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山中湖畔の県有地の問題について

山梨県の山中湖畔の県有地の問題の経緯のまとめです。
記述文面は要旨です。実際の文言から略して記載しています。
しばらくは随時更新・修正していきます。


経緯

1.住民訴訟(H29裁判) 2017年

1-1. H29/10/6 に、住民訴訟が提起された
・原告:住民(南アルプス市在住)
・被告:県
・(当初の)訴え:被告(県)は、歴代3知事と富士急行とに、総額159億円余を請求せよ

1-2.H30/3/15 に、富士急行が、補助参加人として訴訟に参加した
・補助参加人:富士急行
・原告と争う被告(県)を補助するために参加した

1-3.R2/8/18 以降、被告(県)が、主張を転換した
・H31/2/17 長崎幸太郎新知事が就任した
・R2/11/5 当初は原告と争っていた被告(県)が、 補助参加人(富士急行)との H29契約は違法無効だったと主張を転換した

1-4.R2/9 以降、原告が訴えを変更した
・原告は R2/9~R3/9にかけて当初の訴えを順次取り下げ(歴代知事への請求など)、最終的に次のように変更した
・訴え:被告(県)は、補助参加人(富士急行)に、364億円余を請求せよ

1-5.R2/12 に、原告と被告(県)との和解が図られたが合意されなかった
・和解条項:
① 県庁内に検証委員会※5を設置して適正賃料ほかを調査する
② 調査の結果、損害賠償請求権などが明らかになれば適切に行使する
・R2/11/30 県議会に「和解」議案を提出も継続審議となり、原告の求める当会議中の和解に至らず R2/12/15 に議案を取り下げた

1-6.R3/3/1 に、富士急行が「別件訴訟※1」を提起した
・別件訴訟の訴え:本件土地の賃借権等の確認を求める

1-7.R3/7/9 に県が、別件訴訟に対し「別件反訴※2」を提起した
・別件反訴の訴え:原告に損害賠償不当利益の返還を請求する

1-8.R4/3/15 に、甲府地裁の判決が示された
・判決:「却下する」 判決文PDF
・理由:この住民訴訟の意義・目的は、別件訴訟・別件反訴により達せられている

原告の訴えに対する判断は示されずに却下されました。
原告は控訴しました。

1-9.R5/5/25 に、控訴審東京高裁の判決が示された
・判決:「却下する」 判決文PDF
・理由:訴えの利益がない

原告は上告せず、控訴棄却の判決が確定しました

2.別件訴訟と反訴(R3裁判1審)

2-1. R3/3/1 に、富士急行が県を提訴した(別件訴訟※1)
・原告:富士急行
・被告:県
・訴え(主訴):
 ①原告のH29年時の契約・賃借権は有効である
 ②原告の土地占有に不法行為の損害賠償債務はない
 ③原告の土地占有に不当利益の返還責務はない
 上記3点の確認を求める

2-2. R3/7/9 に、富士急行の訴えに県が反訴した(別件反訴※2)
・反訴原告(県)の訴え(反訴): 県の反訴状PDF
 ④原告(富士急行)は61億円余と利息を県に払え(不法行為の損害賠償として)
 ⑤原告(富士急行)は31億円余と利息を県に払え(不当利益の返還として)
・訴えの原因:平成9年契約(更新)は、地方自治法237条2項に違反し無効であるため

2-3.R4/12/20 に、甲府地裁の判決が示された
・判決: 判決文PDF
 ①②③「認め確認する」
 ④⑤「棄却する」

県の訴えは棄却され敗訴となりました。
これをうけ、県が控訴しました。
県議会は、控訴費用を承認しました。(弁護士費用は追加支出なし)

3.控訴審(R3裁判2審) 2023年

3-1.R5/1 に、県が控訴した
・R5/2/16 に、 控訴理由書を提出した 控訴理由書PDF

3-2.R5/8/4 、控訴審東京高裁の判決が示された
・判決:「控訴を棄却する」 判決文PDF

県の訴えは棄却され敗訴となりました。
県は上告せず、2審判決が確定しました。

判決文より

1.R3裁判1審判決文より

1-1.判決文からの要旨です 1審判決文PDF
・S42契約まで、継続賃料評価により、当事者間の、合意がなされていたというべき。
・3年ごとに不動産鑑定士による賃料の相当性が検証されている。
・H9契約もH29契約も、算定に基づき合意されたので、適正な対価のない価格であるとはいえない。
・原告は、造成費用等のコストのみならず、別荘事業等で損失を被るリスクを負うので、本件不動産の価値上昇に伴い生じる利益は、原告が享受すべきもの。(??)
・造成に伴うコスト・リスクを負っていない賃貸人の被告が、不動産の価値の上昇に伴う利益を享受するのは、不相当。(???)

