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Adoさんとまふまふさんに学ぶ ~「アンラベル」の曲構成~

ボカコレ2022春、参加した皆さんお疲れさまでした!
おかげさまでルーキーランキング78位という身に余る順位に乗ることができました! 応援してくれた皆さん、ありがとうございました!

78位の「アンラベル」が私の曲です!
2860曲中の上位3%以内という実力以上の順位ですが、素直に嬉しいです

今回はこの曲の曲構成について解説していきます!

そもそも「曲構成」って何?

このnoteで曲構成と呼んでいるのは「イントロ → Aメロ → Bメロ → サビ → 間奏 → サビ → アウトロ」等といった1曲内のブロック分けのことです。最近はイントロがなくて頭からサビがいいとか、間奏のギターソロは流行らないとか色々言われていますが、それが話題になるくらいこの曲構成というやつは曲作りにおいて重要です。私も制作のかなり最初の方でこれを決めます(サビメロを作った後ぐらいで決めることが多いです)

Adoさん「心という名の不可解」の曲構成

今回は「心という名の不可解」という曲を聴いて「格好いい!!! この曲にバイオリンを足したような曲を作りたい!」と思ったのがアンラベル制作の原点でした。まずは「心という名の不可解(作曲:まふまふさん)」の曲構成を見てみます。


  1. Aメロ(静かな始まり → 途中からギター → 無音)

  2. イントロ(フル編成)

  3. Aメロ(静かに戻る → 途中からギター → キメのシンバル)

  4. Bメロ(ほぼ電子音だけ → 途中からギター&ドラム → サビ前の無音)

  5. サビ(ピコピコした電子音がたくさん聴こえる)

  6. 間奏

  7. 変形Aメロ(静かに戻る → 途中からギター)

  8. Bメロ

  9. サビ

  10. 間奏2(1回目とはちょっと違う間奏)

  11. 変形Bメロ(ドラム主体の激しい感じ)

  12. 落ちサビ(長めの無音 → 1フレーズ)

  13. 変形サビ(2回し目で変形&最後の〆フレーズ追加)

  14. アウトロ


けっこう複雑ですよね。
曲も4分29秒と、2分台の曲が増えてきている最近としては長めです。正直言って素晴らしい曲構成なのでそのままマネてもいいのですが、ここでポイントなのはこれがAdoさんの新曲であること。

Adoさんは人気・知名度・実力ともにすごく高いので、リスナーさんはガッツリ興味を持ったうえで曲を再生します。当然最後まで聴いてくれる人も多いですし、サビまでいかずに閉じる人はレアでしょう

ところが、私は無名のボカロP。聴いてくれる人の大半は「どこかでサムネイルを見てフラッとやってきた初見さん」になります。ボーカルの歌い始めまでは聴いてくれるでしょうが、そこで興味を失ったらアウト。以後もBメロ、サビ、間奏と進むたびにそこが「ここまででいいや」ってなりうるポイントになります。そのため、意識的にフックを作ったり展開を早めたりする必要があります

アンラベルの曲構成

  1. Aメロ

  2. セリフ

  3. イントロ

  4. Aメロ

  5. Bメロ

  6. サビ

  7. 間奏

  8. Cメロ

  9. 変形サビ

  10. アウトロ

どうでしょう、かなり圧縮されていると思いませんか……?
Aメロ~サビまではほとんど一緒ですが、2番以降の流れを強烈に圧縮しています。「心という名の不可解」の2番の役割は「雰囲気が違う感じ+ラスサビ前の静かさ」なので、それを「静かなCメロ」に統合しました。こうすることで、新しい音がどんどん出てくるような展開の早い曲構成にしています。

応用編 ~ 各ブロック内の解説 ~

ここから先はちょっとコアな話になります。初めて曲を作るような人は「ふむふむ、曲構成ってものがあるんだな。ちょっと展開を早めにした方が無名のうちは飽きられにくいかも?!」ってところまでつかんでいただければ、ここから先は読まなくても大丈夫。興味のある方だけご覧ください!

ちなみに、今からいうことの大半はSLEEP FREAKSさんのYoutube動画に私より詳しく書いてあるので、そっちを見た方が勉強になります(笑)。

ちなみにこの動画がリリースしたころにはすでにボーカルメロディが完成していたのですが、動画を見て「おお、意外と該当してるじゃん!」と喜んだ記憶があります

Aメロ

「心という名の不可解」のAメロは「サビかと思うようなつよつよなAメロ」です。これを表現するためにアンラベルでは以下のことをしています。

  1. コードは王道進行(Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ)

  2. メロディは音符の上下幅を大きく使う

  3. メロディは上下に大きく飛ぶようにする(跳躍進行)

