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【詩】呼吸

君の頭上の樹の枝で、ツグミが
ぬくもりに、ふるえている
ちいさな、憂いのない瞳
こだまする、木陰をめざして
啼いて、はばたいた

樹の肌に、浮かぶ顔
あつい日ざしに、ほころぶ
ふぅと、息を吐く
届いたばかりの、淡い風に
せきたてられ、弛緩する
錆びついた、古いよろいを剥がし
腕を伸ばして、空をかかえる
青い空間に、無数の芽吹きが
根をさして、手をさぐる

枝にかよう、樹脈のしずく
見えない、せせらぎに
靄がまとう、陽炎が立つ
深々と、根もとをつかんだまま
踊りだそうとするのか
聞こえない、穏やかな地鳴り
知らず、地面が膨らんで
生まれくる、息吹をたぎらかす

君の頭上の樹の枝に、白い雲が
ひき止められて、浮いている
透きとおる、とめどない幻
ほとばしる、煌めきを散らして
薄れて、解き放たれた


©2022 Hiroshi Kasumi


お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。