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#3 「Wild Life」 - 昨日との決別、明日への邂逅【Paul McCartney Album Review】

今回のアルバムレビューはポールマッカートニーを中心に結成されたバンドWingsのデビューアルバム「Wild Life」です。

基本情報

オリジナルリリース 1971/12/7

  1. Mumbo

  2. Bip Bop

  3. Love Is Strange

  4. Wild Life

  5. Some People Never Know

  6. I Am Your Singer

  7. Bip Bop (Link)

  8. Tomorrow

  9. Dear Friend

  10. Mumbo (Link)
    Total Time 39:39

ビートルズ解散後のポールのアルバムとしては3作目。
1作目は自分ひとりで、2作目は臨時でメンバーを集めて制作しましたが
「またバンド組もうかな」と思い立ったが早いか
約2週間という短い制作期間でレコーディングされたアルバム。
「Wingsのアルバム」をいち早く世に出したかったんでしょうかね。

レビュー

☆☆☆☆☆☆☆★★★(7/10)

1作目「McCartney」がゆるいアルバムならこれは粗いアルバム。
良い意味でね。
タイトルの「Wild Life」に偽りなしです。
「RAM」で多用されたオーケストラアレンジもSEもなく
シンプルなバンドサウンド主体でまとまっています。
ジョンに「お前のはミューザックだ」って言われて
ちょっと意識したのかもしれない。
最初聴いたときは正直面食らいましたが、
そう思って聴き直すと何だかポールが頑張ってるように思えてきます。

※ミューザックとは店舗とかで流れているBGMのこと。
「薄っぺらくて心に響くものがねえ」とでも言いたかったのでしょうか。

楽曲解説

以下、アルバム内で特に好きな曲について一言ずつ。

Mumbo

デモテープを販売しちゃったんですか? って最初聴いたときは思いました。w
とにかくWingsの曲を作って早く出したかったんでしょう。
なぜか耳に残る曲。

Bip Bop

これもまた耳に残る曲。
というか、このアルバム全体的にそういうのが多い。
リンダのコーラスも健在です。

Wild Life

このアルバムの目玉曲のひとつ。
シンプルな進行にメッセージ性の強い歌詞を乗せた、
ポールには珍しいメッセージソング。
アルバムを短期間で仕上げるのはボブディランのやり方を真似したと
ポールは説明していますが、
ジョンのことも大いに意識している気がします。

Tomorrow

もうひとつの目玉曲。とても名曲
「Yesterday」と同じコード進行を取り入れているらしい。
昨日を捨てて明日へ踏み出そうという前向きな歌詞もいい。
ジョンに「お前のYesterdayは良かったがそれも過去の話(Another Day)だ」
って最新曲まで持ち出してきてアンサーソングでやられたのが悔しくて
「俺は昨日じゃなくて明日を見てるんだ!」って書いたのかもしれない。

Dear Friend

ポールのアルバムレビューということもあり
どうしてもジョンが悪者みたいな立場で書いてきてしまいましたが、
この2人、本当に腹の底から嫌いあっている訳じゃないんですよね。
「もういい加減やめにしようよ」
と和解を呼びかけるこの曲でアルバムは終わります。

まとめ

改めて聴き直すと
めちゃめちゃジョンを意識しているアルバムなんですよね。
そうやって聴いてみると、
「シンプルなバンドサウンド」というコンセプトも、
もしや末期のビートルズで頓挫したGet Backセッションを
自分の手で再現して、成功させたかったんではないか?
とも思えてきました。
ポールは確実に前進しているぞ。

それでは、かしまさでしたー。

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