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【詩】夢の景色

夢の中で、
どういうわけか
急いでいた

泳いでいるように
足が空回りした
何かに掴まれている
どこかに向かっていた
どこを目指しているのか
わからない
けれど、とにかく
どこかに行こうとしていた

バスが過ぎていった
乗るはずだったバスだ
慌てて追いかける
けれど、どこに置き忘れたのか
バス代を入れていた財布を
持っていなかった

自転車を漕いでいた
なかなか進まない
何かに引っ張られていた
下り坂なのに
いや、違う
高速道路だった
アクセルを踏みしめたのに
スピードは上がらなかった

遅刻しそうだった
チャイムが鳴っている
朝の光がまぶしい
もうみんな揃っている
歯を磨かなきゃ
どこで着替えよう
ベッドが汗をかいていた

・ ・ ・

夢の中で、
どういうわけか
さがしていた

すりガラスのようだった
何かを見た気がする
何を目にしたのか
わからなかった
けれど、ともあれ
何なのか知りようもなかった

朽ちかけた看板があった
飯が旨いらしい
誰かがそう言っていた
その店に興味はなかった
だけど、誰なのか気になった
店はとっくに潰れていた

行きつけの本屋にいた
学生時代の懐かしい店だ
本は、みつからなかった
どの本が読みたいのか
わからない
けれど、いつものように
棚の前でうろついていた

会いたかった
暮らしていた街並み
あの道も、この道も
昔のままだった
いや、違う
すべてが変り果てている
何もみつからないまま
目を開けると
何もかも消え失せた


© 2022 Hiroshi Kasumi


お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。