王道進行はボカロ曲のサビでもあほほど使われるど定番のコード。これを使うことでキャッチーになるので、頭から惜しまず使っています

メロディの上下幅はAメロだけで1.5オクターブほど使っています。J-POPだと1曲内の上下幅が1.5オクターブぐらいだったりするらしいのでこれはかなり広いです。また、音符が白鍵3つ5つ分飛ぶようなメロディもたくさんあります。どちらも人間が歌う場合はハードですが、ボカロは歌いこなしてくれます

調声でアタマを下げている音符があるのでやや見づらいですが、こんな感じ。
上下動が激しいほどハデに聴こえるので、サビっぽくなります

また、「心という名の不可解」のAメロはドラムがいません。ギターが合流するぐらいのタイミングでパーカッションが薄く入ります。ただ、これに関しても展開を早めるためにアンラベルではちょっと早めのタイミングでパーカッション(スティック)を入れたり、電子音系のドラムを入れたりしています

セリフ

アンラベル最大のフックである、初音ミクさんによる「……バカ。」です。正直「頭からサビ」とか「静かな立ち上がりからのハデなイントロ」とかは昨今珍しくないのでリスナーさんにも読まれちゃうんですよね。でも、このセリフを聴いた人は「この曲は何か違うかも!」と思ってサビまで聴いてくれる可能性が上がるはず。実際Twitterでも「バカにやられました!」みたいな反響がけっこうあったので、これは効果があった印象です

ちなみに、イントロの開始に1拍分のストリングスの駆け上がり(シャラララララってやつ)を音符6つ分入れたかったのですが、それをやると「バカ」とかぶってしまうので、今回は駆け上がりを音符2つに圧縮しました。もはや駆け上がりとは言えませんね(笑)

イントロ

実はアンラベルには「心という名の不可解」ともうひとつ参考曲があり、それが同じくまふまふさんが作った「携帯恋話」です。この曲のイントロが「メロディがあるような内容な、でもなんだかキャッチーなイントロ」だったのでアンラベルもそんな感じで作りました。携帯恋話はベルが主旋律、アンラベルはバイオリンが主旋律です。どちらもイントロメロディとしてはあまり強烈ではないですが、なんとなく耳に残ってくれてれば幸いです

展開を早めるという意味ではイントロは短い方が都合がいいので、8小節で終わらせています。ちなみに私はイントロの終わりをAメロにかぶらせるのが好きなのですが、それをやるとボーカルへのメロディの受け渡しがハッキリしなくなるので、アンラベルではメロディを1回止めて無音にしてからボーカルの「君は~」が入るようにしています

Aメロ(2回目)

「心という名の不可解」と同様に「静かに戻る → 途中からギター → キメのシンバル」という構成にしています。ちなみにAメロのギターはくぐもった感じにしたいので、一時的にEQで強烈なハイカットをしています

左のギターは2200Hz、右のギターは2400Hz以上を切っています
かなり極端な設定なので、上から押さえつけたようなこもった音質になります

HipHopの出だし等で低めのシンセがだんだん盛り上がっていくときに使う手法として「EQハイカットをガッツリかけて、それをだんだん上げていって解除する」っていうのがあるんですが、それの応用みたいな感じで、くぐもらせたいときだけ一時的にこのハイカットをONにし、そこが終わったらすぐにOFFに戻してます(なので、1曲を通してほぼずっとOFFです)。詳しくはしーたけびーつさんの動画のどれかに載ってます

Bメロ

Bメロは「心という名の不可解」でも最も特徴的な「ほぼ電子音しか鳴ってないパート」です。ここで強烈なブレーキをかけることでサビのハデさを出すという曲構成なので、メロディも編曲もしっかりブレーキをかけます。具体的にはいくつかの手法を使っています

  1. メロディを低めのキーにまとめる

  2. メロディを伸ばしがちにする

  3. リズムの取り方を遅くする

  4. 楽器を減らす

まずはメロディですが、Aメロでは1.5オクターブ使ったくせに、Bメロのボーカルは1オクターブぐらいに収めます。つい手癖で上げてしまわないようにキーを押さえ、サビへとつながる部分で最後に一気に上げます。また、サビが「タタタタタタタ」と16分音符で畳み掛けるようなハイテンポメロディなので、Bメロでは4分音符や8分音符や無音部を使ってメロディのテンポをスローにします

水色のところがBメロ。
明らかに音符の密度が少ないし、キーもサビよりガッツリ低い

次にリズムですが、こちらは簡単で「ドラムの合流を遅らせる」「ドラムの手数を減らす」でブレーキがかかります。ただ、「心という名の不可解」はドラムの合流が信じられないほど遅いのですが、そこまで待ってもらえないと思ったので展開を早める意味で「バスドラやハイハットだけちょっと早めに合流する」という風にしています