◾️合意も、鑑定も、造成前の素地価格ベースという低い基準で来ていたものの、契約としては有効なのでしょうが、それをもって適正な対価ではないとはいえないと言われても…。でも契約が交わされている事実が全てでした。
しかしながら、他人様の土地を借りて転貸商売をしているのに、儲けを地主に渡すのはけしからんという理屈はちょっと理解できません。この内容では、将来的な賃貸料交渉に差し障ると思われ、私は控訴に賛成しました。

2.R3裁判2審判決文より

2-1.判決文からの要旨です  2審判決文PDF
・もし、地方自治法237条2項に違反しているならば、貸付けは無効。
・しかし、適正な対価によらずに貸付けたものと認められるかは、客観的な算定方法に基づく金額を下回るか否かであり、鑑定、合意、継続賃料等の経緯を踏まえれば、適正な対価によるものではないとはいえない。
・造成前の素地価格による低廉に抑えられた賃料額を基準に算定された継続賃料については、H9契約・H29契約の貸付料の評価として相当ではないという場合もあり得る。
・別荘地としての開発で得られる価値(付加価値)の増加分は被控訴人(富士急行)に帰属すべきだが、土地造成による不動産価値の増加分は所有者の控訴人(県)に帰属すべきもの。
・H9契約・H29契約における適正賃料額の算定の際に、直近合意時点及び価格時点における新規賃料と現行賃料との間に乖離があり、本来、諸事情を総合的に勘案して適正賃料額を算定すべきと言いうる。
・原判決(第一審)主文の括弧書き内の改定賃料額の記載は、本来不必要な記載であった。

◾️ 一審判決文をずいぶん添削・修正していました。一審のように、造成前の素地価格の継続を当然と決めつけることはせず、不動産価値の増加分を適正に賃料算定に反映すべきとの文言は、控訴して得られた成果だと思います。
遠回しな言い方ですが、適正な対価によるものではないとはいえないこと、賃料の評価は相当ではないという場合もあり得るが不当であるとはいえないこと、によりH9契約は違法無効であるとはいえないとして県の主張を退け、県は敗訴したわけですが、二審判決では、H9契約・H29契約の賃料は適正に見直すべき余地が多分にあることも指摘しています。
この判決を受け、これからの賃料の改定交渉で、適正な対価にすりあわせていって頂くことにより、せめて裁判費用は回収していって頂ければ、控訴した意義は十分にあったものと私は考えます。

裁判費用等

1.R1年度以前

・ H29/10 住民訴訟時、弁護士1名を訴訟代理人
・ R1/6/1 弁護士3名を訴訟代理人

2.R2年度

・ R2/6/2 A弁護士と顧問契約  22万円/月
・ R3/1  A弁護士へ「委託料」 6600万円 ※A
  - R3/3/31迄の調査費用、3名分とのこと(決算委員会答弁より)

3.R3年度

・ R3/4/30 A弁護士着手金  1憶4300万円 ※B
  - これに別途成功報酬とのこと
  - R3/4/30 知事専決処分
  - R3/7/1 総務委員会承認(賛成多数) 議事録PDF
  - R3/7/6 本会議可決(賛成多数)  議事録URL 21~41
・ R3/7 反訴提起の手数料(甲府地裁) 1532万円余
・ R3/6/17 住民監査請求(6600万円※A の賠償請求)
  - R3/8/11監査結果(棄却する)  監査結果PDF
  - 不服の住民訴訟※3に対し、訴訟委任・着手金 184万円余
・ R3/6/29 住民監査請求(6600万円※A +1億4300万円※B の返還請求)
  - R3/8/25監査結果(棄却する)  監査結果PDF
  - 不服の住民訴訟※4に対し、訴訟委任・着手金 311万円余

4.R4年度

・R5/1 控訴に係る弁護士費用    0円
  - 一審での敗訴を踏まえ訴訟復代理人(弁護士)を3名増員した
・R5/1 控訴提起の手数料(東京高裁) 2871万円
  - R4/12/26 12月臨時会で議会承認(賛成多数)

■ 弁護士費用については、一見して高いなあとは正直思いますが、議会の議決を経ていること、一方では住民訴訟で係争中でもありますので、これは司法の判断を待ちたいと思います。

賃貸借契約の経過

1.昭和の契約

・昭和2年1月29日より貸付け。当時は溶岩原生林。
・県は裁判で、昭和2年の貸付け条件のうち、当地への鉄道の敷設が果たされたいないと主張。(不問とされた)
・昭和3年から別荘地を造成し、山中湖ホテルを開業。昭和4年から別荘事業を開始。
・昭和42年までは、山梨県恩賜県有財産管理条例に基づき「許可処分」で貸付けられた。S2/1〜S11/12、S12/1〜S21/12、S21/4〜S30/3、S30/4/1〜S33/3/31、S33/4〜S36/3、S36/4〜S37/3、S37/4〜S42/3
・昭和42年に10年契約。S42/4/1〜S52/3/31
 - 県は裁判で、S42契約は新規契約に該当すると主張。(却下された)
・昭和52年に20年契約。S52/4/1〜H9/3/31

