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「みちのく いとしい仏たち」(東京ステーションギャラリー)

 江戸時代、有名無名を問わず素人が作成した木彫の仏像の数々。こうした仏像のうち、東北のものは厳しい生活に置かれた人々の反動だからか、優しく微笑んでいるものが多いんだそうです。技術的完成度もその「仏師」の技量によってだいぶピンキリで、お寺に飾られている豪華絢爛な仏像とは違った、素朴な魅力があります。感覚としては馬や家などをかたどった形象埴輪を観るときと近い感覚があるのかもしれません。作品に技術が伴わずとも、むしろ技術が伴っていないからこそ、観る側の心の、きつく絞めてしまったネジを緩めてくれると思います(特に今年は大変な年明けとなってしまったこともあり、そのありがたみを痛感しています)。
 美術館で開催されている以上、後世の我々はこれらを芸術・美術として観ている部分が少なからずあると思いますが、本来は信仰の手段、一つの道具として制作されたもの。それを制作すること自体もひとつの信仰ですし、作られたあとも、厳しい環境で生活する東北の人々を精神的に支える存在となり、そして「話し相手」になってくれた存在です。
 既に制作されて数百年が経過している作品は、その多くが乾燥等によって大きくひび割れてしまっていますが、個人的にはそこにこそ、この仏像達が果たしてきた「役目」を感じていました。とりあえずの役目を果たし、芸術作品として"隠居"する現在の姿を観て、「お疲れ様」とも声をかけたくなる作品群です。

 ちなみに既に一回、京都・龍谷ミュージアムを訪れていたこともあり(2023/10/8の投稿参照)、東京展は「どうしようかなぁ」ぐらいのつもりだったんですが、訪れた方の評判がとても良かったので再訪することに。元々の展示資料も素晴らしいのですが、京都展とはだいぶ違う、展示手法の違いに驚きました。ガラスケースを用いない裸展示が多く、作品・資料に触れられずとも親近感を感じられる距離感、そして開放感。元々駅舎をリノベーションして設立されたギャラリーとの相性も良く、木のフローリングすら、作品とよくマッチしていると思いました(農村部に畳が普及したのは明治以降のため、むしろ当時の感覚に近い環境で展示されているとも言えます)。
 作品とギャラリーの相性というものはどうしても避けられないものですが、今回はそれが良い方向で顕著に現れた展覧会だと思いました。良質な展覧会を続けてきた本ギャラリーの地力の高さを感じます。

<東京展>

<京都展>

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