見出し画像

最近観た映画の落穂拾い

あれれ、
DC映画の新作『ブルービートル』のトレイラーを観てたんですが、これ映画館でやらないっぽいですね。デジタル配信とDVD&ブルーレイのみとのこと。地味に楽しみにしてたのに、チェッ。あまり評判良くなかったということでしょうか。休日映画館に足を運ぶことが多い人間としては選択肢が多いに越したことは無いんですが。まあ仕方ないか。
んで、最近観た映画についてですが、鑑賞した作品の感想はなるべく書き残すようにしてますが、いかんせん全部が全部長文を書くには至らず、適当に取捨選択しながら紹介しております。でも、こっちもえがったよーと、紹介したくなる作品も中にはあるわけで、今回はそんな中から三作品ほどピックアップしてみました。たまにはまとめての紹介もありかなあと。
ではではどうぞ。

イコライザー THE FINAL

デンゼル・ワシントン扮する元DIAの特殊工作員だったおっさんが市井の人々を守るために悪人たちを皆殺しにしていく人気シリーズ第3弾。
私が観ていて最も惹かれたのは「影」を象徴的に映し出した撮影です。前作でもその薄暗くシックな撮影&照明は印象的でしたが、今作はそれがさらにレベルアップ。それもそのはず、今作の撮影監督は『イングロリアス・バスターズ』や『ヒューゴの不思議な発明』や『ヘイトフル・エイト』で美しく印象的な画面作りをしてきたロバート・リチャードソンなのです。『イコライザー THE FINAL』の舞台はイタリアのシチリア島となりますが、街の景観や、夜の闇、マッコールの容赦ない暗殺場面など、そのどれもが「影」を濃く、非常に濃く映しており、質が高く美しい映像を見せてくれます。このため残虐なシーンの多い本作ですが、どの場面もアート性を感じる出来になっており、マッコールの寡黙な雰囲気と相まって重厚感の強い作品になっていました。
にしても悪漢どもを数秒間で瞬殺するマッコールの能力が凄まじい。過激な描写も一気に増えて豊富なバリエーションで敵をぶっ殺していきます。もはや「正義の使者」というよりも「怪物」といった印象に近く、一度彼に「敵認定」されたが最後、あとはもう無残に殺られるのを待つのみです。演出的にはホラーみが強く、「マッコール=殺人鬼」として、手のつけようのない怪物が登場した感が音楽や撮り方からも強調されていました。なので観ていて「胸がすく」というよりかは、「マッコール恐ええ!」という感情の方が私は強かったな。だって銃を口の中に突っ込んでそのまま貫通させ、もう一人の敵を撃ち殺したり、心臓めがけてナイフでめった刺しにしたり、何故か切り落とした首を元の位置に戻していたり、どう考えても「恐がらせるためにやってんだろそれ」っていう残虐さがあるんだもん。
一応マッコールの物語はこれにて終着点ということらしいので、このシチリア島が彼にとって”安住の地”という形で幕を閉じますが、え、あんな平気で人殺せる(しかも無駄に残酷に)人が近くに居たら恐くない?という気持ちが。でもシチリア島の人たちは広い心で彼のことを受け入れてるようでした。さすがは『ゴッドファーザー』の地、これくらいはもーまんたいってことですかね。
とはいえこれがマッコールという”心に疵を持った男”が平穏の地を得る物語だったとするならば、あのホームセンターから始まった彼の暴力に満ちた日々はここにおいてようやく安息を得たといえるでしょう。その意味では「怪物が居場所を得る」話だったとも私には見え、もう二度と彼の安らかな日々が壊されないことを願ってやみません(だって敵がかわいそうなんだもん)。
もし次作があるとするならそうですね、『ジョン・ウィック VS ロバート・マッコール』が私は観たいです。どっちが強いかなあ、結構どっこいだと思うんですが。配給さん、こんな映画はどうでっしゃろ。


