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インフレ抑制法と電気自動車の命運(CFACTの記事)

写真出展:FinnrichによるPixabayからの画像

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 2022年8月24日にCFACTは、インフレ抑制法と電気自動車の普及に関する記事を発表した。内容は、バイデン政権が環境規制によりリチウムの生産を抑制しつつも電気自動車の普及を推進していることの矛盾を指摘し、今後の電気自動車の命運を概観するものである。
 リチウムの生産は環境汚染を引き起こすものであり、額面通りのクリーンなエネルギーではないことが良く分かる内容となっている。今後の電気自動車の動向を見据えるうえで参考になることから、その概要を紹介させていただく。

↓リンク先(“Inflation Reduction” Act will hinder EV growth)
https://www.cfact.org/2022/08/24/inflation-reduction-act-will-hinder-ev-growth/

1.本記事の内容について
 ・先日バイデン大統領はインフレ抑制法に署名した。本法案には、電気自動車のバッテリーは、北米産の鉱物を使用し、北米でリサイクルされなければならないという条項が含まれている。ただアメリカでリチウムの採掘が許可される可能性がないことから、優遇税制を受けられる電気自動車が存在しないことになるのである。
 ・バイデン政権は2030年までに電気自動車の普及率を50%にするという目標を掲げているが、実際には補助金を十分には拠出しておらず、この目標達成は社会の尽力にかかっているのである。ただ、アメリカ国内におけるリチウムの採掘については大幅に規制されており、国際的にも抑制されつつある。
 ・EUは、3種類のリチウム化合物を人体への健康上の危険性があると認定した。最終的な規制については、2022年暮れか2023年初頭に決定される見込みである。
  また中国の電気自動車大手であるBYDは、チリの鉱山(世界の55%の埋蔵量を誇る)におけるリチウム採掘権を獲得したが、地元民から抗議されており、最高裁は政府の決定を差し止めた。セルビアやポルトガルの鉱山開発や鉱物処理工場の新設の試みは、地元民の反対でとん挫している。現在地熱水からのリチウム抽出方法が研究されており、こちらの方がコストもかからず、環境汚染もないという結果となっている。ポルトガルはこのような結果を受け、リチウム産出事業を注視している。
 ・リチウムを巡る状況は、航空業界においても厳しさを増している。連邦航空局は、火災上の懸念から、機内へ持ち込む荷物としてリチウムバッテリーや電子タバコを禁止しており、貨物室内にしか運び込めない。電気自動車の火災についてはテスラEVfiresというサイトで取りまとめられており、これまで97件の火災が発生しており、そのうち38件の死亡事例が発生している。
 ・バイデン政権は電気自動車の普及を促進しつつも、その負の側面については目をつむっている。グリーンエネルギーを支えているのは発展途上国であるが、鉱山の劣悪な労働条件や採掘に伴う毒物などの問題は取り上げられることがない。果たして電気自動車の普及は、倫理的と言えるのか?
 ・電気自動車への自動車メジャー企業の投資は、今後十年で合計3000億ドルに上ると見込まれているが、肝心の電気自動車の生産はアメリカ国外でなされることになる。このことにより、自動車の生産国も大きくシフトしている。1950年と2019年の生産台数を比較すると以下の通り。
   中国 0万台→280万台
   アメリカ 800万台→1100万台
   日本 3万1000台→980万台
   インド 1万5000台→500万台
   ドイツ 30万台→500万台
   韓国 0台→400万台
 ・ただ電気自動車の輸入については、保険の問題が絡んでいる。2022年3月に電気自動車を輸送している650フィート級の貨物船が沈没したが、これは電気自動車のリチウムイオンバッテリーからの出火が要因になっている。沈没した貨物船の価値は2450万ドルであったが、失われた3965台の電気自動車の損害額は5億ドルとなっており、多額の保険金が必要になることは明白である。
 ・リチウムの採掘は環境汚染を発生させる。採掘の過程で地下水が汚染されることが知られており、また抽出処理により生態系が破壊され、人体に危険な毒物を発生させてしまう。こんなことを容認できるアメリカ人はどれだけいるのだろう?また2021年末には電気自動車が1650万台に上っているが、これは世界の自動車全体の1%程度しか占めていない。リチウム生産の悪影響への懸念から地元民が環境破壊を理由として生産に対して抗議しており、結果として国際的にリチウム生産が抑制され、電気自動車の成長も抑制されることになるのである。

2.本記事読後の感想
  地球温暖化に対応するため二酸化炭素排出を抑制する、クリーンエネルギーは環境に優しい、などといったスローガンがマスコミを中心に喧伝されているが、実際には途上国の国民を奴隷労働させることにより成立する非人道的な政策である。リチウム生産に伴って発生するマグネシウムやナトリウムなどにより地下水などが汚染されることになり、地元民が反発するのは無理もないことである。また悪いことにこういった不都合な仕事を引き受けてくれるのが中国なのである。環境政策推進は中国を利するのみであり、エネルギーの依存先をロシアから中国にするだけである。
  こういった美辞麗句に騙されないようにするためには、化学などについての基本的なリテラシーを身に付けることである。ただ日本における文系と理系の割合は3:7となっており、更に化学に十分なリテラシーがある人々はさらに少ない。大きな問題が発生するまで日本人の認識が改まることがないのではないという絶望感を抱いてはいるものの、既存のマスコミ以外の優良な情報源からの情報により人々が目覚めるのではないかという期待も抱いている。もしこのまま電気自動車の流れに乗れば、日本の国益が損なわれる。私も微力ではあるが、今後もこういった情報を発信していくこととしたい。

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