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「中平卓馬 火-氾濫」(東京国立近代美術館)

 ハイコントラストな白黒写真で知られる森山大道の「盟友」として知られる写真家、中平卓馬。森山との関係性は重要で、特に初期、都市の路上という舞台、モノクロ写真における「アレブレボケ」という、一見乱雑な写真を肯定する「理論」を共有していた時期もあります(今回の展覧会でも中平のポートレートなど、森山の写真も数点展示)。
 ただし、その「理論」が森山にとって座り心地が良かったのに対し、中平はそこからは離れ、「植物図鑑」と呼ばれる、よりナチュラルな写真に取り組んでいくこととなります。森山が都市に渦巻く「欲望」の姿を、美化を前提とせず具現化しようとしていたのに対し、中平の写真は都市においてもなお、何気ないものの中に潜む「美しさ」を追求されていて、「植物図鑑」へのシフトはむしろ自然な流れだったのかも知れません。

 感想としても、「アレブレボケ」の初期よりも「植物図鑑」の時代の写真のほうが魅力的だと思いました。1970年代にアルコールが原因の言語・記憶障害となり、数年分の記憶が無くなる事態にも見舞われましたが、むしろその後の写真(1,8,9,10)はより純粋なものへと進化しているように感じました。表現が過剰かもしれませんが、以前東山魁夷展やゴッホ展の晩期を見たときの印象とも重なる、「芸術の豊穣」とも言うべき美しい世界。

 これから安井仲治展も東京に巡回してきます、森山大道は大小様々な展覧会が開催されています。スナップ写真は他の写真家との比較によって、より楽しくなっていくだろうと思います。素晴らしい展覧会でした。

 ちなみに今回は、中平自身がポスター形式の展示を行ったことがあったことにちなみ、今回のために新しくプリント、額装なしのピン留めで展示している作品がちらほらと。そういえば森山もバーにこういう感じで展示していたことがあったなぁと(ドキュメンタリーで見ました)。一点物の絵画ですとこうはいかないですけど、複製可能な写真だからこそできる「裸展示」というのは良いなと思いました。

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