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『マティス展』(東京都美術館)

「マティスはマティス」
 個人的な感想としては概ねこの一言に尽きます。ジャンルで言えばフォービスム(野獣派)とか、一応それらしいことは言えますが、そういった言葉で括りきれない"圧倒的な"魅力がマティスにはあると思いました。

 今回はポンピドゥー・センター監修の本格的な回顧展。
 当初はモローに師事、写実絵画からスタートし、次第に近代絵画に接近していくこととなります。ただ、かと言って「印象派」の一員に収まるという風ではなく、《豪奢、静寂、逸楽》(1904)では点描を学びつつも、その描き方はスーラ、シニャックの理論的手法からはやや逸脱するもの。その後もセザンヌ風、キュビスム風といった作品もありますが、その受容は表面的に感じます。一方で「考えの整理」で制作されたブロンズ彫刻では比例理論通りの顔の造形を披露するなど、「芸術理論」そのものに全く反発しているというわけでもないようです。

 こうした遍歴の末、マティスは一定の具象を追いかけつつも平面的で、それを原色に近い色彩で覆っていくという、どこの誰とも違う画風へと進んでいきました。晩年、病気をきっかけに切り絵へと移行したことすら、彼の画風としてはむしろ「進化」のきっかけになっていったと思います。
 そして彼の芸術は南仏ヴァンスにあるロザリオ礼拝堂に結実するわけですが、藍色のステンドグラスの光が礼拝堂の椅子にかかる様子がたまらなく静かで、素晴らしい空間になっていたと思います(映像のみというのが少し残念でしたが)。強いて言うなら、マティスは「新しいイコン」を追究していたのかなぁとか、そういうことを考えました(中世イコンは遠近法を「嘘」として退ける傾向があるので、多少の親和性はあります)。

 今回は東京都美術館の3フロア全体を使った回顧展らしい回顧展という感じで、作品も素晴らしかったんですが、地味に気に入ったのは3フロア目(2F)入口の写真パネル。晩年、車椅子に腰掛け、床に紙くずを散らかしながら切り絵に勤しむマティスの姿。「芸術家の執念」を感じさせる、マジでカッコ良いなと思いました。

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