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怪しい世界の住人〈龍神〉第十一話「竜宮城と神話のこと」

⑧ 龍宮城のこと

 有名な物語である『浦島太郎』は龍宮城へ行ったとされる御伽話おとぎばなしです。誰でも知っていると思います。彼は丹後の国の生まれで、そこの海から竜宮城へ旅立つのですが、物語の中には到着した場所の地理的な記載はありません。
 いったい、龍宮城はどこにあると言うのでしょうか?
 それともただの空想物語なのでしょうか?
 浦島太郎の物語は絵空事ではありません。実話を元に作られています。
 物語に登場する〈龍宮城〉の場所については諸説はあります。その中で一番有力な説は、

——関門海峡の海底に龍宮へ続く道がある。

 と言うものです。
 関門海峡は、本州の下関と九州の門司を挟んだ海峡で、源平の壇ノ浦の戦いや、巌流島があることで有名な海です。この地域には様々な伝説が残ります。
 ここに竜宮城があると言われるのは、古くからのことです。その理由は神功皇后の時代に遡るのですが、そのお話は次の章に譲るとして、龍宮城には三姉妹の姫がいました。
 上から長女〈豊玉とよたま姫〉、次女〈玉依たまより姫〉、そして末娘の〈乙姫おとひめ〉の三姉妹です。いくつかの伝説では妹である乙姫に浦島太郎を譲ったので、姉の玉依姫を縁結びの神としています。
 しかし、この玉依姫と言うのは、固有名詞、つまり特定の人物や神の名ではなく、霊的な力を持った巫女のことです。〈龍宮の玉依姫〉とか、どこそこのと言った地名をつけて呼ぶのが習わしです。龍宮では兄姫と弟姫と言う姉妹がいて、これも古語では姉と妹になりますが、その内の弟姫と言う言葉が〈乙姫〉となったと言う説もあります。
 浦島太郎の物語は小野おのの篁公たかむらこうの時代の物語のようです。浦島神社を建てたのは篁公です。
 その社伝に、

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