パラレルワールド-星の記憶-1-14

PW⑭【揺れる思い】


わたしは今日も父に叱られ公園にいた。

「おい」

「承太郎・・・」
わたしは笑って答えた



承太郎は父に打たれて
少し赤くなった頬をみて

「どうしたその顔」

「あぁっ、あのねっ私がいけないの」
わたしは笑ってごまかす。

-------
「何笑ってるんだよ」

といいなが承太郎がわたしの隣に座った。


「辛いなら泣けばいいだろっ!」

「えっ?」


「あいつなんてすぐ泣くぞ」

「あいつって?」

「あぁ、綾瀬しずく。店の中だろうがどこだろうがかまわず号泣するぞ!」

-------
「・・・ねぇ、
承太郎はしずくちゃんのことが好きなの?」

「なんだ急に、
好きとかそんなんじゃ・・・」



わたしは承太郎の腕をつかんで

「お願いしずくちゃんを好きにならないで!
わたしの側から離れないで!」


「何言って・・・いつも側にいるだろっ
なんかあったらいつでも相談しろっ。」

「お願いだから・・・」

--------
「・・・わかった。何があったんだ?
いつものことか?」

「わたしが上手く引けないから・・・
賞も取れないし、
どんどん妹に抜かれていく・・・」


「それはしょうがないだろ、
あいつはバイオリン専門の学校に行ってるんだから、なんでお前は行かなかったんだ!」

-------
「・・・承太郎と離れたくなかったから。

私は承太郎がいないとダメなの!
だからこれからもずっと側にいてほしい。」


承太郎はわたしの手を振り払って

「おいっおまえ、ほんとにそんな理由か?
・・・それじゃあ親父さんも怒るの当たり前だな!」

------

こんな承太郎見たことがなかった。

「それに、俺があいつのこと
好きだとか好きじゃないとか
おまえには関係ないだろ。」


「関係ある!

私は承太郎のことが好きなの!
子供のころからずっと!」


思わず言ってしまった。
-------

「・・・その気もちだけはもらっとく、
だけど少し頭冷やせ」

と言ってわたしを残して帰っていった。


言っちゃった。

こんな簡単に。

しかもこんな最悪の状況で。
何やってんだ私・・・。


このままだと音楽だけじゃなく
承太郎まで失っちゃう・・・
--------
あれ以来承太郎と顔を合わせるの気まずい

「柚希!音楽の植野先生が呼んでたよ。
音楽室に来てって」


「ありがとう」

なんだろ?


「失礼します」

-------
「あぁ宮本さん
ちょっと相談というか提案があって・・・

これわたしの大学で主催している歌のコンクールなんだけど

あなた出てみない?」


「わたし?ですか?」


「あぁもちろんあなたの専門はバイオリンだって知ってるんだけど

たまに中庭で歌っているのを聞いて・・・

なんていうか・・・
わたしあなたの声に惚れちゃったのっ!!」


「はぁー」
--------
「ねぇ、チャレンジしてみない!!

今からだと練習期間は1カ月ちょっとしかないけど、わたし全力でサポートするから!!」


「ちょっ・・・
ちょっとまってください・・・」


「そうよねっ急に言われても困るわよねっ

コンクールは2月だから、そうだなぁ一週間考えてみて!

一週間後返事を聞かせてくれる?」


「あぁはいっ」
-------
「あっでも、ほんとにあなたの歌声素敵だと思うから!!

前向きに考えてきてね!!」


「わかりました。失礼します。」


歌かっ・・・

あの夢のことを思い出した

そうしたら急に涙があふれ出てきて止められなかった。

なに?どうしたの?わたし!!

------

そこにちょうど承太郎が通りかかった

「おいっ柚希どうしたっ!」


心配そうにこちらを見ていたけど
わたしは走って逃げてしまった。


涙が止まらない・・・
このままじゃ授業出られない。

------------

キーンコーン♪カーンコーン♪

「授業を始めるぞっ宮本はどうした?」

「・・・」

「誰か知ってるかぁ」

「あぁ、気分が悪くて保健室に行ってます」

「おうそうか・・・じゃぁ始めるぞ」

何やってんだあいつ・・・

------------

わたしは初めて授業をさぼった。


屋上の出入り口の建物の上に登って

仰向けになって空を見上げながら自分を見つめていた。

-------
歌をただ歌いたいから歌う

みんなの幸せそうな顔を見たいから歌う

あの夢に出てきたわたしはそういう人だった。

そこには、比較するものなんて何もなくて
わたしの中から溢れ出てくるわたしだけのものだった。

それが本当のわたしで
それがとても幸せだったと言うことを
思い出していた。

--------

授業終了のチャイムが鳴ると少したって

「おいっお前授業さぼってそんなことろで何してるっ」

承太郎にはすぐ見つかっちゃうね。



「もうやめたっ優等生みたいなこと」

「はぁ?」

「自分の好きなことすることに決めた!!」

「・・・」

「わたし本当は歌うことが好きだって気づいたのっ!

だからバイオリンはやめる。今日父に言ってみようと思う」


「そうかっ」

-----------

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?