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「小さな版画のやりとり 斎藤昌三コレクションの蔵書票と榛の会の年賀状」(茅ヶ崎市美術館)

今回展示されていたものは蔵書票と年賀状。
蔵書票は書籍の盗難防止のため、本の見返し部分に貼られたもので、「紙の宝石」として、現在もコレクションの対象となっております。それを使った豆本なども展示されており、あまり古本でも出くわしたことが無いだけに(たぶん剥がされているんだと思います)、その存在にまず興味津々でした。
 
一方の年賀状は、1935年から約20年間活動していた年賀状交換グループ「榛(はん)の会」によるもの。有名どころでは棟方志功も参加していたこともあるとのことでした(今回は展示無し)。ちなみに投票で一番不評だった年賀状の作者は翌年参加できないというまあまあハードなペナルティがあり、そのせいなのか、ワンパターンではない工夫が凝らされているなと。柚木沙弥郎などの民藝を連想させる素朴なデザインもあればデューラーを彷彿とさせる細密でリアルな作品もあり、オーソドックスに干支を描くものもあれば、うさぎ年であれば亀、寅年であれば銀座とらや(和菓子店)を描いてくるようなツワモノも。
 
およそ80年前の作品ということもあり、文化史的な、時代の変化を知るという目線でも観れる作品群たちです。たとえば麻雀牌を描いているものが2つほど。家族麻雀にちなんで描いたと思われますが、今の日本であえて「正月の風物詩」として描かれることは無いですし、そういうところに時代の変化を感じたりもします。そもそも蔵書票も年賀状も、失われた、または失われつつある文化でもあります。抗いきれない側面もあるとはいえ、一つの「場」が失われる、そういう寂しさも感じるところでした。

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