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「なぜか忠臣蔵 藤沢のヒーロー小栗判官と江戸歌舞伎」(藤沢市藤澤浮世絵館)

 現在歌舞伎等で上演される「仮名手本忠臣蔵」は太平記を下敷きにしたもの。当時は武家に関する時事的内容の上演が禁止されており、あくまでフィクションだという「形式」を保つため、このような形式が取られていました。

 ここらへんの話は歌舞伎に強くない私でもなんとなく見聞きした記憶があるんですが、太平記が下敷きになる以前、小栗判官を下敷きにした「忠臣蔵」があるというのは完全な初耳。
 展示室でメモった情報なのでちょっとうろ覚えが入ってしまってますが、

①赤穂事件(実際の事件)
②鬼鹿毛無佐志鎧ほか(小栗判官の翻案)
③忠臣金短冊(小栗判官の翻案だが、照手姫など、小栗判官本来の登場人物が一部登場せず)
④仮名手本忠臣蔵(太平記の翻案、①②③のいいとこ取り)
 
というような流れ順で、物語が成立していったんだそうです。小栗判官は人間ドラマの要素も強く、より武断的な「太平記」に変更された印象で、④ではいいとこ取りも行われており(遊郭の描写など)、それが作品の奥深い魅力を演出することとなります。

 「鬼鹿毛無佐志鎧」「忠臣金短冊」を題材にした作品が浮世絵として残っているわけではないのですが、こういう関連性を知っておくと、忠臣蔵はもちろん、小栗判官にも親しみやすくなるのかなぁと思いました。サプライズをフックにして観る側を引きつけ、そしてのめり込ませてくれるという、とっても分かりやすく「学び」のある展覧会です。

 作品は国芳・三代豊国・周延など。今回は藤沢市のコレクションのほか、早稲田大学坪内博士記念演劇美術館のコレクションが展覧会後半で登場(演劇博物館作品の浮世絵は撮影×、興味のある方は博物館データベースで)。

 歌川重宣(二代目広重)《忠臣蔵夜討の図》では討ち入りを題材に、浮世絵では珍しい二点透視図法を披露。歌川国芳《義士本望を達して仙国寺へ引取固の図》では「仮名手本」の舞台である鎌倉ではなく、実際の泉岳寺がある高輪(東京都)の風景が描かれており、ギリギリで法を犯しにくる国芳らしい反骨精神を感じられます(*)。作者等を失念してしまいましたが、猪が「中の人」がいるやつになっている作品もあり、舞台に対する浮世絵の立ち位置をふと考えたりもしてました。

(*)後で確認しましたが、江戸末期になると赤穂事件自体も過去のものとなったようで、国貞なども日本橋を描くなど、幕府側の規制を破りにいった表現も散見されたようです。

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