貸してくれたり、回り回って思わぬ形で大きく自分に返ってきたりする。
多くの人が、
あの人はいい人だ」「何かあったら力になりたい
と思うようになり、いろいろな形で協力や応援をしてくれる。


  • 相手のことを想像する

ビジネスマンは、以下の順で進化する。

自分を相手にどう見せたいか
自分のことにしか目がいかず、長い時間、一方的に話すことが多い。
ひたすら自己満足の世界にいるため、相手に言葉は届いていない。

相手の立場を想像
相手が何を望んでいるのか想像しようと努力している段階。

相手から見た自分を想像
相手の立場を想像した上で、自分に何を期待しているのか、自分のことをどう見ているのかを想像する。
常に相手から見て心地よい存在となる。

想像する努力をしなければ、自分でも気づかないうちに他人の恨みを買って、チャンスが巡ってこなくなる。


  • 緊張感を保つ

人は、危機的な状況に追い込まれているときに100%の力が出せる。
緊張感が失われると足をすくわれやすい。下から苦しい思いをして頑張って這い上がってきた人に勝てなくなる。
順風よりも逆風のほうがむしろ遠くへ飛んでいける可能性を持っている


  • 細部にこだわる

仕事は、最後の最後にどれだけ粘り、深みを作れるかによって、結果に圧倒的な差がつく。


  • 成功の型にとらわれない

成功体験の記憶に執着し、「このパターンでいけば勝てる」と思い込んでいたら、そうそう勝てなくなる。
変化が激しい時代であれば、なおさらだ。
成功は、偶然の条件が重なって生まれる。この条件は、時間の推移とともに変化する。
常にその場その場で状況を判断することが大切。


  • 忍耐・平常心・バランスを大切にする

    • 忍耐:プレッシャーや短期的な評価という誘惑に負け、早く楽になろうとすると、適切な判断ができなくなる

    • 平常心:調子に乗ると、適切な判断ができない。また、敵を増やすなど、成功を妨げる要因を作ってしまう。


☆忍耐の話

同世代に沢山のライバルがいたが、藤田氏は、「自分が抜いたのではなく勝手に落ちていった」と語る。

仕事のレースで脱落していくのは、以下の3パターン

目標設定の低い人
低い目標を達成して満足している人は、高い目標を目指して必死にあがいている人には勝てない。
達成するかしないかの前に、モチベーションと努力の大きさで差が開く。

固定観念が強くて変化できない人
目標を高くして頑張っても、固定観念が強いあまりに変化を恐れる人は早晩行き詰まる。

忍耐力のない人
企業社会における競争には「こうすれば結果が出る」という決まったルールはない。
正解をあれこれ探しながら、たとえ正解が見えなくとも、ともかく結果を出す。

そのための忍耐力なしには、競争に勝てない。
結果がなかなか出ない中で、結果を出すまでいかに耐えられるかが問われる。

競争相手が力をつけて周りから評価された、ヒットを出した、新しい事業を立ち上げて注目された、そういうときは焦って浮足立つ。
浮足立つと自分のペースを見失い、そこで忍耐が途切れる。
そして、自分の力を超えた無理なことをし始め、コントロールを失い、自滅する。

藤田氏も、株価が長らく低迷して株主たちから強い圧力をかけられたときも、間違った選択をしそうになった。
競争相手を見て浮足立って動くのは、非常に危険
あくまで地に足を着け、自分のペースを崩さず、その中で主体的にコントロールする必要がある。

勝負所がくる前に勝負をすれば、本当の勝負所で動けない。
“そのとき”がくるまで、仕事の質を落とさないよう、しのいでいる人にしかツキはやってこない。

耐えている時間は、勝負の感覚でいうと、形勢不利の立場に置かれているように感じる。
でも、仕事をしている時間の大半が耐えている時間だとすれば、むしろそれが普通の状態。
耐えている時間は長く感じるが、世の中の風はいつかは必ずこちらに吹いてくる。

誰にでも1年に一度くらいは、何らかの勝負所がやってくる。
“そのとき”を見極め、タイミングを外さず勝負できるように、常日頃から準備を怠らないようにしておかなければいけない。

趣味

  • 麻雀

    • 学生時代にはプロ雀士も目指していた。

    • 麻雀を通じ、忍耐強さ・どんな状況であっても楽観も悲観もせずに平常心で臨み続けることを学んだ


さいごに【暗闇の中でジャンプ】

「暗闇の中でジャンプ」は、2014年上半期の、サイバーエージェント社のスローガンである。
この言葉は、幻冬舎の見城社長の著書「編集者という病い」から引用している。

実は、郡山が藤田氏について調べるもっと前に、尊敬しているとある人から教えてもらった言葉でもある。
私自身、この言葉に何度も救われており、この言葉が誰かの力になれば、という思いで紹介した。

以下、「暗闇の中でジャンプ」について、藤田氏がブログで語った内容である。

生きることは暗闇の中でジャンプの連続です。

我々も東証一部に上場させてもらい、世の中の目も厳しいこの時代にあって、

怖いから、怪我したくないから、
恥をかきたくないから、
足がすくんで挑戦をしなくなったら、

そこで終わりです。

リスクを負わなければ、リターンが得られることもないのです。

勇気をもって挑戦していこう

そんな意味を込めてこのスローガンにしました。

藤田氏のブログ_「暗闇の中でジャンプ」より引用


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