北極百貨店のコンシェルジュさん

原作漫画の特徴は、なめらかで綺麗な絵柄、和やかな雰囲気、個性豊かで愛らしい動物たちのキャラクターだったと思います。そしてこちらの映像化作品では、そんな原作の良さがしっかり活かされており、優しくや健やかな仕上がりに。いろんな動物たちが集まる人気百貨店で新人コンシェルジュとして働き始めた主人公・秋乃は今日も今日とて大忙し。先輩や上司に見守られながらお客様と接し、仕事を通して彼女の成長する姿を描いたアニメ映画です。絶滅動物や過去の過ちについての物語でもあり、70分のコンパクトな時間の中にきれいにテーマがつまってます。ここに来るお客さんはみんな、誰かに笑顔になってほしくて、そんなお客さんの気持ちに寄り添ってあげようとするコンシェルジュさんたちの姿は清貧で、尊い。お仕事についてのお話であると同時に、人と人が向き合うことで生まれる心の機微についてのお話でもあり、観ているとあたたかい気持ちになります。ただ結構雰囲気でどうにかしようとしてる部分もあって、世界観の細かい設定とか(例えば絶滅種がなぜ生きてるのか)、百貨店の外の世界についてはほとんど触れられることはありません。別の言い方をすれば、70分しかない中で取捨選択がしっかり出来てるとも言えます。主人公のコロコロ切り替わる表情は和むし、様々な動物たちの生態を捉えたぬるぬる動くアニメーションも観ていて楽しい。サクッと観れて、サクッと良い気分で映画館を後にできる良作です。


奇才ヘンリー・シュガーの物語

ウェス・アンダーソンによる茶目っ気たっぷりの短編映画集。相変わらずの台詞量で、登場人物たちがこちらに目線を向けて大いにしゃべります。カラフルであたたかい色使いの舞台設計に、画角の中に綺麗に収まったシンメトリックな映像、感情を消し棒読みでしゃべる俳優たち、などなどウェス映画のお手本(というと変な言い回しだが)みたいな作品で、彼の特徴がギュギュッと凝縮されています。ト書きにあたる部分もぜーんぶ登場人物たちが朗読していたり、アナログな撮影にこだわってるかと思いきや、妙なところでアニメーションを使ったりとザ・ウェス・アンダーソンといった感じ。絵本を読み聞かせてもらうような感覚で、ゆったりしながら見ているとなんだかとっても気持ちよくなることでしょう。このおだやかな時間がずーっと続けばいいのにな、そんな気分になりながら工夫の凝らされた素敵な映像が過ぎ去っていくのを眺めるのもおつなもんです。
物語は透視能力を使える導師の存在を知ったヘンリー・シュガーが、その能力を使いギャンブルでイカサマをして大儲けするというもの。んでも、そのせいでスリルも緊張感もなくなった彼は、人生における「適度な喜び」を失い、同時に人生において自分に与えられた役目を見つけるのです。こういう言葉の比重が大きい、そしてその語り方にこそ意味がある作品を見ていると英語をもっと理解できたらなあと感じます。他、「白鳥」「ネズミ捕りの男」「毒」もNetflixにて配信中。

三作とも良作なので、気になるものがあれば見るといいあるよ。ていうか、うむむ、最近本がたまりつつある。週末に消化せんと。あ、今月号の『SFマガジン』に掲載されていたイーガンの新作中編「堅実性」めっちゃ良かったです。タイトル的になんとなく『君たちはどう生きるか』に近い説教臭さを読む前から覚え、「お前らSFなんぞ読んでないでもっと堅実に生きろ」みたいな内容だったら嫌だな~と思ってたのですが、イーガン流のマルチバースに関するお話でした。すぐとなりにある世界と、身の回りにあるあらゆるものが入れ替わり、それが自分だけではなく世界中の人々に起こるという突飛なアイディア。数学的な用語は一切使っておらず、文系SF寄りのやさしいイーガンです。切実で、好みの話でした。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?