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かすみを食べて生きる67:正常と異常のあいだ

脳梗塞 発症2か月と4日目:リハビリ病院2か月目⑭
食事:脳梗塞(ワレンベルグ症候群)の後遺症のため、嚥下ができなくなり訓練中。食事はミキサー食と鼻からの経管栄養。首を左に向けると飲める。食事以外の時間はスプーン飲みであれば水分を飲んでもよい。
状態:歩けるようになってきた。終日、館内フリー歩行自立。きょろきょろすると少しめまいがする。

リハビリ病院も入院して一カ月半くらいとなってきた。
当初、異常だと思ったことにも少しずつ慣れてきている。
それがいいことかはわからない。

これまでの記録はこちら『かすみを食べて生きる 序文と目次』
<発症2か月と3日目:リハビリ病院2か月目⑬
 
発症2か月と5日目:リハビリ病院2か月目⑭>


「たすけてー!」の激化

入院時から別室でいつも叫んでいる患者さんがいる。
以前は「せんせー!」と先生を呼んでいたが、最近はほぼ「たすけてー!」になり、その頻度が上がってきている。
身体の不自由な患者さんが一人になると叫んでしまうと聞いている。
看護師さんが行くと落ち着くも、離れて5秒後にはまた「たすけてー!」が始まる。
どうも緊急性はないらしい。
朝早くから夜遅くまで叫んでいて、ここ1か月半ずっと続いている。

対応する看護師さんも大変だけど、朝から晩まで逃げ場なく「たすけてー!」を聞き続ける周りの患者も疲弊してきている。
何度か叫び声に対し「うるさい!」と叫ぶ男性の声も聞いた。
それには「ごめんな!かんにんな!」と返し、また5秒後には「たすけてー!」が始まる。

他の患者さんの話だと、その方は夜は睡眠薬を使っているらしい。
施設によっては昼夜安定剤を盛ってドロドロにしておとなしくさせるところもあると聞く。
そう考えると昼間は叫んで体力を使ってもらって、夜は睡眠薬で眠れるならまだ人道的といえそう。
でも朝早くから夜遅くまで聞き続ける方はしんどい。
日中の声は少し慣れてきたけど、眠る時と朝起きてすぐの「たすけてー!」は気持ちがざわざわしてしまう。
時間になると帰れる病院のスタッフの皆さんが少しうらやましい。
この「たすけてー!」に慣れてしまうと、異常と正常の境目がわからなくなりそうな気がする。

チャレンジ半身浴

一人で浴槽での入浴が解禁になってしばらく経つが、スケジュールの関係もありなかなか浴槽チャレンジをできずにいた。
今日は午前中に二つのリハビリがおわっているのでいけそう。
病棟のお風呂は一人用。
入浴タイムは脱衣所に入って出るまでで45分。
これはタイムアタック。
まず入ると、ざっと浴槽を流してお湯をためる。
その間に入浴準備をして、いざ入浴。

今日は髪を洗うのはあきらめてのんびり半身浴の予定。
私の右半身は脳梗塞の後遺症で、温度の感覚がやや鈍くなっている。
感覚異常のない左足からゆっくり入る。
お湯はやや熱め、右半身よ、気をつけろ。
続いて右足をつける。
うーん。右足は少し冷たいと感じている。
ぬるいお湯だとそこまで差はなかったけど、少し熱めのお湯だと感覚異常が出てしまう。
右半身に、まぁまぁそう言わずに、となだめつつ10分程度半身浴を楽しむ。
身体があったまってきたからか、右足が最初に感じた冷たさは徐々に薄れていった。
お湯が熱めの温泉や銭湯に行ったときは気をつけた方がよさそう。

朝ごはん#10

おかゆアート:たぶんねこ

ねこを描こうとして、ちょっとよくわからなくなってしまった。
献立はこちら。

  • 小松菜と南瓜の煮物

  • マンゴーペースト

  • ソフール

  • おかゆ

朝ごはんに南瓜は、全体的に甘くてややつらい。
小松菜が救い。
所要時60分。健闘はした。

お昼ごはん#23

おかゆアート:ねずみ

意外とねずみ感が出た。
献立はこちら。

  • あんかけうどん

  • 豆腐とにんじんの煮物

  • おかゆ

なんだろう、手前右のグレーのややぶつぶつが見えるお皿。
あんかけうどんの具材と思われるのだけど、何だろう。
食べてみるとお魚の味。
うーん、カレイかなぁ。
見た目で警戒したよりは食べやすい。
所要時間50分。

夕ごはん#3

おかゆアート:たぬき

たぬき、ちょっととぎれとぎれになってしまった。
献立はこちら。

  • カレイの蒸しもの

  • 大根の煮付け

  • りんごのコンポート

  • おかゆ

あれ?夜がカレイ。
ということはお昼のお魚はなんだったのかしら。
そして発症後はじめましての、リンゴのコンポート!
夕食のデザートはちょっとうれしい。
所要時間55分。


ーー振り返って

「たすけてー」の方、自分では動けないことの恐怖ははかりしれません。
叫んでもしかたないとも思います。
いつか自分もそうならないとは限りません。
ただリハビリ病院は共同生活の場でもあります。
他の患者さんがその方の部屋を通るたびに「うるさい!」「だまれ!」などと叫ぶようになってきたのですが、それを聞くのは良い気分ではありませんでした。
リハビリのセラピストさんには、夜眠る時も声を聴き続けるのは少ししんどいと打ち明けていました。

やっと一人でのんびり浴槽に入れました。
感覚異常は厄介だけど、身体が温まってくると最初に感じたひんやり感は薄れてきたのは助かりました。
家では38度弱位のぬるめのお湯で半身浴をやっていたので、それくらいからだんだん慣らした方がよさそうかなと思っていました。

食事が朝昼夕の3回になって3日。
理学療法、作業療法、言語聴覚リハビリ3本に自主練。
ウクレレ、お風呂に洗濯。
経鼻の栄養をいただく時以外は落ち着く時間がない状態になりました。
この日は夜の経鼻の栄養が終わると夜8時頃になり、そこからもう2時間自主練の予定でしたがぐったりで、横になると動けなくなりました。
ウクレレが余暇からやるべきことになりつつありました。
3回食になってガリガリ君を食べる余裕がなくなりました。
どこかで息抜きをしてバランスを取らないと行き詰りそうな感じがしていました。

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