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アメリカ各州の電力政策(CFACTの記事)

写真出展:Peter HによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/tama66-1032521/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=4712123

 2023年3月1日にCFACTは、アメリカの各州における電力政策に関する記事を発表した。内容は、現在の化石燃料系の発電量と風力・太陽光の発電量の比較、電力需要の見通しなどを概観し、脱炭素発電への移行の非現実性を指摘するものである。
 日本は情報鎖国状態にあり、電力に関して優良かつ真剣な議論がなされていてもなかなか拡散しない傾向にある。将来のエネルギー政策を考えるための参考として、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Green electricity goals in conflict)
https://www.cfact.org/2024/03/01/green-electricity-goals-in-conflict/

1.本記事の内容について
 ・アメリカの23州は、2050年までに脱炭素100%発電へ移行する目標を立てており、石炭・ガス発電所を廃止し、風力と太陽光発電を中心にしていこうとしている。例えばミシガン州上院では、2023年12月29日に「健全な機構計画」の一環として、2050年までに脱炭素100%の発電に移行する法案が可決された。
 ・ミシガン州のエネルギー別発電量を見ると、ガスが34%、石炭が29%、原子力が22%、風力・太陽光が12%となっている。63%を占める化石燃料計発電所を停止するだけでなく、同時並行で電気自動車やオール電化推進なども推進しているが、天然ガス暖房の比率が4分の3以上となっており、プロパンガスも広く使用されている現状を考えると、このような政策は現実的ではないだろう。
 ・2022年のアメリカの総発電量を見ると、石炭と天然ガスが60%を占めていた。原子力は18%、水力は6%であるが、巨額の補助金の支援を受けた風力と太陽光の発電量は合計でたった15%程度にとどまっている。(詳細図1参照)


 また電力需要は2005年ごろからほとんど変わっていないが、ガス暖房からヒートポンプへの移行や電気自動車の普及により、急激に電力需要が増大することになる。
 ・ミシガン州のような温室効果ガス排出実質ゼロ政策を採用している州は、全て電力供給の問題に突き当たる。せいぜい脱炭素化が可能な州は、アイダホ州、オレゴン州、ワシントン州のように水力発電が中心の場所だけであろう。ニューイングランド州の場合、84ギガワットの発電量を風力と太陽光で満たさなければならず、電力量に対して56%のバッテリーを2040年までに備えなければならないが、これも現実的ではない。特にバッテリーは通常の需要の3倍に相当する容量であるが、それでも年間36日程度は停電する危険性があるのである。
 ・風力と太陽光発電は、悪天などの悪条件に対して脆弱である。これらの発電インフラは、雨、雪、強風、極端な高温などの状況では稼働できず、停電した場合は電力で賄っているインフラはすべて使用停止になる。またAI技術の飛躍的向上によりスーパーコンピューターが利用されるようになり、今後10年で6倍から10倍の電力量を要するようになると見込まれており、世界の電力需要の10%を占める可能性がある。またグリーン水素発電などによる工場などの電力供給も非常に大量の電力を必要とするのであり、例えば鉄鋼産業の電力供給は5000テラワット/時の電力が必要となる。このような状況を考慮すると、クリーンエネルギーによる発電への完全移行は不可能と考えられる。

2.本記事読後の感想
  今回の記事は、非現実性を数値に基づいて指摘する優良なものである。なぜ日本では現実的な政策についての情報が拡散しないのだろう。原子力アレルギーなどと言って原子力発電を拒否しても電力が供給されなくなるだけであり、こういった事態になって初めて慌てだしても遅いのである。電力政策は長期的な政策であり、社会の変化を見通したうえで策定されるべきものである。
  現在学校などの施設をはじめとしてエアコンが整備されているが、今後も日本の電力需要は増加し続けるものの、同時にクリーンエネルギーによる発電が推進されており、果たしてこのような政策で電力の安定供給など望めるのだろうか。
  死に体の岸田政権や自民党には何ら期待できない。現実的なエネルギー政策を争点とした政治がなされることを切に希望したい。

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