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「竹生島」後編+漫画KATANA~お能・謡曲のお話Vol.1

先日、竹生島をたずねた時のお話をしました。そうしたらそこにコメントをいただき、ある漫画をご紹介いただきました。その時にふと思い出しました。お能のお話・謡曲でも「竹生島」がある…と。

そこで、出かけたところの謡曲を紹介してみようと思いつきました。
ということで本日は第一弾です。
どこまで続くかはわかりませんが、よかったらおつきあいください。


漫画「KATANA」を教えていただき

さて事のはじまりは、4月初め。竹生島に参りまして、そこで素敵な時間をすごしたとstandfmでお話をしましたところからです。
これを聞いてくださったコチラジ妄想放送局と言うチャンネルのkocchiさんが
コメントをくださいました。

コッチーさんのチャンネルはこちらです。

いろいろ好きなものに共通項があり、教えていただく事が多いkocchiさんですが今回はこんな内容でした。
「お気に入りの刀の漫画に登場して以来、行きたいなぁ、と思っている神社の一つなので、ワクワクしながら聴かせてもらいました😆」

何んだそれは?と、わたしはもうとても気になっておりました。そしたら、こちらもstandfmでもnoteでも仲良くしていただいています 
詩と朗読 Poetry nightと言うチャンネルの詩人で朗読屋の郎女さん
「その漫画はもしかして「KATANA」?私も好きな漫画です〜。」
すぐ反応をしてくださいました。

郎女さんのnoteはこちら

わたしはもう、すぐ知りたくて、詳しく教えていただきました。

作者は かまたきみこさん 主人公は成川 滉(なりかわ あきら) くん、
鎌倉時代から続く刀鍛冶を家業に持つ家に生まれた高校生。刀鍛冶はすきではないけど、「刀の研ぎ」だけは気に入っている滉くん。彼は、生まれつき人や獣の姿を持つ「刀の魂魄」が見え、互いに触れ合うことができる異能の持ち主。そこで出会う名刀や妖刀…時代を経ていろんな人とも出会う、という、ほぼ一話完結のストーリー。

https://asuka-web.jp/product/katana/


早速、何巻に入っているかをお聞きして、電子書籍で入手、よみました。

タイトルもそのまま「竹生島」でした。
ただ、ここには「ちくぶじま」とフリガナがあったので、やはりこんなこともあるなと思ったのです。

それはさておき、物語の方では、現実ではないシーンとして、竹生島に向かう小さな船がでてきます。うさぎの船頭さんが、この回の主人公である女性を「姫」とよび、無事、島までお連れします。そしてその後、湖の底に沈むという場面がありました。

島の入り口は昔も今もかわらないのかな?

刀の装具のデザインに、兎の姿に波のものがり、その文様を「竹生島」というそうです。また途中にも能謡曲の竹生島の演目について解説を別にいれてありました。そして、これを読んで、ようやくお能のお話、謡曲を思い出したわたしだったのです。

お能について

とは申しましても、わたしは能楽に詳しいわけではありません。ただ物語がすきなのと、伝統文化であること、謡曲の言葉が美しいこと、声の力、また世阿弥さんってすごいなと思うファンのようなレベルです。

ですから、大まかな物語についてしか語れません。そしてお詳しい方はすぐ思いつくでしょうが、今回の竹生島のように、日本全国、時に中国もありますが、各地に物語がちらばっています。

これはおそらく、お能が武士に広がったこととも関係しているのではないかと勝手に考えております。能が武士の間でたしなみとされた理由として、江戸時代に参勤交代をはじめたら、江戸に集まった地方の武士の言葉が解らなくて困った、つまり「皆、方言しか話せなかったから」という背景があるそうです。共通語がなかったので、それを身につけてもらうために、歌劇であるお能の謡曲を学び覚えさせ、言葉を整えたそうです。

また、例えばセリフの中の名乗り部分など、そのまま自分の名前を置き換えれば通じるようにして使いやすくしていたそうです。

そのような理由ですから、もしかしたら各地のお話があるのは、各地の人が親しみをもって謡曲を覚えやすいようにだったのかなと、思ったりしたわけです。

ともあれ、今まで出かけたところと、その物語を一緒に楽しむ、自分の記録にもるし、はじめてみよう、今後つづけていこうと思っております。

宝厳寺弁天堂

能~謡曲の分類

ちなみに、お能はタイプ分けされていますので、ここに記しておきます。
初番目物 (しょばんめもの)、二番目物、三番目物…ものとカテゴリー分けされており、五番目物まであります。

初番目物=一番ですが、これを脇能物(わきのうもの)ともいいます。
神様が登場して祝福したり、神社やお寺の縁起を語るものです。

また、昨今はあまり見ることもないでしょうが、結婚披露宴などでも「小謡」として「高砂」や「養老」「弓八幡」などが披露されることもありました。これもこの初番目物に含まれている謡曲です。個人的には、おめでたい言葉を、また更に声の力で祝福するイメージだったのかなと思いますが。
そして「竹生島」も、この初番目物に含まれています。

ちなみ2番目のカテゴリーは修羅物
源氏と平家の武将が主ら同で苦しむパターンのものとか、
3番目は葛物 女性が主人公でい幽玄で優雅な舞が見どころになるもの
4番目は雑能 物狂いといわれる執心ものや怨霊、人情ものであり「三輪」「龍田」「道成寺」「俊寛」など、有名な演目が多いですね。
最期の5番目は切能(きりのう) 鬼や妖怪の異類が主役となっているものです。「土蜘蛛」「船弁慶」なども良くしられています。

