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(試行版)ぼくらは、それを見逃さない。⑦豊島(とよしま)のコミュニティ施設、町役場がPWJ/SAPF集団に無償譲渡


 瀬戸内海に浮かぶ愛媛県上島町の無人島、豊島(とよしま)に、実はもう一つ、NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)とその観光部門であるNPO法人瀬戸内アートプラットフォーム(SAPF、同、大西健丞理事長)が運営にかかわる施設があります。

 ゲストハウス、リヒター作品展示施設に続く3つ目の施設は、上島町(旧・弓削町)の公共施設だった豊島コミュニティセンターです。

 PWJとの関係を尋ねたところ、上島町役場は「(旧豊島コミュニティセンターの)建物を譲渡、土地を貸付しています。建物については、研修等・宿泊棟・浴室棟の3棟から構成されています」(総務課)と説明してくれました。

 2017年6月の議会で行政財産としての運用を廃止する議案が可決されたので、賃貸や譲渡が可能な一般財産となりました。

 2018年度にPWJに1年間賃貸したのに続いて、2019年度からは建物部分を無償で譲り渡した、ということのようです。

 PWJへの無償譲渡の根拠や手順について尋ねましたが、いまのところ「地方自治法等の規定に基づき適切に行なっています」という回答しか得られていません。

 旧コミュニティセンターは豊島港を見下ろす丘の上にあります。SAPFが運営してきた豊島ゲストハウス(旧・ヴィラ風の音)や、PWJが所有するリヒター作品を展示する施設からも徒歩数分の場所です。

 リヒター作品所有はPWJ、ゲストハウス所有はSAPF(2018 年度以降は不明)など2つのNPO法人は上島町豊島では事実上一体となって事業を展開しているので、便宜上PWJ/SAPF集団とでも呼んでおきます。

 建物の玄関脇には旧町名で「弓削町コミュニティアイランド」も案内図が掲げられたままでした。宿泊は12室44人、休憩は1日80人を受け入れ可能な施設でした。

 野生のイノシシが土を掘り返した痕がたくさん残っていますが、運動場も併設しています。町総務課によると、敷地は町有地で、その広さは建物部分も含めて全体で3万平方メートル余りあります。

 町役場は、PWJグループに建物を無償譲渡する条件として「地域住民のコミュニティ活動及び町内外住民のアートを切り口とした交流の拠点となる施設用地として使用するもの」ということを確認しました。

 センターを廃止する議案を可決した2017年6月22日の上島町議会で、町の担当課長がこのセンター廃止にいたる経過について説明していますので、答弁の一部を抜粋して紹介します。

 森本英隆農林水産課長による説明です。

 「当施設につきましては、平成24年(2012年)4月1日から平成27(2015年)年3月31日まで指定管理者として民間会社と協定を結んでおりましたが、平成25年(2013年)9月24日に指定管理者から経営困難との理由から協定締結の解除の申し出があり、平成25年(2013年)11月5日に受託し、12月末をもって休館することとなっておりました。平成26年(2014年)1月6日から1月31日まで新たに指定管理者の公募を行いましたが、応募者はありませんでした」

 「その後、平成26年(2014年)10月にNPO法人から若手の芸術家の育成、創作のためのアトリエ等として利用できないかとの申し入れがございました」

 「これに対しまして、上島町では、施設利用には、国の補助金が入っていることもあり、条例上の保養や観光事業の振興等以外の目的外の使用は困難であるため、これまで県、国を通じて財産処分が可能か協議を行ってまいりました。その結果、今後においても指定管理者制度を活用した維持管理業務は困難として、国や県に手続きを行い、平成29年(2017年)1月に国の承認が得られました。そこで、この条例の廃止を行い、これまでの条例上の設置目的にとらわれることなく、施設を有効かつ効率的に活用できる普通財産へ切り替えを実施したいと考えております」

 オープンは1990年です。およそ30年前のバブル期、雨後の筍のように各地に登場した保養所の1つでした。近年は利用する人も減り、営業休止状態でした。

 そこへ大西代表ファミリーが開業しながら経営不振で営業を中止していた「ヴィラ風の音」を、リヒター作品展示施設とともにふるさと納税を利用して再開させようと準備していたPWJ/SAPFが、芸術家らのたまり場として利用することを考えたという次第です。

 それは町役場にとって渡りに船の提案でした。

 同じ日の町議会質疑で宮脇 馨町長はこう答弁していました。

 「今の施設がですね、木造の部分がシロアリとか、そういった部分が管理者がいないもんで相当入っております。早急に誰かに管理してもらわないといけないということと、当然、修繕費等がこのまま放置しておくと急速に膨らむと。そういうことになりますので、まあ、こちらとしては、できるだけ早く相手に渡した方が少しでもリスクが少なくて済むんじゃないかと、そういう判断もさしていただきました」

 「向こうの活用方法としては、そういった新たな、何て言うんですかねえ、アトリエ、創作空間ということで、ある意味まあ上島町がそういったアピール、PRができる施設に生まれ変わる可能性があると、そういった判断もしております」

 豊島をアートで活性化しようとするPWJの現場部隊SAPFの2018年度事業報告では、「アーティストの育成や支援事業」の欄にこう書いてありました。

 「豊島の町有施設を活用し、現代アートのアーカイブ兼ギャラリーを開設するため、回収計画の検討と並行して施設の譲渡に向けた町との交渉を進めた。海外から複数のアーティストを島に招き、交流した」

 SAPFの事業費は88万3千円でした。

 PWJも豊島を受け持つ地域創生部門は赤字を垂れ流している状態です。

 老朽化した建物の補修や維持費、改装費はこれからズシリと重くなっていくはずです。そのための資金はあるのでしょうか?

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