2.平成9年契約(旧契約/H9契約)

・平成9年(1997年)4月1日付で、同4月1日から平成29年3月31日までの20年間の約定で賃貸契約を締結。
・平成9年度の賃料は、5億0383万円余。
・天野健知事の2期(6年)目。

3.平成29年契約(新契約/H29契約)

・平成29年(2017年)3月30日付で、同4月1日から令和19年3月31日までの20年間の約定で賃貸契約を締結。
・平成29年度の賃料は、3億2536万円余。
・後藤齋知事の1期(2年)目。
・この年の10月に住民訴訟(H29裁判)が提起される。

4.新・旧契約について

・賃料は、3年ごとに改定する。(第5条)
・賃料は、山梨県が適正な時価に比し不相当と認めたときには、いつでも改定でき、富士急行は、正当な理由がない限りこれを拒否することができない旨定められている。(第5条の2項と3項、判決文より)
・県は裁判で、適正な対価でないにも関わらず議会の議決がなく契約は違法無効と主張。(適正な対価ではないとはいえない、と却下)
・県は裁判で、新・旧契約が地方自治法237条2項に違反して無効であると主張した。(同上につき、却下)
・県は裁判で、ゴルフ場敷は建物所有目的とはいえないと主張。(契約が土地全体一括なので主たる目的に属す、と却下)

地方自治法237条2項

第九節 財産
(財産の管理及び処分)
第二百三十七条
 この法律において「財産」とは、公有財産、物品及び債権並びに基金をいう。
 第二百三十八条の四第一項の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。
 普通地方公共団体の財産は、第二百三十八条の五第二項の規定の適用がある場合で議会の議決によるとき又は同条第三項の規定の適用がある場合でなければ、これを信託してはならない。

県議会の対応

1.県有地の貸付に関する調査及び検証特別委員会

・付議事件:県有地の貸付に関する調査及び検証に関すること。
・R2/11/30 設置案採決 - 可決
・R2/11/30 第1回、R2/12/9 第2回、R2/12/10 第3回、R2/12/15 第4回、R2/12/17 第5回、R2/12/18 第6回、R2/12/23 第7回、R2/12/24 第8回、R2/12/25 第9回、R3/1/18 第10回、R3/1/25 第11回、R3/1/28 第12回、R3/2/1 第13回、R3/2/9 第14回、R3/2/15 第15回  議事録url
・R3/2/16 中間報告 - 2月議会
・R3/3/3 第16回、R3/3/15 第17回、R3/3/22 第18回、R3/4/15 第19回、R3/4/26 第20回、R3/5/20 第21回、R3/6/9 第22回
・R3/6/21 中間報告 - 6月議会
・R3/9/3 第23回、R3/9/16 第24回、R3/9/21 第25回  議事録url
・R3/9/21 中間報告 - 9月議会
・R3/9/21 廃止動議 - 可決/廃止

2.県有資産の効率的な運用と高度活用に関する調査及び検証特別委員会

・付議事件:県有資産の効率的な運用と高度活用に関する調査及び検証に関すること。
・R3/9/30 設置案採決 - 否決

3.県民のための県有地の貸付及び賃料に関する特別委員会

・付議事件:裁判で係争中の県有地以外の県有地の貸付及び社会政策上の必要等の理由から行う賃料の減免に関すること。
・R3/9/30 設置案採決 - 可決/設置
・R3/9/30 第1回、R3/11/17 第2回、R3/11/25 第3回、R3/12/1 第4回、R3/12/7 第5回
・R3/12/15 中間報告 - 11月議会
・R4/1/12 第6回、R4/3/2 第7回、R4/3/3 第8回、R4/3/18 第9回  議事録url
・R4/6/17 中間報告 - 6月議会
・R4/6/15 第10回、R4/10/6 第11回、R5/3/8 第12回  議事録url
・R5/3/16 最終報告 - 2月議会

県の対応

1.住民訴訟に係る検証委員会

委員会URL (県庁内の検証委員会※5)
・R3/2/3 第1回、R3/2/8 第2回、R3/3/12 第3回、R3/3/24 第4回

2.山梨県県民資産創造推進本部

本部URL
・R3/5/7 第1回会議

弁護士報酬返還住民訴訟(係争中)

・ R3/8/11監査結果(棄却)を不服とする住民訴訟※4
 (6600万円の賠償請求)
・ R3/8/25監査結果(棄却)を不服とする住民訴訟※5
 (6600万円+1億4300万円の返還請求)

参考リンク

山梨県: 県有地問題について


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