能の物語「竹生島」あらすじ

さて竹生島の物語ですが、弥生の頃、醍醐天皇の臣下が、都から竹生島の弁才天の社に詣でようと、琵琶湖にやって来ます。臣下は、湖畔で老いた漁師と若い女の釣り舟をみつけて声をかけて便乗します。お供の引き連れて、湖に浮かぶ竹生島を目指します。

この時の様子が、先ほどの漫画KATANAで、うさぎが波を飛ぶ場面の元になります。

緑樹影沈んで 魚木に登る気色あり 月海上(かいしょう)に浮かんでは 
兎も波を走るか 面白の浦の気色や

木々の緑が湖水に映えて、水の中を泳ぐ魚のが木々を登っているよう
月が湖水に影を落とすと、月の兎も波の上を走っているようにみえる
なんと面白いこの浦の景色でしょう

まさにこれが絵になっているので、楽しいですよ。

こちらは文字ですが…

そして老人が琵琶湖の美しさを語る中、一行は島に着きます。そして老人が臣下を社に案内します。連れの女も一緒に進みます。それをみて臣下は老人に問います。「竹生島は女人禁制ではないのか」と。すると老人と女は「竹生島は女体の弁才天を祀り、女性をお隔てにならない」と答え、島の由来を聞かせます。

その後、女は「自分は人間ではない」と明かして、社の御殿に入り、老人は「湖の主である」と告げ、湖水の中に入り消えてしまいます。(KATANA
ではうさぎが湖底に沈みますが、能の物語では老人が沈みます。)

そこへ、弁財天の社を守っている社人があらわれます。臣下は社人からここに伝わる宝物を見せてもらったりします。そして一通り終えたころ、社人が「岩飛びも観ますか?」というので、臣下は「それもみたい」と答えると
いでいで巌飛びはじめんとて 巌の上に走り上がりて
東を見れば日輪月輪照り輝きて 西を見れば入日を招き
 
と、社人は岩の上に走り上がったのに、巌(いわ)の上から湖に飛び込みます。なかなか出てこないなと思ったら「くっさめ、くっさめ」と、大きなくしゃみをして走り去ります。

この場面は前後のお話をつなぐ中入りといって、衣装替えなどの時間に入れられる場面です。

実際に行った時の、特に黒龍が祀られていた脇の絶壁などを思い出すと、かなりのジャンプだなと思ったりします。更に、私にはこの社人が、なんだか漫画の中のうさぎに思えました。ぴょんぴょん身軽に岩をのぼって、更にぴょーんと大きく絶壁から飛び降りるイメージです。

閑話休題、その後、社殿が鳴動、鳴り響いて、社人のセリフのように日と月が輝きながらのぼるように、光り輝く弁才天が現れます。

「衆生を守る弁財天とはわたしのことです」と仰っると、そこに天から音楽がきこえてきて、花が降り注ぎ、春の夜の月の中で、天女の姿で舞います。
そのうちに、澄み渡る月の光が湖上に射した頃、今度は水中深くに住む龍神が現れます。龍神は金銀ちりばめた宝玉を臣下に捧げてから、激しく舞い踊ります。


「衆生の願いをかなえ救済する仏の誓願は、
ある時は弁財天の形で、ある時は龍神となり国を鎮めるのだ」と
二つの形をしめして、弁財天は社殿へ、龍神は湖水の波をたて上空を飛び回ってから湖中の龍宮のなかへ飛び入りました。

以上がお能「竹生島」の物語あらすじです。

後記

今回は帰ってきてから思い出した物語でしたが、大弁財天様があそこに、そして龍神様があそこに、と現地のことを振り返るとまた一層この物語にひたれ、謡の言葉が心地よく感じるのでした。

そしてまた丁度春の季節に出向きましたので、当時の弥生を考えますと、旧暦カレンダーでいくと今年は4月9日からが弥生となります。ですから2月30日に訪れたという所です。木々や花の咲き方も近かったかもしれませんし、冒頭「竹に生るる鶯の」という謡から始まりますが、かすかに鶯の声も聴いていたの、そんな発見もまた嬉しいものとなりました。

宝巌寺御朱印
竹生島神社は御朱印は直接は書いてはいただけません

謡曲は200くらいあると言われていますが、実際には謡曲100番というくらいが親しまれているようです。勿論、わたしはそんなには存じ上げませんが、それでも謡曲集の中に馴染みの地名を目にしては、心躍るのでした。また、当時のそこへのアクセスも、コース取りは今とあまり変わっていないと思う所もあり、ますます訪問の時の旅気分もよみがえります。

もしかしたら昔の人は、今のように気軽に旅に出かけられなかったから、この舞台をみたり物語を聞いたりして、旅気分を味わったのかもしれないとも思います。今でいうテレビや映像でみる紀行番組のようなものかもしれない、そう思うと、もし、わたしが当時生きていたら、やっぱり興味津々で、見聞きしたことだろうと想像したりしています。

ということで今日は竹生島と漫画KATANAからのお能・謡曲竹生島のお話でした。最後までおつきあいいただきありがとうございました。
またこのシリーズ続けたいと思います。その際はよろしくお願いします。

竹生島訪問の時の記事はこちら


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