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オブラートの涙

心の形は本当に『ハート』なのかな。

44年以上も私といっしょに生きてきた私の『ハート』

そこにあるたくさんの傷は、思い出と同時に勲章。

その傷を愛おしく眺める自己陶酔を否定しない。

鋭利なもので刺されたり、鈍器で殴られた時の傷はしっかりと応急処置してきた。ケアしなければ前に進めないと本能が叫んだからね。

けれど、どこか持て余した感情のすり傷は、膜となって『ハート』を覆うことがある。

怒りも悲しみも嘆きも、太陽と風と月夜で中和させたはずなのに、残ってしまった薄い膜。

中和させた分、粘着質が強く、貼り付いたら剥がそうにもきれいに剥がれず、少し残っちゃうんだ。

『ハート』の真ん中のくぼみのところが一番取れない。

「このくらいなら残ってもいいか」「そう、オブラート1枚分の薄さなんだから気にしなければいいよ」と自分を説き伏せる。

そんなことを繰り返して、くぼみに何十枚分かのオブラートが折り重なる。

それでも、「くぼみだけで済んでいるなら十分だ」と、わけのわからない理屈で見ないふりをしてきた。



ねえ、知ってる?

オブラートってね、溶けるんだよ。

溶かしてくれるのは、だれかの言葉なんだ。

剥がれなかったはずなのに、だれかのあったかい言葉のお湯がそっと溶かしてくれる。

不思議だけどほんとなんだ。


溶けたオブラートはあなたの涙になってこぼれるよ。


だからいっしょにいよう。

気の利いたセリフ一つ言えないけれど、あなたが歩んだ道を教えてくれるなら私はその道を忘れない。


ねえ、ともだち。

あなたの文字から声が聴こえたよ。

ねえ、ともだち。

わたしはあなたのともだち。


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