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播磨陰陽師の独り言・第535話「サクラ咲く」

 わが家の庭には桜の木があります。今年も無事に咲きました。何日か雨が降っていて、かなり激しかったのに、桜は散っていませんでした。桜は好きです。あの儚さが、何やら心に込み上げて来るような感動をもたらしてくれるからです。
 桜と言う名は〈サの神のくら〉のことです。サの神と言うのは春をもたらす神です。その神が座る場所を〈くら〉と呼びます。だから〈サクラ〉と呼ぶのです。
 あちらこちらに桜が咲いているのを見るにつけ、嬉しくなってしまいます。しかし、残念なことに、もうすぐ散ってしまいます。ですが、庭に散る桜の花びらを掃除するのは楽しみのひとつです。
 以前はずいぶんとあちこちの桜の名所を歩きました。たくさんの桜が連なる姿はとても美しかったです。しかし、どちらかと言うと、山奥にぽつんと咲いている桜が好きです。なぜか孤独な桜が好きなのです。ひとりぼっちの桜は、時に不気味な感じがします。それは生き物を誘って殺して養分にすると言われるからです。これは都市伝説かも知れませんが、ぽつんと一本だけ咲いている桜を見ると、あながち伝説だとも思えないのです。
 わが家のも孤独な桜です。玄関の前の庭に一本だけ咲いています。この桜は相変わらず元気です。しかし、中庭に咲いている大きな桜は元気ではありません。蔦《つた》が絡まってかなり死にかけているようです。この桜を救おうと思ったら、中庭の石垣を登って蔦を取り去れば良いのですが、残念なことに私は庭を出歩くことすら出来ません。
 また、裏庭には桜はありませんが、カボスの木があります。このカボスも枯れかけています。長年、庭に生えていた木々が枯れると、まるで友人でも亡くなるような寂しさを感じます。庭はそうやって、新しい木々に入れ替わって行くのです。
 桜と言えば、妻の実家の庭にはサクランボの木が生えていて、季節になると時々サクランボを摘みに行きます。採りたてのサクランボはとてもみずみずしく美味しく感じました。果物がなる木々が育つのは、何だか嬉しい気がして、季節ごとの楽しみになります。
 今年はイチゴを植えているので、実がなるのをとても楽しみにしています。最初、種子から育てようと思ったのですが、なかなか芽が出ないので苗木を買ってきました。季節の移り変わりを庭を眺めて知るのを、ひとつの楽しみとしています。

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