最後に、楽器を減らすことに関してですが、アンラベルでは、Loop Cloudという音素材のサブスクサイトでSEやパーカッションの音素材をたくさん見つけてきて使っています。というのも、本当に無音にしてしまうと寂しいしょぼい曲になるのですが、電子音やSEはたくさん使っても「楽器を減らしているブレーキ感は出つつ、しょぼい感じにならずにすむ」気がするからです。ちなみにBメロのギターは浮いている軽い感じ(薄っぺらい感じ)を出したかったので、今度は一時的なEQでエグいローカットをかけています

左が1150Hz、右が1600Hzでローカットという極端な設定。
音の芯の部分・土台の部分が失われるので、音が軽い感じになる。
もちろん、全楽器が合流する「ジャーン」のところからはOFFに戻す

サビ

たたみかけるようなハイテンポかつ高音のサビ、まふまふさんの曲でよく使われる感じですよね。アンラベルでのポイントとしては、サビの1拍目を休符にしています。こうすることによりアクセントが効いてくれておしゃれさが出ます。そのアクセントをしっかり演出するために、今回は3つのことに気を使いました

  1. サビ前を無音にする

  2. サビの1拍目にシンバルやガラスの割れるSE等を入れる

  3. 「1拍目は休符」はサビで初出しにする

まずサビ前の無音、鉄板ですよね。これがあることで「サビでハデに仕掛けてくる」ってことが予感されます。そしてそれをメロディで裏切ります

次に、1拍目にちゃんと「パーン」みたいな音を置きます。本当にサビ頭が無音だと肩透かしが強すぎて聴いている側が「おっとっと」ってなっちゃうので、リズム楽器でのインパクトは入れておきます

最後に、この「1拍目の休符」をAメロとBメロで使わないようにします。それに加えて、この「タタタタタタタ」という16分音符連打のメロディリズムもそれまでに1回も使っていないものにすることで、サビのインパクトをより強化します。この辺も広い意味での曲構成のテクニックです。でも全部前述のSLEEP FREAKSさんの動画で解説されちゃってたので私のオリジナルではないです(笑)

Cメロ

Cメロもブレーキ役で、ラスサビを盛り上げるためのコントラスト要員です。最近のトレンド的にはCメロとラスサビの間に転調を挟みたいのですが、アンラベルはどうもその転調がしっくりきませんでした。でもここはBメロよりさらに上のコントラスト・さらに上の盛り上げ方をしたいパートだったので、ラスサビ前の2小節に「階段コード進行」というテクニックを真似て入れています

このテクニック、実はまだ私も使いこなせていないので、果たしてアンラベルが本当に転調しているのかはわかりません(注:カッシーはコードが聞き取れず、当然"調"なんかも曖昧にしか感じられません)。ただ、和音を1~2音ずらしながら上げていっているので、近い効果は生んでいると思われます

変形サビ

この長いページもあと2項目。あと少しだけおつきあいください!

最後は変形サビです。最近のボカロ曲は「サビ → 転調サビ → 終わり」とか「サビ → 大サビ → 終わり」のようなわかりやすい曲構成が減ってきて、サビメロの終わりの方を変化させることでグレードアップ感を出すことが増えてきた気がしています。「心という名の不可解」も同じような手法を使っているので、アンラベルでもラスサビの2回し目に「サビフレーズを1.5回歌う」とか「〆のフレーズを2回歌う」みたいな変化をつけることでラストに向かっていきます。こうすることで最後にひと変化をつけることができるので、曲に展開をつけていくには効果的なテクニックです

アウトロ

アウトロではさほど変わったことはやっていません。ここまで聴いてもらえたのだから、曲構成としてはもう役目を果たしたといえます。アンラベルは携帯恋話と同じでイントロメロディの特徴が薄いので、最後にアウトロで鳴かせるみたいな長めの演出は不要。8小節でスパッと終わらせます

終わった後に余韻が欲しかったのと、ニコニコなら「888888」を入力する時間(Youtubeならチャンネル登録よろしくのボタンを表示する時間)が欲しかったので、曲終わりの真っ暗無音部を5秒以上は作るようにしています。この辺は曲構成というよりは投稿サイトの特性に合わせたテクニックですが、私はコメントがたくさんほしいタイプなので最近は意識しています

まとめ

ここまで読んでいただきありがとうございます!
まとめとしては「曲構成というものがある。AメロやBメロ等の各パートが役割を持っており、コントラストがつくように展開させてやるとサビのインパクトが上がったり聴く人が飽きずに最後まで聴いてくれたりしやすくなる」と憶えておいてもらえれば充分です!

最後になりますが、よかったらnoteの「好き」ボタンや「コメント」等をお願いします。というのも、休日にふと思いつきで書き始めたところ、数時間かかった上にめっちゃ疲れました(笑)

正直、私としては勝手にお腹いっぱいになってしまいしばらく書かなくていいかな~という気持ちなのですが、反響があれば次回作を書くかもしれませんmm

それでは、作曲、一緒に楽しみましょう!

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