夏路ん

心にふわっと湧き出る気持ちや、いつかのシーンを文章にするのが好きです。

夏路ん

心にふわっと湧き出る気持ちや、いつかのシーンを文章にするのが好きです。

最近の記事

あなたは、20年前に戻ることができます。

「あなたは、20年前に戻ることができます。」 スーパーの帰りに、いつの間にか 狭い路地に迷い込んでいた。 暗いどんよりとした日。 雨が強くなってきた。 傘からはみ出るスカートの裾を気にしていた。 「あなたは、20年前に戻ることができます。」 再び聞こえた、低い声に、私は、 ゆっくり、顔を上げた。 頭からマントを被った老人が目の前にいた。 私の驚きと喜びの入り混じった顔を見ずに、立て続けにこう言った。 「ただし、その20年は、同じ出来事になります。同じ行動を しなく

    • 大きなコバルトブルーの空とおっかない先生

        「また注意されたの?」 列の後ろに並んだ私に 友人は首を斜めにして少し顎を上げてそう言った。 校舎に隠れたテニスコート。 草木たちが横目で見ている。 順番にボールを打った後に 睨みつけるように見ていた おっかない、熱血先生に手招きされて アドバイスを受けた。 うまくいかずに よく呼びとめられる私は、 友人たちの視線を背中にじんじんと 感じていた。 思春期の頃、人より目立ったり、 人より劣ることを嫌った。 熱心な友人は 私へのアドバイスも自分に活かす から、後から

      • 今年の夏

        大好きな夏が目に染みる 燃ゆる太陽の遠く反対側は 黒く霜に覆われているに違いない 太陽でさえ、地球の心を 感じとっている 大好きな夏が目に染みる 長い長い雨が終わり、 短い、短い、夏が始まる 汗を拭う白いTシャツの君 ふと見上げる空  赤い、そして黒い太陽 君の横顔は変わらないね                        

        • 雨音

          叩きつける、無数の灰色の針たち 膝を抱えて雨の音を聞く 雲の向こうにある太陽を想いながら 叩きつける、無数の灰色の針たち 心と重ね合わせ雨の音を聞く 膝を抱えた自分を遠くから見つめながら

        あなたは、20年前に戻ることができます。