「コミュニティ型ホテルが作る未来」の復習(スナック編)
2018年7月31日、NewsPicks アカデミアのイベント「コミュニティ型ホテルが作る未来」が開催された。
カフェ・カンパニー株式会社の楠本修二郎氏と株式会社L&G GLOBAL BUSINESS 龍崎翔子氏のトークイベント。モデレーターは、NewPicksの最所あさみ氏。
お二人の経営するホテルを題材にコミュニティ型ホテルのあり方をかなり深いところまで言語化していただいた。最所さんの絶妙な質問は話の中に出てきたモヤっとしたものを具体化することに貢献し、参加者のディスカッションからの話題提供や質問もいい内容だった。
参加者同士のコミュニケーションを取りながら学ぶことができ、充実した時間を過ごせた。
本来なら、イベント内容の要点をまとめてここにまとめることが本筋かもしれないが、それは他の参加者の方にお譲りさせていただくか、NewsPicksのアーカイブ動画をご覧いただくとする。
このイベントに参加して気づいたことがある。
楠本氏、龍崎氏おふたりが運営されているホテルのサービス内容を私自身が自ら楽しむために動き、実践していたことだ。
誠に勝手ながら、私自身の出張経験を振り返り、このイベントに出てきたキーワードを出張経験に重ねて合わせて復習していくことにする。
出張先の夜、
泊まるホテルには、宿泊する以外の仕掛け、サービスが無かったので、街へ仕掛けられに行っていた。
イベントに参加していない方へわかりやすく言い直すと、
言い訳を生み出してスナックへ行っていた
ということになる。
実は、私はイベント名の
「コミュニティ型ホテルを作る未来」ならぬ
「コミュニティ型出張を作った過去」があったのだ。
今回のキーワードは・ここにいて許される言い訳・非日常(ライフスタイルを試着できる場)・ドープ・スナック、ボッタクリ
私は不動産業者に勤めており、10年近く前は、かなりの頻度に地方出張を繰り返していた。当時は、全国各地でリーマンショックによる債務整理案件が多くあり、債務整理による不動産売却を行っていた。具体的にはまたの機会に書くとして、最近はほとんど出張が無くなってしまった。ここで、負の遺産とさえ思っていた、話たくない過去であり、当時の楽しい記憶を振り返っていく。
場所は、地方都市だったり、ド田舎だったり。
ひとりの出張は日中の仕事が終わると急に寂しくなる。
そこで、どこで食事をしようか考えることになる。
私は、孤独は嫌いだ。かわいく言えば寂しがり屋。短時間で食事を済ませて、何もないホテルに帰り疲れを癒すなんてことはしたくない。とにかく誰かと酒を飲みながら食事をしたい。この寂しさを満たす方法を考えた。
考えついたことは、
カウンターがある店に行くこと。
酒も好きなので、自然と居酒屋、焼き鳥屋、寿司屋ということになる。
カウンターが無いと絶対ダメ。
話すキッカケが作れない。カウンターであれば、大将、マスターなど、中にいるお店の人と話すキッカケを作りやすいし、話しかけてくれることも多い。
早速、最初のキーワードが出てくる。
「ここにいてもいい言い訳」
私とお店の人との距離が、カウンターという近い場所にいることで、話さないことが不自然な、話をしてもいい言い訳が生まれる。話すことで、自分の居場所を確保できて、「ここにいてもいい言い訳」が生まれる
実際、龍崎氏が運営されているホテルのひとつには、各部屋にレコードプレーヤーがある。レコードはフロントの横に置いてあり、お客さんは借りて自室に持ち帰り音楽を楽しむそうだ。フロントの横というのがミソで、従業員に近い場所にレコードを置くことで、コミュニケーションが生まれやすい形を作っている。お客さんと従業員が会話しやすい仕掛けを作って、話さないと不自然な、話かける言い訳を生んでいる。
カウンターに座ることで、この場所ならではの方言や流行、美味しいもの触れて楽しむ。
ここで2つ目のキーワード
「非日常(ライフスタイルを試着できる場)」
を体験する。
酒も進み、話が盛り上がる。いつの間にか、地元の常連さん達とも盛り上がっていく。
おふたりが運営されているホテルには、カフェがある。カフェには宿泊客以外の地元のお客さんも来て、地元のコミュニティの中に入っていくイメージを持てるそうだ。この体験は居酒屋で経験できる。
食事とお酒、その街ならではの文化に触れた。このタイミングで、十分に楽しんだから帰ろうと考える人は多いと思う。しかし、私の欲求は更なる高みを目指す。酒も入った勢いも手伝って、大将に話す。
「この辺にいいスナック無いですか?」
この一言が言えれば問題ない。
ちゃんとお店を紹介してくれるし、わざわざ連れて行ってくれることもある。
また、大将の紹介状があるので店側の受け入れ体制が整う。ここは、行ってもいい言い訳ができる。
スナックはさらに深い文化を味わうことができる。
3つ目のキーワード
「ドープ」
につながる。ドープとは、社会から見過ごされているまだ、明らかにされていない良さ、掘れば深みのある場所。
更に深いその街の話を聞く。明らかにされていない情報はスナックにある。スナックにある情報は良い情報もあるが、悪い情報もあるので、ここでいう「ドープ」とは違う意味(未開の地を発見するようなこと)もあると思うが、良きも悪きもトータルで、その土地ならではのディープな文化を発見できるという意味で今回「ドープ」というキーワードに重ねることにした。
例えば、
北海道の室蘭に行ったときは、「焼き鳥屋って、北海道では豚なんだよ。出前取ろうか」と言ってた皆んなで食べたり、
和歌山では、常連さんが持ってきた美味しいサバ寿司をいただいたり、
北海道滝川では、「工場で働く若い子達が、皆んなお店で出会った外国人と結婚してしまう」という話を聞いたり、
鳥羽では、「ここは10時で閉店、タクシー終わっちゃうからね」と言われたり。
ディープな体験をすることは楽しい。この体験ができる場所がスナックだと思う。
最後のキーワード
「スナック、ボッタクリ」
ヨソ者を受け入れ、その土地ならではの文化に深く溶け込んだ気持ちにさせてくれるサービスほど、旅を満足させてくれることはない。
客は高い満足感を得ながら、常連さん達と同程度のお会計。既存のコミュニティにヨソ者を受け入れ、ディープな文化体験を提供し、ライフスタイルを試着させてくれるサービスが存在していること。これらは、スナックも客も意識する必要がある。東京より物価が安いという一言で片づけるには、勿体ないことだ。立派な付加価値となっている。
満足感の高い体験ができるのであれば、少なくとも私は、多少ボッタクられても文句は言わない。旅をすると解放的になり、多少の財布の紐は緩む場合が多い。
楠本氏はボッタクリを流行らせたいと言っていた。
ボッタクリという形がとれれば、今まで気づいていなかったディープな付加価値にお金が生まれ、地方は豊かになるのかもしれない。
私は地方のスナックで1万円以上払ったことがない。
日本は東京だけでなく地方都市も、素晴らしい文化を持ち、サービスを提供しているという自覚を持つことが、インバウンドが増えている日本で必要ななことだと思う。これを自覚できたとき、次の方程式が認知されることだろう。
ボッタクリ = ディープな付加価値(チップ)
楠本氏は会社名を、
「カフェ・カンパニー株式会社」から、
「スナック・カンパニー株式会社」に変更するのは時間の問題だ。
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