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赤字に食われていくピースワンコの黒字

寄付の15%を「一般管理費」に

 ピースワンコへの寄付は全額、犬保護のために使われているのだろうか?

 以前からそのような疑念を抱く方は多かったようです。認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)もそれは隠しておらず、寄付金から15%を上限として「一般管理費」として扱うと説明しています。つまり、犬保護事業以外にもお金を使うと宣言しているのです。
 
 一般管理費とはつまり、犬を保護する事業のために直接使うおカネではなく、運営団体の経営基盤を整えるための経費に使うことを想定したおカネということです。

 それはリスクに備えた蓄えであったり、研究開発のための資金として使ったり、人材獲得・教育のために投資する資金であるかもしれません。赤字で困っている他の事業部門に融通することもあるでしょう。

「1億7830万円」を事業外に転用

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 PWJが神石高原町役場に提出した「ピースワンコ・ジャパン・プロジェクト」の令和元年度(事業期間2019年2月~2020年1月)収支決算書から数字を拾ってみます。

 保護犬事業の収入は総額12億1962万円で、そのうち神石高原町からの「ふるさと納税」交付金が6億3167万円、会費を含む寄付金が5億5703万円でした。

 支出も12億1962万円で、最大の支出項目はスタッフ人件費で2億7147万円、犬の養育費・医療費など直接事業費が2億983万円とつづきます。犬舎や事務所の水道光熱費など維持費も1億4098万円かかっています。

 外注費、その他事務管理費等などにもかなりの金額が使われていますが、先に紹介した「一般管理費」の額も1億7830万円あります。比率して14.6%です。これが保護犬事業以外の用途にも使わせてもらうとPWJがあらかじめ説明しているおカネです。

保護犬部門は人手不足

 人件費や直接事業費と比べてみればわかるように、1億7830万円という資金は決して小さなおカネではありません。

 ピースワンコは、シェルターに収容している犬たちを里親に引き渡すための訓練も行いますが、犬を訓練する専門家をどう確保するかが課題です。600頭前後を収容する西山犬舎(岡山県高梁市)では、岡山県動物愛護センターから犬を世話するスタッフの増員を指導されています。増員が難しいなら犬を広島県側のシェルターに連れ戻すなりして頭数を減らすことが求められているのです。

 引き取った犬を十分に世話しきれないため、2018年には狂犬病予防法違反で広島県警の捜査を受けたりしました。その結果、2019年からは毎月、動物愛護センターから引き取る犬の数を制限することにして、「殺処分ゼロ」を実現するため広島県内の動物愛護センターで殺処分対象になった犬を全頭引き取るとした2016年の宣言を撤回しています。

 最近、西山犬舎を調査した岡山県高梁市の職員によると、首輪を装着するのが難しい犬が大半だったということで、里親家庭に引き取ってもらうための訓練を受けられぬままシェルター卒業のメドが立たない犬も多そうです。

適正飼養のために投資を

 犬の世話をする態勢が十分すぎるくらい整った段階を迎えているならともかく、まだ専門スタッフ不足が指摘されているときに、ピースワンコへの寄付金からほぼ上限の「15%」近くまで「一般管理費」として資金を引き出していくのは好ましいこととは思えません。

PWJの経常収支(2020年1月期)は2億453万円の赤字です。保護犬(ピースワンコ)部門は2億5300万円もの黒字なのに、管理部門と残り4つの事業部門がすべて赤字だったからです。

 PWJの事業はピースワンコの稼ぎから補てんなくしては成り立たなくなってしまう恐れさえあります。犬の適正飼養のためにもっと資金を投じていくには、PWJの赤字部門の合理化が欠かせないと思われます。

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