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北朝鮮からロシアへの短距離弾道弾ミサイル輸出について(IISSの記事)

写真出展:Gerd AltmannによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/geralt-9301/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=2692779

 英国国際戦略研究所(IISS)は2024年1月17日に、北朝鮮からロシアへ輸出されたとみられる短距離弾道ミサイルを分析した記事を発表した。内容は、ウクライナ戦争にてロシアが使用した北朝鮮のミサイルの性能や戦争に与えた影響について分析し、今後の武器移転について考察するものである。北朝鮮によるミサイル実験はもはや年中行事のようになっており、危険性についての認識がマヒしているが、着々と開発が進められている事実に変わりがない点に意識を向けるべきである。日本のような貧困な情報空間では見られない優良な軍事情報として、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(North Korea’s ballistic-missiles transfer to Russia: Operational constraints thwart objectives)
https://www.iiss.org/online-analysis/missile-dialogue-initiative/2024/01/north-koreas-ballistic-missiles-transfer-to-russia-operational-constraints-thwart-objectives/

1.本記事の内容について
 ・1月4日のアメリカ国務省の記者会見において、北朝鮮が数十発の短距離弾ミサイルをロシアに供与しているとカービー報道官が発表した。2023年12月30日から2024年1月2日にかけて数発の北朝鮮製のミサイルが発射されたが、ザポリージャ郊外南西部に着弾したことから、最初の発射は失敗に終わったと評価した。
 ・失敗に終わった理由としては、ロシア側が北朝鮮製のミサイル操作に習熟していなかった、ミサイル制御ソフトの不具合や固形燃料の推進力不足といったことが考えられるが、ウクライナ側が迎撃できた可能性もある。ウクライナ側の発表では迎撃した結果として郊外に墜落させたとされているが、ミサイルをロシア製のイスカンデルMであるとしており、必ずしも正確な情報を把握していた結果と言うわけではない。
 ・ロシアは戦争開始以降800発以上の短距離弾ミサイルを発射しており、戦争前の備蓄を使い果たしたと見られていることから、北朝鮮のミサイル供与をさぞかし歓迎したことだろう。ミサイルだけでなく輸送起立発射機や支援車両も供与されており、北朝鮮による支援は拡大しつつあると言える。
 ・カービー報道官が示した写真から推測すると、供与されたミサイルは火星11Aと火星11Bのようである。(1月2日のミサイル残骸の分析結果でも、ロシア製とは異なる設計であることが判明しており、北朝鮮製であることが示唆されている。)2つのミサイルは2019年に発射試験が実施されたものであり、火星5などのスカッドミサイル型の系統に属するものである。過去5年間のミサイル発射実験において、火星11Aの回数は他のミサイルよりも多くなっていることから、その注力ぶりがうかがえる。
 ・またこの2つのミサイルはイスカンデルMと姿形が似ており、飛行性能も弾道弾ミサイルに準じたものとなっているが、迎撃システム回避能力は高くなく、誘導システムも優れていないことから、ウクライナ側のミサイル防衛を混乱させる役割を果たしている部分もある。その他、飛行距離はイスカンデルMよりも長く、火星11Aは900km、火星11Bは410kmとなっているが、ミサイル着弾の正確性については不透明である。残骸からは違法に輸入されたとみられる海外の部品も使用されていることが判明している。
 ・ロシアによるミサイル攻撃は、想定よりも成果を上げられていないと考えられる。初期は軍事施設攻撃にミサイルを活用していたが、その後標的を重要インフラに切替るなど場当たり的な対応をした結果、長距離兵器の活用が中途半端となって失敗に終わっているのである。ロシアは再度軍事施設をミサイル攻撃する方針に変更しているが、インテリジェンス機関の対応が不十分であり、適格に標的を定めることができていない。ただロシアは北朝鮮やイランからミサイルの供与を受けて攻撃を継続しようとしており、今後も同様の戦術を採用するものと想定される。

2.本記事についての感想
  台湾総統選で頼清徳氏が当選したということで、当面は中国との対立が継続する見込みとなった。今後台湾有事については今後大きく注目されることになり、アジア全体での安全保障の議論を更に活性化しなければならない。
  このような状況下において日本では相変わらず下らない情報が蔓延しており、肝心の安全保障問題が置き去りにされている。災害派遣の観点で自衛隊に注目するのは良いが、本来の役割とは別であり、安全保障問題と関連させて災害派遣にばかり従事させられる現状について問題的するような意見はほとんど皆無と言っていい。
  確かに能登半島の震災は無論大きな問題であるが、日本が抱えている問題は多々あり、過度に特定の情報ばかりに意識を奪われては国の根幹たる安全保障問題に対応しきれなくなる。バランスよく情報を入手し、全体最適の解を探し出す努力こそがいま最も求められることである。

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